講演情報

[U-P-1]令和6年7月25日からの大雨による山形県北部における豪雨災害

本山 功1、三辻和弥2、熊谷 誠3、村山良之3、橋本智雄4、佐藤正成4、岩田尚能1、加々島慎一1、石垣和恵3、八木浩司3, 5 (1. 山形大学理学部、2. 山形大学工学部、3. 山形大学地域教育文化学部、4. 中央開発株式会社、5. 深田地質研究所)
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キーワード:

庄内地域、最上地域、外水氾濫、斜面崩壊、土石流

 令和6年7月25日午前から7月26日未明にかけて、活発化した梅雨前線の活動により線状降水帯が発生し山形県から秋田県にかけて大雨となり、山形県では庄内・最上地域を中心に、堤防決壊、斜面崩壊、土石流等の事象により家屋の浸水・全半壊、農地冠水・土砂流入、道路・鉄道損傷など甚大な被害が生じ、3名の命が失われた。降雨は7月25日の午前5〜10時頃から強まり、酒田市と遊佐町には13時5分に大雨特別警報が発令された。山形県における線状降水帯の発生は令和4年8月の山形県南部での豪雨災害の時以来2度目のことである。降雨は7月25日18時頃に一度弱まり20時10分に大雨警報に切り替わったが、その後再び強さを増し、23時40分に酒田市・新庄市・舟形町・鮭川村・戸沢村・庄内町に大雨特別警報が発令された。1日のうちに同じ自治体に2度大雨特別警報が発令されたのは全国で初めてのことである。酒田市東部から新庄市にかけてのエリアでは24時間で300 mmを超える総雨量を記録した。被災地域が広域だったため、山形大学災害環境科学研究ユニットではメンバーで作業地域を分けて庄内・最上地域の各地において現地調査を行ったことから、把握した変状や被災状況について、本緊急展示にて速報的な報告を行う。

 今回の大雨による農地・住宅地の浸水は内水氾濫だけでなく、主要河川・中規模本川の越水・決壊によるものも多く外水氾濫が多地点で生じた。酒田市東部の荒瀬川中流では、本川から溢れた水がほぼ谷底低地全体を覆って流下したとみられ、想定最大規模の洪水浸水想定区域を上回る面積が浸水し、多くの水田が本川から流入した土砂に覆われ、多数の家屋が浸水した。谷底平野から庄内平野への出口の扇状地に立地する酒田市観音寺地区では扇頂部の右岸からの越水により氾濫が生じ、市街地が浸水し泥水に覆われた。日向川下流の酒田市穂積地区や京田川沿いの酒田市大渕地区等海岸平野においても越水によって農地・住宅地が浸水した。

 最上川中流の戸沢村蔵岡では内水氾濫に加えて最上川からの越水により集落全体が浸水した。同地区は最上川や支川の増水に伴って浸水する水害常襲地であり、最近7年間に4回浸水被害に遭っている(平成30年8月上旬、同年8月末、令和2年7月、今回)。戸沢村蔵岡地区付近は新庄盆地の水系が一点に集中し、出羽山地を横断する狭窄部(最上峡)によるボトルネック効果が加わって水位が上昇しやすいことが一因となっている。
 
 真室川町・鮭川村を流れる鮭川の中〜下流では複数箇所で本川から越水した。新庄市本合海地区では水田地帯を横断する道路を走行していたパトカーを含む4台の車が流され2人が命を落とした。この発災地付近では新田川が複数箇所で決壊し、氾濫原に広がる水田へ流出した濁流が原因と考えられる。また決壊によって水田が広範囲に土砂に覆われた。この近隣の鮭川中流部、升形川、新田川といった谷底平野を流れる河川は河床が浅く、場所によっては天井川をなしており、増水時に氾濫しやすい地形的条件だったことが被害を大きくした一因と考えられる。

 斜面崩壊や土石流による土砂災害も顕著であった。斜面崩壊のほとんどは表層崩壊であり、谷底平野に面した丘陵の急斜面と河岸の急斜面、および小河川の谷頭部で生じ、農地・家屋・道路・鉄道等が被災した。土石流による被害は荒瀬川に注ぐ小河川で認められ、酒田市北青沢小屋渕では集落全体に土砂が流入した。これら発災地点の多くは中新統・鮮新統・更新統の堆積岩類・火山岩類および鳥海火山噴出物の分布域にあたり、とくに固結度の低い砂岩・シルト岩を主体とする鮮新統・更新統の風化しやすく崩れやすい地質が一因となった可能性がある。

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