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[T2-P-10]東南極リュツォ・ホルム岩体東部,かぶと岩の地質と変成年代について

*加々島 慎一1、石川 尚人2、堀江 憲路3、竹原 真美3、外田 智千3 (1. 山形大学、2. 富山大学、3. 極地研)
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キーワード:

リュツォ・ホルム岩体、かぶと岩、トニアン紀、日の出ブロック

東南極リュツォ・ホルム岩体(LHC)には,エディアカラ紀〜カンブリア紀の変成岩・深成岩が分布し,東部のプリンスオラフ海岸から西部のリュツォ・ホルム湾に面する宗谷海岸に向かって,角閃岩相からグラニュライト相へと累進的に変成度が上がるとされている(Hiroi et al., 1991,Shiraishi et al., 1994, 2003など).LHCから近年,ジルコンU-Pb年代やモナザイトU-Th-Pb年代が多く報告されており,LHCを細分化したユニット区分が提示されている(Dunkley et al., 2020).一方,東部においては,年代不詳の小露岩体が散在する,その中で比較的大きな露出面積をもつ「日の出岬」からは,約10億年のトニアン紀の変成年代が得られており,異地性岩体とされていた.最近,「日の出岬」の東隣にある「あけぼの岩」の角閃岩相の片麻岩から937±6 Ma(Baba et al., 2022)と931.7±9.8 Ma(Kitano et al., 2023),西隣にある「二番岩」の上部角閃岩相の片麻岩から940.1±9.8 Ma(Mori et al., 2023)と994±11(Kitano et al., 2023)と,トニアンの年代値が報告され,さらに東に位置する「ちぢれ岩」からもトニアン紀の年代を示す角閃岩相の変成岩が報告されている(馬場ほか,2023).このように,エディアカラ紀〜カンブリア紀に起こったLHCの変成作用に先行するトニアン紀の熱的イベントを記録する地質体が,「日の出岬」の周辺から複数見つかってきている.本研究では「ちぢれ岩」からさらに東に位置する「かぶと岩」の変成岩類について,ジルコンU-Pb年代測定を行った結果について報告する.
 「かぶと岩」はプリンスオラフ海岸の南緯68˚03’,東経43˚36’に位置し,東西約1.4 km,南北約1.3 km,最高点83mの小露岩体である.地質構造は北部と南部ではNW-SE系が卓越し,中央部ではややEW系となり,傾斜は30˚-60˚ S-Wである.岩石の面構造に規制され,ノコギリの刃の様な地形となっている.「かぶと岩」に分布する岩石は,主に黒雲母片麻岩,角閃石黒雲母片麻岩,ざくろ石黒雲母片麻岩,花崗岩質片麻岩であり,この他に超苦鉄質岩ブロック,ペグマタイト,結晶質石灰岩がある.北東部には細粒の黒雲母片麻岩,角閃石黒雲母片麻岩,花崗岩質片麻岩が互層状に卓越し,ブーダン状のペグマタイト,苦鉄質岩が狭在する.中央部から南部にはざくろ石黒雲母片麻岩が分布するようになり,また変形小構造,ミグマタイトの産状が多くなる傾向がある.使用した変成岩試料は,JARE46において採取したものである. 年代測定に使用した試料は,ザクロ石含有角閃石黒雲母片麻岩で,オシラトリーゾーニングをもつコアから989.7±6.8 Ma,暗部のリムから941.4±8.4 Maの年代値が得られ,トニアン紀の年代を示す【日の出ブロック】は「かぶと岩」まで及ぶことが明らかとなった.
<引用文献>Hiroi et al. (1991) Geological Evolution of Antarctica, 83-87. Shiraishi et al. (1994) Journal of Geology, 102, 47–65. Shiraishi et al. (2003) Polar Geosci., 16, 76-99. Dunkley et al. (2020) Polar Sci., 26, 100606. Baba et al. (2022) Gondwana Res. 105, 243–261. Mori et al. (2023) J. Min. Petrol. Sci., 118, 221124. Kitano et al. (2023) J. Min. Petrol. Sci., 118, 221220.

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