講演情報
[T6-O-5]徳之島を構成する地質体の砕屑性ジルコンU-Pb年代
*堤 之恭1、山本 啓司2、磯﨑 行雄3 (1. 国立科学博物館理学研究部、2. 鹿児島大学大学院理工学研究科、3. 東京大学大学院総合文化研究科)
キーワード:
徳之島、付加体、変成岩、砕屑性ジルコン、U-Pb年代
西南日本の地体構造単元の配列は琉球弧南西端まで連続し(小西, 1965; Kizaki, 1986; 磯﨑・西村, 1989など),徳之島の先中新世基盤は主に四万十帯の付加体と白亜紀~古第三紀花崗岩類からなるとされてきた.しかし近年,徳之島中央部の山岳地帯に,高温型の高度変成岩の存在が確認され(Ueda et al., 2017; Yamamoto et al., 2022),それはほぼ水平に近い断層を介してクリッペ状に存在する(山本ほか, 2024)ことが判明した.この変成岩体は構造的上位の砂質・泥質片岩を主とする「犬田布岳ユニット」,および下位の泥質片岩を主とし閃緑岩質片岩や蛇紋岩を伴う「井之川ユニット」から構成される(山本ほか, 2025).本研究では,犬田布岳ユニットより3試料(S-19,Y-22,Y-43),下位の四万十帯に相当する「天城岳ユニット」より1試料(S-61),「尾母ユニット」より1試料(Y-40)計5試料の砂質岩の砕屑性ジルコンU-Pb年代測定結果を提示する.
天城岳ユニットの試料は1900 Maと300~75 Ma辺りに顕著なピークを持つ2極的分布をし,YC1σは107.4 ± 1.0 Ma,YSGは98.7 ± 1.4 Maを示すため,北東に隣接する奄美大島に産する四万十帯の白亜紀付加体砂岩の特徴(Tsutsumi and Tani, 2024)とよく一致する.尾母ユニットの砂岩は南中国起源と思われる新原生代のジルコン粒子を多く含み,YC1σは89.0 ± 0.9 Ma,YSGは69.0 ± 1.1 Maであるため,天城岳ユニットよりも若い付加体と考えられる.
犬田布岳ユニットのうち2試料(S-19, Y-43)は2極的分布を持ち,YC1σはそれぞれ77.3 ± 0.7 Maと76.4 ± 0.6 Maを示した.この年代スペクトルは天城岳ユニットの非変成付加体砂岩のものと良く一致する.一方,試料Y-22だけは70 Ma弱の明瞭なシングルピークで特徴付けられ,YC1σは59.2 ± 1.0 Maを示した.
以上より,犬田布岳ユニットの変成岩の原岩は,徳之島北半に分布する天城岳ユニットの白亜紀付加体の砂岩,およびその上に堆積した古第三紀被覆層に由来し,それらの変成年代はY-22のYC1σが示す約60 Ma以降と考えられる.また,天城岳ユニットと尾母ユニットの砕屑性ジルコン年代分布の違いは,琉球の四万十帯の後背地の経年変化を示していると思われる.(年代の誤差は1σ表記)
Kizaki (1986) Tectonophysics 125, 193-207.;小西(1965)地質雑 71, 437-457;Tsutsumi & Tani (2024) BNMNS 50, 7-26.; Ueda et al. (2017) Island Arc 26, e12199.;Yamamoto et al. (2022) Int. Geol. Rev. 64, 425-440.; 山本ほか (2024) 地学雑 133, 447-464.;山本ほか (2025) 地質学会要旨(本年度要旨).
天城岳ユニットの試料は1900 Maと300~75 Ma辺りに顕著なピークを持つ2極的分布をし,YC1σは107.4 ± 1.0 Ma,YSGは98.7 ± 1.4 Maを示すため,北東に隣接する奄美大島に産する四万十帯の白亜紀付加体砂岩の特徴(Tsutsumi and Tani, 2024)とよく一致する.尾母ユニットの砂岩は南中国起源と思われる新原生代のジルコン粒子を多く含み,YC1σは89.0 ± 0.9 Ma,YSGは69.0 ± 1.1 Maであるため,天城岳ユニットよりも若い付加体と考えられる.
犬田布岳ユニットのうち2試料(S-19, Y-43)は2極的分布を持ち,YC1σはそれぞれ77.3 ± 0.7 Maと76.4 ± 0.6 Maを示した.この年代スペクトルは天城岳ユニットの非変成付加体砂岩のものと良く一致する.一方,試料Y-22だけは70 Ma弱の明瞭なシングルピークで特徴付けられ,YC1σは59.2 ± 1.0 Maを示した.
以上より,犬田布岳ユニットの変成岩の原岩は,徳之島北半に分布する天城岳ユニットの白亜紀付加体の砂岩,およびその上に堆積した古第三紀被覆層に由来し,それらの変成年代はY-22のYC1σが示す約60 Ma以降と考えられる.また,天城岳ユニットと尾母ユニットの砕屑性ジルコン年代分布の違いは,琉球の四万十帯の後背地の経年変化を示していると思われる.(年代の誤差は1σ表記)
Kizaki (1986) Tectonophysics 125, 193-207.;小西(1965)地質雑 71, 437-457;Tsutsumi & Tani (2024) BNMNS 50, 7-26.; Ueda et al. (2017) Island Arc 26, e12199.;Yamamoto et al. (2022) Int. Geol. Rev. 64, 425-440.; 山本ほか (2024) 地学雑 133, 447-464.;山本ほか (2025) 地質学会要旨(本年度要旨).

