講演情報
[G-O-2]地質図Naviを活用した「身近な地形と地質」を学ぶ授業案と中学校での実践
*栗原 行人1、前田 夏希1、津田 智康2 (1. 三重大学教育学部、2. 三重大学教育学部附属中学校(現所属,鈴鹿市立加佐登小学校))
キーワード:
中学校理科、身近な地形と地質、地質図Navi
中学校理科の学習指導要領において,第2分野「大地の成り立ちと変化」の学習では「各学校の実態に応じて身近な地形や地層,岩石などを観察する」と記載されているが,様々な理由により,野外での観察はあまり行われていない(三次,2008; 瀧本・佐藤, 2019など).また,GIGAスクール構想の進展に伴い,生徒が1人1台タブレット端末を持っていることから,オンラインマップを活用した高校理科地質分野での地形・地質学習が提案されている (瀧本・亀田,2020).本研究では,中学校理科地質分野での地質図Navi(産総研)を用いた授業案を作成した.地質図Naviは日本全土の地質図データの表示のほか,活断層,第四紀火山などの地質情報を地質図や地図と合わせて表示する事が可能であり,地質分野の学習教材としての利用価値は非常に高い.本研究では,中学生が必要な情報を得ることができ,授業で地質図Naviを扱えるような解説動画を作成した上で,地質図Naviを用いて「身近な地形と地質」を理解する授業実践を行った.授業実践においては,「大地の成り立ちと変化」について既習済みのM大学教育学部附属中学校2年生4クラスを対象に各50分の授業を行った.内容は,まず解説動画を見ながら地質図Naviの使い方の概要を説明した.そして,地質図Naviの背景地図のうち,「川だけ地形図」を使って,中学校周辺の地形が,大きく「丘陵」と「平野」に区分できることを説明し,次に,シームレス地質図を見て,「丘陵」には「中新世〜鮮新世:非海成層」(=東海層群)が分布し,「平野」には「完新世:平野堆積物」が分布していることを説明した.次に,ヒントを出しながら「東海層群の周りに平野堆積物が広がる地形はどのようにしてできた?」という問いかけを行い,意見を発表してもらった.最後に,5万分の1地質図幅の地質断面図を用いながら,「東海層群の堆積」→「東海層群の隆起・変形(丘陵の形成)→河川による侵食・平野堆積物の堆積」という成り立ちを説明して授業は終了した.生徒による事前アンケート調査では,「自分が住んでいる地域や学校の周辺などの身近な地形や地質・地層に興味はありますか?」という問いに対しては,肯定的回答と否定的回答が約35%,「どちらともいえない」が約30%であったが,事後アンケートでの「授業で身近な地形や地層について学習することについてどう思いますか?」という質問では肯定的意見が圧倒的に多かった.また,授業の感想としては,楽しかったという意見と地質図Naviの操作が難しかったという意見がほぼ同数であった.今回の授業実践では,生徒一人ひとりがタブレットで同時にWiFiに接続することによる通信トラブルが発生したが,こうした問題は,班ごとでのタブレット操作などの対応で防ぐことができると考えられる.
