講演情報
[G-O-17]大型底生有孔虫を用いた知念層の堆積環境指標の提案と古水深復元
*日比 絵里奈1、藤田 和彦1 (1. 琉球大学大学院 理工学研究科 物質地球科学専攻)
キーワード:
琉球弧、第四紀、知念層、有孔虫、堆積環境
中琉球弧では前期更新世に“島尻変動”あるいは“知念変動”と呼ばれる,主に陸源性泥(島尻層群)の堆積する半深海環境から主に石灰質砂泥(知念層)の堆積する浅海環境へ急激な堆積場の変化が起きた.その原因や影響を明らかにするには,島尻層群及び知念層の堆積環境を詳しく復元するための水深・地形・底質の指標が必要である.大型底生有孔虫は知念層に多く産出し,水深・地形・底質により分布や群集組成が異なる.先行研究でも水深100 m以浅の分布や,特定の分類群やサイズを対象としたデータは存在するが,知念層が堆積したとされる島棚斜面域(100 m以深)のデータが少なく,同層に多く含まれる2~0.5 mm径の底生有孔虫を対象としたデータはない.そこで本研究では島棚~島棚斜面域の2~0.5 mm径の大型底生有孔虫群集と水深・地形・底質とを比較することにより,堆積水深などを推定する指標を提案し,知念層の堆積環境(古水深)を復元することを目的とした.
本研究の調査海域は沖縄本島南東側の中城湾からフィリピン海に面した島棚斜面にかけての水深10~241 mの範囲である.調査海域で1970年代に琉球大学により採取された中城湾の表層堆積物試料と2008年に産業技術総合研究所のGH08航海により採取された表層堆積物試料の合計15試料を用いた.試料をふるい分けし,分割し,2~0.5 mm径に含まれる大型底生有孔虫を拾い出し,有孔虫を属レベル(Amphistegina属のみ種レベル)で分類・計数した.また,自由落下型画像解析粒度分布計(JASCO FF-30micro)を用いて砂の粒度分析を行い,粒度・淘汰度・尖度・歪度を求めた.得られた各属の産出頻度(%)と水深・サンゴ礁からの距離・含泥率・粒度組成の結果とを比較した.さらに現世有孔虫データを知念層の化石有孔虫データと比較した.沖縄本島中部の東側に位置する平安座島の2地点の露頭から採取した合計20試料の岩石を過酸化水素水と塩酸を用いて分離させた.その後,現世試料と同様にふるい分けし,分割し,2~0.5 mm径に含まれる大型底生有孔虫化石を拾い出し,属レベル(Amphistegina属のみ種レベル)で分類・計数した.
調査海域における2~0.5 mm径の表層堆積物中から67属と3分類群の大型底生有孔虫が産出し,いずれかの地点で3 %を超える産出があった有孔虫は21属と2分類群である.このうちAmphistegina属を除く20属と2分類群は産出頻度が高い水深ごとに7つのグループ(水深30 m付近:Peneroplisなど4属,50 m以浅:Homotremaなど2属,50 m付近:Baculogypsinoidesなど2属,50~150 m:Operculinaなど3属,100 m以深:Lenticulinaなど4属,150 m以深で増加:Rotalinoidesなど2属1分類群,どの水深にも産出:Heterosteginaなど3属1分類群)に分けられる.Amphistegina属5種に注目すると,A. lobifera と A. lessonii は 水深50 m以浅,A. radiata は水深50 m付近,A. bicirculataとA. papillosaは水深50~150 mで相対頻度が高い.ミリオリド有孔虫(Quinqueloculina /Triloculina /Miliolinella)は粒度が細かくなると相対頻度が高くなる.Amphisteginaなど3属はサンゴ礁からの距離が近いと相対頻度が高くなる.Reophax と Lenticulina など6属1分類群は含泥率が高くなると相対頻度が高くなる.
平安座島では島尻層群の泥岩及び知念層の石灰質泥岩でLenticulinaの相対頻度がA. radiataの相対頻度よりも高く,知念層の石灰質砂岩ではA. radiataの相対頻度がLenticulinaの相対頻度よりも高い.本研究の現世有孔虫データと平安座島知念層の化石有孔虫データとを比較すると,知念層下部の石灰質泥岩は水深100 m以深,上部の石灰質砂岩は水深50 m付近で堆積したと推定される.この結果は,堆積相から推定される岩相境界付近での浅海化・流速の強化と一致する.
本研究の調査海域は沖縄本島南東側の中城湾からフィリピン海に面した島棚斜面にかけての水深10~241 mの範囲である.調査海域で1970年代に琉球大学により採取された中城湾の表層堆積物試料と2008年に産業技術総合研究所のGH08航海により採取された表層堆積物試料の合計15試料を用いた.試料をふるい分けし,分割し,2~0.5 mm径に含まれる大型底生有孔虫を拾い出し,有孔虫を属レベル(Amphistegina属のみ種レベル)で分類・計数した.また,自由落下型画像解析粒度分布計(JASCO FF-30micro)を用いて砂の粒度分析を行い,粒度・淘汰度・尖度・歪度を求めた.得られた各属の産出頻度(%)と水深・サンゴ礁からの距離・含泥率・粒度組成の結果とを比較した.さらに現世有孔虫データを知念層の化石有孔虫データと比較した.沖縄本島中部の東側に位置する平安座島の2地点の露頭から採取した合計20試料の岩石を過酸化水素水と塩酸を用いて分離させた.その後,現世試料と同様にふるい分けし,分割し,2~0.5 mm径に含まれる大型底生有孔虫化石を拾い出し,属レベル(Amphistegina属のみ種レベル)で分類・計数した.
調査海域における2~0.5 mm径の表層堆積物中から67属と3分類群の大型底生有孔虫が産出し,いずれかの地点で3 %を超える産出があった有孔虫は21属と2分類群である.このうちAmphistegina属を除く20属と2分類群は産出頻度が高い水深ごとに7つのグループ(水深30 m付近:Peneroplisなど4属,50 m以浅:Homotremaなど2属,50 m付近:Baculogypsinoidesなど2属,50~150 m:Operculinaなど3属,100 m以深:Lenticulinaなど4属,150 m以深で増加:Rotalinoidesなど2属1分類群,どの水深にも産出:Heterosteginaなど3属1分類群)に分けられる.Amphistegina属5種に注目すると,A. lobifera と A. lessonii は 水深50 m以浅,A. radiata は水深50 m付近,A. bicirculataとA. papillosaは水深50~150 mで相対頻度が高い.ミリオリド有孔虫(Quinqueloculina /Triloculina /Miliolinella)は粒度が細かくなると相対頻度が高くなる.Amphisteginaなど3属はサンゴ礁からの距離が近いと相対頻度が高くなる.Reophax と Lenticulina など6属1分類群は含泥率が高くなると相対頻度が高くなる.
平安座島では島尻層群の泥岩及び知念層の石灰質泥岩でLenticulinaの相対頻度がA. radiataの相対頻度よりも高く,知念層の石灰質砂岩ではA. radiataの相対頻度がLenticulinaの相対頻度よりも高い.本研究の現世有孔虫データと平安座島知念層の化石有孔虫データとを比較すると,知念層下部の石灰質泥岩は水深100 m以深,上部の石灰質砂岩は水深50 m付近で堆積したと推定される.この結果は,堆積相から推定される岩相境界付近での浅海化・流速の強化と一致する.
