講演情報
[T1-O-4]島根県雲南地域,金成変成岩に産する亜鉛スピネル+石英+紅柱石の共生
*志村 俊昭1、山根 季里1,2、郷田 翔一3,4 (1. 山口大学、2. サンコーコンサルタント株式会社、3. 新潟大学、4. 鉄道機器株式会社)
キーワード:
金成変成岩、蓮華寺花崗閃緑岩、接触変成作用、スピネル+石英、UHT
島根県雲南地域には花崗岩類が広く分布し,わずかに変成岩類が露出している(松浦ほか, 2005など).本報告の変成岩は雲南市大東町金成付近に分布する岩体で,瀧本ほか (1965) ・石原 (1971) ・郷田ほか (2011) では「金成ホルンフェルス」とよばれた.本報告ではこの岩体を野口ほか (2021) に倣い「金成変成岩」とよぶ.
金成変成岩は,北西側の大東花崗閃緑岩と南東側の蓮華寺花崗閃緑岩の間に,幅約200 m,長さ約 1.5 kmでNE–SW方向に狭長に分布している.大東花崗閃緑岩との境界は第四紀堆積物に覆われ観察できていない.南東側は蓮華寺花崗閃緑岩に貫入されている.金成変成岩は優白質中粒塊状の岩石で,弱い片麻状構造をもつ.主にザクロ石・亜鉛スピネル・白雲母・黒雲母・紅柱石・珪線石・菫青石(ピナイト化)・斜長石・カリ長石・石英で構成され,グラノブラスティック組織を示す.少量の閃亜鉛鉱・黄鉄鉱・黄銅鉱・イルメナイト・チタナイト・ルチル・モナズ石・ジルコンを含む.変成鉱物の消長関係から,金成変成岩は北東(低変成度)側から南西(高変成度)側へ,ザクロ石-紅柱石帯,ザクロ石-スピネル-紅柱石帯,スピネル-珪線石帯,菫青石-珪線石帯,のように変成分帯ができる.
スピネル+石英の共生は,ザクロ石-スピネル-紅柱石帯の岩石にみられる.主要な構成鉱物はザクロ石・スピネル・紅柱石・白雲母・黒雲母・斜長石・カリ長石・石英である.ザクロ石はAlm = 18–27%, Sps = 70–79%, Prp = 1.7–3.3%, Grs = 0.3–1.2%の組成を示す.スピネルはオープンニコルで明緑色で,石英と直接接して産し,ZnOを22–33 wt%含み,Hc = 24–38%, Glx = 1.8–5.8%, Spl = 4.3–8.6%, Ghn = 50–68%の組成を示す.
スピネル+石英共生は超高温変成岩(UHT)に産する鉱物組合せである(Hensen and Green, 1971; Harley, 1998など).日本列島からは新潟県北部の花崗岩中の変成岩ゼノリスから報告されている(Shimura et al., 2002).スピネル+石英の安定領域はスピネルの亜鉛含有比が増えるとUHT以下の温度条件まで広がる(Shimura et al., 2002; Harley, 2008; Clark et al., 2011).その安定領域はP–T図上で低温側に向かって閉じる楔形の形状をしており,その低温側の先端は系のXMgが低くなると低温低圧側に移動し,スピネルの亜鉛含有比の増加によりさらに低温側に移動する(Shimura et al., 2002).
Nichols et al. (1992) は,スピネル+石英共生に関わる地質温度圧力計を,スピネルの亜鉛含有比を考慮した系で構築した.Shimura et al. (2023) は,4成分系の解析からザクロ石–アルミノ珪酸塩鉱物–スピネル–斜長石地質圧力計(GASpP圧力計)を提案した.またShimura et al. (2023) は,その熱力学モデルを利用し,藍晶石・珪線石・紅柱石領域にわたり広く使用可能な GASP地質圧力計も構築した.
これらの熱力学モデルを用いて解析したところ,金成変成岩は構成鉱物のXMgが低い事と,スピネルが亜鉛に富む事から,スピネル+石英共生が紅柱石領域内で安定に存在しうることが明らかになった.また,本研究による変成分帯から,金成変成岩は南東側の蓮華寺花崗閃緑岩に向かって変成温度が上昇している事がわかった.石原・谷 (2013) は,蓮華寺花崗閃緑岩のジルコンU-Pb年代として65.32 ± 0.71 Maを,大東花崗閃緑岩から56.62 ± 0.61 Maを,また金成変成岩のジルコン1粒から71.1 ± 2.0 Maを報告した.金成変成岩はこの地域において最古の岩石とされている(野口ほか, 2021).その源岩の帰属や,変成年代と熱源の解明は,山陰地域の地史を考えるうえで重要である.
