講演情報
[T2-P-10]兵庫県姫路市南東部に分布する白亜紀火山岩類の岩相と層序
*毛利 元紀1、原田 正信2 (1. 岡山地学概査会事務局、2. 兵庫古生物研究会)
キーワード:
白亜紀火山岩類、西南日本内帯、岩相層序、カルデラ、漸進的な陥没
市域南東部の四郷層(後藤・井上,1998)は白亜紀にアジア大陸縁辺で噴出したデイサイト~流紋岩類からなり,同様な地質は近畿西部~中国東部に連続的に分布する.本地域の火山岩類はYamamoto(2003)が存在を指摘したカルデラの西縁を埋めて分布する.白亜紀の火山岩類はカルデラを埋めて分布することが知られ,各地で火山体の認定と内部層序の解明が進む(例えば,吉川ら,2005;佐藤ら,2022).上部白亜系の岩相と層序は岸田・弘原海(1967)や後藤・井上(1998,2001)以外は断片的である(例えば,毛利,2018,2019).表題地域における火山岩類の岩相と層序を再検討した.11ルートで火山岩類について岩相観察し以下に示す10岩相を見出した.岩相 1:塊状・不淘汰・基質支持で長径5~9㎝の本質レンズをふくみ溶結構造を示す厚い溶結凝灰岩→軽石流・火山灰流タイプの大規模火砕流堆積物 岩相 2:径1m以上の丹波帯堆積岩類の岩塊と間隙を埋める破砕された基質相からなる不淘汰角礫岩→岩屑なだれ堆積物 岩相3:火山豆石をふくむ層状の火山礫凝灰岩および淘汰良好・粒子支持で斜交葉理が発達する細粒凝灰岩→マグマ水蒸気噴火によるベースサージ堆積物 岩相4:斜長石斑晶の目立つデイサイト溶岩→溶岩体 岩相5:平行葉理の発達する均質な凝灰質砂岩泥岩互層および細粒凝灰岩層→湖沼性堆積物 岩相6:淘汰良好・粒子支持で層状な細粒凝灰岩(一部は級化層理や斜交層理が発達)→降下火砕堆積物および火砕サージ堆積物 岩相7:長径1〜2㎝の本質レンズをふくむ塊状の薄層理な溶結火山礫凝灰岩が調和的累重→軽石流・火山灰流タイプの小規模火砕流堆積物の累積 岩相 8:ガラス質な流紋岩角礫を塊状・不淘汰・基質支持でふくむ凝灰角礫岩→岩塊火砕流堆積物 岩相9:流理構造が明瞭な流紋岩体→流紋岩の浅所貫入および地表へ噴出した溶岩体 岩相10:流紋岩質火砕岩・石英斑岩・流紋岩体→岩脈および貫入岩体.南部の四郷層の最下部は岩相1から始まる.先白亜系基盤岩の礫・岩塊を不淘汰にふくむ岩相2 がその層序的上位に分布する.その後,含火山豆石火山礫凝灰岩からなる岩相3が整合的に覆う.この後は斜長石斑状デイサイト溶岩からなる岩相4が認められる.本層上部では岩相 5,6,7が2~8回繰り返し出現する.本層最上部では岩相3,8,9が整合的な被覆および浅所貫入する.最後岩相10がこれらに貫入する.四郷層の形成過程はⅠ~Ⅶのステ ージにまとめられる(画像).ステージⅠ:カルデラ形成を伴う軽石流・火山灰流タイプの大規模火砕流の発生,ステージⅡ:カルデラ壁の斜面崩壊に伴う岩屑なだれの発生.ステージⅢ:浅水底でのマグマ水蒸気噴火によるベースサージの発生,ステージⅣ:デイサイト溶岩の活動,ステージⅤ:湖沼域で凝灰質砂岩泥岩の堆積,火砕物降下・火砕サージの発生,軽石流・火山灰流タイプの小規模火砕流の噴出が6~8回繰り返す期間,ステージⅥ:岩塊火砕流の発生と火砕岩層中に流紋岩体の浅所貫入や地表流出,一部地域でマグマ水蒸気噴火によるベースサージ発生,ステージⅦ:流紋岩質火砕岩や石英斑岩,流紋岩脈がカルデラ境界の西縁と南縁の構造に規制され貫入.本地域の火山岩類は軽石流・火山灰流タイプの爆発的な活動(ステージⅠ,Ⅴ)から非爆発的な活動(ステージⅥ,Ⅶ)へと変遷した. ステージⅤでは湖沼化と乾陸化が繰り返され,本地域のカルデラ(Yamamoto,2003)西縁で,小規模な陥没が漸進的に進行する様式(小室ら,2014;今岡ら,2019)で陥没した.文献:小室裕明・亀井淳志・大平寛人・三好未希子・田結庄良昭・引原団体研究グループ(2014)地球科学,68,81-88.後藤博弥・井上剛一(1998)姫路市史第7巻上[自然] 姫路市史編集専門委員会,39,64-69,86-91.後藤博弥・井上剛一(2001)姫路市史第1巻上自然本編,姫路市史編集専門委員会,80-87.今岡照喜・井川寿之・岸司・木村元・大中翔平・西川裕輔・小室裕明(2019)地質学雑誌,125,7,545.岸田孝蔵・弘原海清(1967)柴田秀賢教授退官記念論文集,241-255.毛利元紀(2018)第72回地学団体研究会総会(市原)プログラム・講演要旨集,57.毛利元紀(2019)第10回石ふしぎゼミ発表要旨集(11月23日),益富地学会館.佐藤大介・脇田浩二・宮地良典(2022)地域地質研究報告5万分の1地質図幅[和気] 岡山(12),68,地質調査総合センター,35-60.Yamamoto,T.(2003)The Island Arc,12,Issue3,294-309.吉川敏之・栗本史雄・青木正博(2005)地域地質研究報告 5万分の1地質図幅[生野] 岡山(12),47,地質調査総合センター,14-27.

