講演情報
[T1-O-10]九州北西部雷山-糸島半島周辺の高温型変成岩の温度圧力構造と領家火山弧西方延長の可能性
*宮崎 一博1、村岡 やよい1、池田 剛2、西山 忠男3 (1. 産総研地質調査総合センター、2. 九州大学理学部、3. 熊本大学理学部)
キーワード:
高温型変成岩、領家コンプレックス、雷山、糸島、白亜紀、変成温度圧力、ジルコンU-Pb年代、糸島花崗閃緑岩、脊振変成岩類、筑紫コンプレックス
九州北西部脊振山塊〜糸島半島に分布する高温型変成岩(背振変成岩類)は,蓮華コンプレックスに花崗岩が貫入し生じた接触変成岩とされる.しかしながら,脊振山塊の雷山,浮嶽,天山に分布する背振変成岩類は高温型広域変成岩と見なされている1,2,3.今回我々は,雷山-糸島半島周辺背振変成岩類の岩相層序,地質構造,温度圧力構造を調べた.砕屑性ジルコン最若年代4,5と岩相層序により,背振変成岩類は周防コンプレックスを原岩とする浜ユニット,蓮華コンプレックスを原岩とする野北,雷山,及び能古島の3つのユニットに区分できる.背振変成岩類は,単一の地殻浅所貫入花崗岩周囲に形成される接触変成岩と異なり,次のような特徴を有する.1)黒雲母からなる主片理が発達する.2)能古島ユニットで550℃,3.5 kbar, 野北ユニット,浜ユニット,及び雷山ユニット上部で600-650℃,3-4 kbarとほぼ一定の温度圧力領域が広く分布する.3)雷山ユニットは見掛けの層厚約1 km,水平距離約3kmで,上部の条件から650 ℃, 5 kbar(中部)を経て,750 ℃, 7 kbar(下部)と変成圧力が急激に増加する.4)雷山ユニット中部-下部では泥質ミグマタイトが分布し,下部ミグマタイトには径数cmのざくろ石が生じている.背振変成岩類の岩相と温度圧力条件は,領家コンプレックスと類似する.3)は厚い高温型変成帯が薄化して上昇してきたことを示しており,最高変成圧力(深度)は領家コンプレックスに匹敵する.
雷山-糸島地域の花崗岩類と変成岩類のジルコンU-Pb年代4,6を再解析し,以下のことが判明した.5)野北ユニット北の北崎トーナル岩が121.0 ±6.4Ma, 110.7 ±1.8 Maの2つ,6)野北ユニット南から雷山ユニット北に分布する糸島花崗閃緑岩は106.1 ±0.9 Maの単一,7)雷山ユニット南に分布する糸島花崗閃緑岩は130 ±10.0, 108.3 ±3.2, 100.8 ±4.7 Maの3つの年代成分をもつ.さらに,8)雷山ユニット下部泥質ミグマタイト変成ジルコンは106.3 ±1.9, 99.7 ±1.1 Maの2つの年代成分をもち,糸島花崗閃緑岩の年代成分と同期する.花崗岩類と変成岩類の複数の年代成分同期は,領家コンプレックス7と同じである.
九州北部筑紫山地に分布する花崗岩類を主とする白亜紀深成岩類とこれに伴う高温型変成岩類を筑紫コンプレックスと定義する.筑紫コンプレックスにおいて,背振変成岩類以外に広く600℃以上ないしカリ長石菫青石の組合せが出来る変成温度に達しているのは,98Ma8,9の朝倉花崗閃緑岩北側の変成岩10及び南東側の変成岩11,107.5-101.8 Ma9,12の添田花崗閃緑岩周囲の田川変成岩13,98Ma8,9の平尾花崗閃緑岩西側の田川変成岩14である.雷山周辺の脊振変成岩類は薄化を伴いながら,100Ma前後の片麻状糸島花崗閃緑岩バソリスと共にダイアピルとして上昇してきたと考えられる.即ち,いずれも100 Ma前後もしくは106Ma前後の花崗閃緑岩バソリスを伴って分布する.一方,筑紫コンプレックス北側には,関門層群脇野亜層群と下関亜層群に,それぞれ112 Maと106 Maの流紋岩が分布し8,火山活動時期は筑紫コンプレックスの110 Maと106Maの深成岩年代成分6,8,9,12,106 Maの変成作用年代成分に同期する.
