講演情報
[T1-P-10]愛媛県高縄半島,領家変成岩類中に産するスピネル-コランダム片岩
*椿 陽仁1、澁谷 奨1 (1. 株式会社地圏総合コンサルタント)
キーワード:
領家変成帯、角閃岩相、高縄半島、コランダム、ヘルシナイト
領家帯では,コランダムやスピネルを含む泥質変成岩が様々な場所で報告されている(手塚, 1983; 瀬尾ほか, 1984; Okudaira et al., 1993; 馬場, 1997など).コランダムとスピネル (ヘルシナイト)を両方含む変成岩が報告されているのは,馬場 (1997)とOkudaira et al. (1993)のみである.
本研究地域は愛媛県高縄半島西部に位置する.本地域は,北部から南部にかけて白亜紀の角閃石黒雲母花崗閃緑岩体 (以下,松山岩体),領家変成岩類が分布する (越智, 1982).松山岩体は,変成岩類の片理面に対して非調和的に貫入している.変成岩類は,鳥海ほか (1991)と宮崎ほか (2016),椿・志村 (2024)などにより変成分帯と変成度の検討などが行われている.変成岩類は,主に白雲母黒雲母片岩が分布している.最高変成度ではざくろ石+菫青石が共生する変成岩が産し,その変成温度条件は約620‒670℃である.これまでにこの地域からコランダムやスピネルを含む変成岩の報告はされていない.
本発表では,高縄半島において確認されたヘルシナイト‒コランダム片岩の岩石記載や鉱物化学組成について報告する.また,その組織の形成反応について考察する.
ヘルシナイト‒コランダム片岩は,松山市青波川の松山岩体と変成岩類の貫入境界付近に産する.ヘルシナイト‒コランダム片岩の構成鉱物は,石英・斜長石・黒雲母・白雲母・コランダム・ヘルシナイト,少量のイルメナイト・ルチル・燐灰石である.コランダムは斑状変晶として産する.コランダム中に,白雲母・イルメナイト・斜長石が包有されている.コランダムの周縁部には,ヘルシナイト・黒雲母・斜長石からなるコロナ状組織が見られる(Fig. 1A).ヘルシナイトの周縁部には,白雲母が産する (Fig. 1B).コランダム中に包有されている白雲母の組成は,2K/(K+Na) = 0.99‒1.07でパラゴナイト成分に富んでいる.コランダム中に包有されている斜長石の組成は,An3‒4 Ab95‒96である.ヘルシナイトはオープンニコルでは濃緑色を示し,組成はHc90‒95 Spl4‒6 Ghn1‒4である.ヘルシナイトの周縁部に産する白雲母のZ軸色は淡褐色であり,組成は2K/(K+Na) = 1.86‒1.96でマスコバイト成分に富んでいる.
これらの産状と鉱物化学組成より,ヘルシナイト‒コランダム片岩は,①コランダムを形成する反応と②ヘルシナイトを形成する反応が順に起きたと考えられる.コランダムは温度上昇により,Helgeson et al. (1978)などの
Pg → 2Crn + 2Ab + 2H2O
により形成されたと考えられる.この変成反応が起こる温度条件は570℃程度であり,椿・志村 (2024)の最高変成温度条件の620‒670℃より低い.
ヘルシナイトはコランダムの周縁部にコロナ状に産することから,ヘルシナイトの形成にコランダムは関与していると考えられる.
文献
馬場 (1997) 地質雑, 104, 107‒121.Helgeson et al. (1978) Am. J. Sci, 278‒A, 119‒149.
宮崎ほか (2016) 地質図幅「松山」(第2版). 産総研.
野戸 (1975) 地質雑, 81, 59‒66.
越智 (1982) 地質雑, 88, 511‒522.
Okudaira et al. (1993) Mem. Geol. Soc. Japan, 42, 91‒120.
瀬尾ほか (1984) 岩石鉱物鉱床学会誌, 79, 498‒502.
手塚 (1983) 地質雑, 89, 243‒244.
椿・志村 (2024)地質学会要旨, T1‒P‒8.
鳥海ほか (1991) 日本の地質「四国地方」. 日本の地質「四国地方」編集委員会, 6‒8.
本研究地域は愛媛県高縄半島西部に位置する.本地域は,北部から南部にかけて白亜紀の角閃石黒雲母花崗閃緑岩体 (以下,松山岩体),領家変成岩類が分布する (越智, 1982).松山岩体は,変成岩類の片理面に対して非調和的に貫入している.変成岩類は,鳥海ほか (1991)と宮崎ほか (2016),椿・志村 (2024)などにより変成分帯と変成度の検討などが行われている.変成岩類は,主に白雲母黒雲母片岩が分布している.最高変成度ではざくろ石+菫青石が共生する変成岩が産し,その変成温度条件は約620‒670℃である.これまでにこの地域からコランダムやスピネルを含む変成岩の報告はされていない.
本発表では,高縄半島において確認されたヘルシナイト‒コランダム片岩の岩石記載や鉱物化学組成について報告する.また,その組織の形成反応について考察する.
ヘルシナイト‒コランダム片岩は,松山市青波川の松山岩体と変成岩類の貫入境界付近に産する.ヘルシナイト‒コランダム片岩の構成鉱物は,石英・斜長石・黒雲母・白雲母・コランダム・ヘルシナイト,少量のイルメナイト・ルチル・燐灰石である.コランダムは斑状変晶として産する.コランダム中に,白雲母・イルメナイト・斜長石が包有されている.コランダムの周縁部には,ヘルシナイト・黒雲母・斜長石からなるコロナ状組織が見られる(Fig. 1A).ヘルシナイトの周縁部には,白雲母が産する (Fig. 1B).コランダム中に包有されている白雲母の組成は,2K/(K+Na) = 0.99‒1.07でパラゴナイト成分に富んでいる.コランダム中に包有されている斜長石の組成は,An3‒4 Ab95‒96である.ヘルシナイトはオープンニコルでは濃緑色を示し,組成はHc90‒95 Spl4‒6 Ghn1‒4である.ヘルシナイトの周縁部に産する白雲母のZ軸色は淡褐色であり,組成は2K/(K+Na) = 1.86‒1.96でマスコバイト成分に富んでいる.
これらの産状と鉱物化学組成より,ヘルシナイト‒コランダム片岩は,①コランダムを形成する反応と②ヘルシナイトを形成する反応が順に起きたと考えられる.コランダムは温度上昇により,Helgeson et al. (1978)などの
Pg → 2Crn + 2Ab + 2H2O
により形成されたと考えられる.この変成反応が起こる温度条件は570℃程度であり,椿・志村 (2024)の最高変成温度条件の620‒670℃より低い.
ヘルシナイトはコランダムの周縁部にコロナ状に産することから,ヘルシナイトの形成にコランダムは関与していると考えられる.
文献
馬場 (1997) 地質雑, 104, 107‒121.Helgeson et al. (1978) Am. J. Sci, 278‒A, 119‒149.
宮崎ほか (2016) 地質図幅「松山」(第2版). 産総研.
野戸 (1975) 地質雑, 81, 59‒66.
越智 (1982) 地質雑, 88, 511‒522.
Okudaira et al. (1993) Mem. Geol. Soc. Japan, 42, 91‒120.
瀬尾ほか (1984) 岩石鉱物鉱床学会誌, 79, 498‒502.
手塚 (1983) 地質雑, 89, 243‒244.
椿・志村 (2024)地質学会要旨, T1‒P‒8.
鳥海ほか (1991) 日本の地質「四国地方」. 日本の地質「四国地方」編集委員会, 6‒8.

