講演情報

[T1-P-8]北海道えりも町の日高変成帯上部層における変成作用と砕屑性ジルコンU-Pb年代

*高見 柊二1、植田 勇人1、豊島 剛志1、高橋 千絢 (1. 新潟大学)
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キーワード:

変堆積岩、日高変成帯、ジルコンU-Pb年代

 【はじめに】 北海道中軸部に位置する日高変成帯は,高温低圧型の変成岩と深成岩類から構成され,島弧のような火成活動帯の下部~上部地殻の衝上帯とみなされている.これらは,大陸地殻の成長過程を理解する鍵として,研究が進められてきた.近年,ジルコンU-Pb年代から,日高変成帯では古第三紀(35Ma頃)と中新世(20Ma頃)の2度の変成イベントがあったと考えられるようになった.(Kemp&Shimura, 2007).多くの研究が行われてきた高変成度の下部層では,中新世のグラニュライト相変成作用やマイロナイト化の影響が強く,変成帯形成初期の情報は断片的である.一方,日高変成帯南東部のえりも町~広尾町にかけて分布する上部層相当の変成岩からは広域的に古第三紀の黒雲母K-Ar年代が報告されており(佐伯ほか,1995),変成帯形成の初期段階の情報が得られやすいことが期待される.そこで本研究では,えりも町地域の変成岩類について調査を行い,変成作用および砕屑性ジルコンU-Pb年代を検討した.
【地質概説】本調査地域の日高変成帯では,砂泥質変成岩を主体とし,少量の苦鉄質変成岩を伴う.西側は中部トーナル岩と断層で接する.このトーナル岩に隣接した地域のうち,西部では変成岩類は東~北東に傾斜した片理が認められるが,東部では片理を欠いた塊状で,原岩の堆積構造がよく残されている.これら堆積岩を原岩とする変成岩には各所で石灰質ノジュールを含んでいる様子が見られる.このほか,各所で花崗質岩が変成岩の片理面を切って貫入している.
【変成作用】砂泥質岩では,黒雲母+斜長石+石英±白雲母が広く分布するが,西部では菫青石+黒雲母+斜長石+石英±白雲母±カリ長石およびザクロ石+黒雲母+斜長石+石英±白雲母±菫青石±カリ長石の組み合わせが見られるようになる.苦鉄質片岩は,普通角閃石+斜長石+Caザクロ石+石英で構成される.砂泥質変成岩の鉱物組み合わせに基づき,本地域を黒雲母帯とザクロ石帯に分帯した.また,Wu(2015)によるザクロ石―黒雲母―白雲母―斜長石温度圧力計によって見積もられた温度圧力は580~600℃,3~6kbであった.
【砕屑性ジルコンU-Pb年代】砂質変成岩から得られた砕屑性ジルコンU-Pb年代の最若集団は51および58Maであった.日高変成帯から漸移するとされる中の川層群では,48.8±0.4Ma(札内川層)や64.6±1.1Ma(広尾コンプレックス酸性凝灰岩) などの年代が報告されている(七山ほか第124回学術大会講演要旨 ).今回得られたジルコンU-Pb年代は,原岩が中の川層群であったことを支持する.
引用文献
Shiba.M,1988, J. Metamorphic Geol 6 273-296
大和田正明1989,地質学雑誌,95,3,227-240
佐伯ほか,1995岩鉱,9,297-309
Kemp&Shimura, 2007, Geology,35(9),807-810
七山太ほか(2017)地質学会講演要旨
Nanayama et al, 2018, Island Arc
高橋千絢(2021MS)新潟大学卒業論文