文献: Clark et al. (2011) Elements, 7, 235–240; 郷田ほか (2011) 地質学会演旨, R9-P-8; Harley (1998) Geol.Soc.Spec.Pub., 138, 81–107; Harley (2008) JMG, 26, 125–154; Hensen and Green (1971) CMP, 33, 309–330; 石原 (1971) 地調報告, 239, 183p; 石原・谷(2013)資源地質,63, 11–14; 松浦ほか (2005) 「木次」地質図幅, 産総研; 野口ほか (2021) 地質雑, 127, 461–478; Shimura et al. (2002) J.Geol.Soc.Japan, 108, 347–350; Shimura et al. (2023) JMPS, 118: S008; 瀧本ほか (1965) 鉱山地質, 15, 36–47.
金成変成岩は,北西側の大東花崗閃緑岩と南東側の蓮華寺花崗閃緑岩の間に,幅約200 m,長さ約 1.5 kmでNE–SW方向に狭長に分布している.大東花崗閃緑岩との境界は第四紀堆積物に覆われ観察できていない.南東側は蓮華寺花崗閃緑岩に貫入されている.金成変成岩は優白質中粒塊状の岩石で,弱い片麻状構造をもつ.主にザクロ石・亜鉛スピネル・白雲母・黒雲母・紅柱石・珪線石・菫青石(ピナイト化)・斜長石・カリ長石・石英で構成され,グラノブラスティック組織を示す.少量の閃亜鉛鉱・黄鉄鉱・黄銅鉱・イルメナイト・チタナイト・ルチル・モナズ石・ジルコンを含む.変成鉱物の消長関係から,金成変成岩は北東(低変成度)側から南西(高変成度)側へ,ザクロ石-紅柱石帯,ザクロ石-スピネル-紅柱石帯,スピネル-珪線石帯,菫青石-珪線石帯,のように変成分帯ができる.
スピネル+石英の共生は,ザクロ石-スピネル-紅柱石帯の岩石にみられる.主要な構成鉱物はザクロ石・スピネル・紅柱石・白雲母・黒雲母・斜長石・カリ長石・石英である.ザクロ石はAlm = 18–27%, Sps = 70–79%, Prp = 1.7–3.3%, Grs = 0.3–1.2%の組成を示す.スピネルはオープンニコルで明緑色で,石英と直接接して産し,ZnOを22–33 wt%含み,Hc = 24–38%, Glx = 1.8–5.8%, Spl = 4.3–8.6%, Ghn = 50–68%の組成を示す.
スピネル+石英共生は超高温変成岩(UHT)に産する鉱物組合せである(Hensen and Green, 1971; Harley, 1998など).日本列島からは新潟県北部の花崗岩中の変成岩ゼノリスから報告されている(Shimura et al., 2002).スピネル+石英の安定領域はスピネルの亜鉛含有比が増えるとUHT以下の温度条件まで広がる(Shimura et al., 2002; Harley, 2008; Clark et al., 2011).その安定領域はP–T図上で低温側に向かって閉じる楔形の形状をしており,その低温側の先端は系のXMgが低くなると低温低圧側に移動し,スピネルの亜鉛含有比の増加によりさらに低温側に移動する(Shimura et al., 2002).
Nichols et al. (1992) は,スピネル+石英共生に関わる地質温度圧力計を,スピネルの亜鉛含有比を考慮した系で構築した.Shimura et al. (2023) は,4成分系の解析からザクロ石–アルミノ珪酸塩鉱物–スピネル–斜長石地質圧力計(GASpP圧力計)を提案した.またShimura et al. (2023) は,その熱力学モデルを利用し,藍晶石・珪線石・紅柱石領域にわたり広く使用可能な GASP地質圧力計も構築した.
これらの熱力学モデルを用いて解析したところ,金成変成岩は構成鉱物のXMgが低い事と,スピネルが亜鉛に富む事から,スピネル+石英共生が紅柱石領域内で安定に存在しうることが明らかになった.また,本研究による変成分帯から,金成変成岩は南東側の蓮華寺花崗閃緑岩に向かって変成温度が上昇している事がわかった.石原・谷 (2013) は,蓮華寺花崗閃緑岩のジルコンU-Pb年代として65.32 ± 0.71 Maを,大東花崗閃緑岩から56.62 ± 0.61 Maを,また金成変成岩のジルコン1粒から71.1 ± 2.0 Maを報告した.金成変成岩はこの地域において最古の岩石とされている(野口ほか, 2021).その源岩の帰属や,変成年代と熱源の解明は,山陰地域の地史を考えるうえで重要である.
文献: Clark et al. (2011) Elements, 7, 235–240; 郷田ほか (2011) 地質学会演旨, R9-P-8; Harley (1998) Geol.Soc.Spec.Pub., 138, 81–107; Harley (2008) JMG, 26, 125–154; Hensen and Green (1971) CMP, 33, 309–330; 石原 (1971) 地調報告, 239, 183p; 石原・谷(2013)資源地質,63, 11–14; 松浦ほか (2005) 「木次」地質図幅, 産総研; 野口ほか (2021) 地質雑, 127, 461–478; Shimura et al. (2002) J.Geol.Soc.Japan, 108, 347–350; Shimura et al. (2023) JMPS, 118: S008; 瀧本ほか (1965) 鉱山地質, 15, 36–47.
