講演情報
[T12-O-7]下部更新統大桑層のアルケノンに記録された日本海沿岸域の表層環境変動
*西山 烈1、北村 晃寿2、長谷川 卓1 (1. 金沢大学、2. 静岡大学)
キーワード:
前期更新世、大桑層、氷河性海水準変動、アルケノン、アルケノン不飽和指標
現在の日本海は南北の海峡で外洋と隔たれた海域で, 特に南方の対馬海峡からは強い暖流が継続的に流れ込んでいることが知られている. しかし新生代第四紀更新世においてはこの海峡から流れ込む対馬暖流が大きく変化しており, 暖流の流入量の変動に関連して生物相や海洋表層水温, 海洋の成層状態などが著しく変化したことが推測される. しかしながら日本海の海底堆積物は炭酸塩溶解により, 浮遊性有孔虫を用いた古水温・塩分復元が困難であり, 表層環境の変動史は未解明な点が多い. これに対し富山県小矢部市から石川県金沢市に分布する, 沿岸浅海域で堆積した下部更新統大桑層は水深数十メートル前後で堆積し、氷期の低海水準期には寒流系貝化石が密集し、間氷期の高海水準期には暖流系貝化石が散在するという, 海峡開閉の影響を克明に示す地層である. 本研究では,特にこの寒暖両系種の出現コントラストが大きい中部層の堆積サイクル 1–11(MIS 50–28)からアルケノン不飽和指数 UK’₃7を測定し, 沿岸表層の古水温を推定した. UK’₃₇は 0.23–0.92 の範囲で変動し, 暖流系化石が多い層準で高値を示す傾向が全体を通して確認された. しかしながらCycle 6 以降の間氷期では 0.75–0.82 程度にとどまり, 0.9以上の高い値を示していたCycle 5 以前に比べ約3 ℃ 低温側へシフトした. この寒冷化傾向は約1.3Ma頃から始まる広域的な寒冷化と連動している可能性が高い. また本研究ではCycle 6以降について密集層に近づくにつれてUK’37が著しく低下する層準が見られたため, このUK’37の著しい低下についても併せて検討を行う.