領家コンプレックスの高温領域も,従来考えられていたような最高温度軸を中心に持つ帯状配列ではなく,巨視的にはダイアピル上昇を想起させるドーム状の分布を示す16.火山活動と深成-変成作用の関連性は,領家コンプレックスでも指摘されており7,15,領家コンプレックスと筑紫コンプレックスは,共に一連の白亜紀火山弧(領家火山弧)を形成していた可能性を指摘できる.
引用文献 1大和田ほか(2005) 地雑,2大和田ほか(2000) 地雑,3 Yamada et al (2008) Jour. Minel. Petrol. Sci, 4宮崎・村岡(2022) 地質学会要旨, 5 Tsutsumi et al. (2011), 6 村岡・宮崎(2022) 地質学会要旨, 7 Miyazaki et al. (2023) Jour. Meta. Geol, 8 Miyazaki et al. (2018) Rev. Intl. Geol, 9堤・谷(2022) 地質学会要旨, 10大和田・深見(2018)地質学会要旨,11北野・池田(2012)地雑,12柚原ほか(2019), 13柚原ほか(2021), 14 Fukuyama et al (2004) Jour. Minel. Petrol. Sci, 15 Miyazaki et al (2024) Elements, 16 Ikeda et al. (submitted)
雷山-糸島地域の花崗岩類と変成岩類のジルコンU-Pb年代4,6を再解析し,以下のことが判明した.5)野北ユニット北の北崎トーナル岩が121.0 ±6.4Ma, 110.7 ±1.8 Maの2つ,6)野北ユニット南から雷山ユニット北に分布する糸島花崗閃緑岩は106.1 ±0.9 Maの単一,7)雷山ユニット南に分布する糸島花崗閃緑岩は130 ±10.0, 108.3 ±3.2, 100.8 ±4.7 Maの3つの年代成分をもつ.さらに,8)雷山ユニット下部泥質ミグマタイト変成ジルコンは106.3 ±1.9, 99.7 ±1.1 Maの2つの年代成分をもち,糸島花崗閃緑岩の年代成分と同期する.花崗岩類と変成岩類の複数の年代成分同期は,領家コンプレックス7と同じである.
九州北部筑紫山地に分布する花崗岩類を主とする白亜紀深成岩類とこれに伴う高温型変成岩類を筑紫コンプレックスと定義する.筑紫コンプレックスにおいて,背振変成岩類以外に広く600℃以上ないしカリ長石菫青石の組合せが出来る変成温度に達しているのは,98Ma8,9の朝倉花崗閃緑岩北側の変成岩10及び南東側の変成岩11,107.5-101.8 Ma9,12の添田花崗閃緑岩周囲の田川変成岩13,98Ma8,9の平尾花崗閃緑岩西側の田川変成岩14である.雷山周辺の脊振変成岩類は薄化を伴いながら,100Ma前後の片麻状糸島花崗閃緑岩バソリスと共にダイアピルとして上昇してきたと考えられる.即ち,いずれも100 Ma前後もしくは106Ma前後の花崗閃緑岩バソリスを伴って分布する.一方,筑紫コンプレックス北側には,関門層群脇野亜層群と下関亜層群に,それぞれ112 Maと106 Maの流紋岩が分布し8,火山活動時期は筑紫コンプレックスの110 Maと106Maの深成岩年代成分6,8,9,12,106 Maの変成作用年代成分に同期する.
領家コンプレックスの高温領域も,従来考えられていたような最高温度軸を中心に持つ帯状配列ではなく,巨視的にはダイアピル上昇を想起させるドーム状の分布を示す16.火山活動と深成-変成作用の関連性は,領家コンプレックスでも指摘されており7,15,領家コンプレックスと筑紫コンプレックスは,共に一連の白亜紀火山弧(領家火山弧)を形成していた可能性を指摘できる.
引用文献 1大和田ほか(2005) 地雑,2大和田ほか(2000) 地雑,3 Yamada et al (2008) Jour. Minel. Petrol. Sci, 4宮崎・村岡(2022) 地質学会要旨, 5 Tsutsumi et al. (2011), 6 村岡・宮崎(2022) 地質学会要旨, 7 Miyazaki et al. (2023) Jour. Meta. Geol, 8 Miyazaki et al. (2018) Rev. Intl. Geol, 9堤・谷(2022) 地質学会要旨, 10大和田・深見(2018)地質学会要旨,11北野・池田(2012)地雑,12柚原ほか(2019), 13柚原ほか(2021), 14 Fukuyama et al (2004) Jour. Minel. Petrol. Sci, 15 Miyazaki et al (2024) Elements, 16 Ikeda et al. (submitted)
