講演情報

[T12-P-1]南極沿岸域堆積物コア試料のCT画像の特性と古環境学的意義

*石輪 健樹1,2、菅沼 悠介1,2、梶田 展人3、柴田 大輔4,5、香月 興太6、川又 基人7,2、池原 実8 (1. 国立極地研究所、2. 総合研究大学院大学、3. 弘前大学、4. 神奈川工科大学、5. 筑波大学、6. 島根大学、7. 寒地土木研究所、8. 高知大学)
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キーワード:

CT画像、湖底堆積物、南極、海水準変動、氷床変動

 堆積物コア試料は、氷床や海水準変動などの古環境変動を復元するための重要なアーカイブとして広く利用されている。堆積物コア試料は分取された後、詳細な環境情報が化学分析、微化石分析などにより得られてきた。一方で、近年では、試料の形態や内部構造を保存したまま高分解能で分析可能な非破壊分析技術の導入が進んでおり、特に数年から数十年スケールの高時間分解能を対象とする環境変動の復元において有用である。その中でも、CT(Computed Tomography)を用いた堆積物試料の観察は、試料を破壊することなく三次元的な構造を可視化することが可能である。CT画像の取得は、堆積物試料の分取前に実施するため、試料の初期状態を保持した一次情報を取得することができる。特に南極沿岸域の堆積物試料では、CT画像は目視では検出できないラミナ構造や氷河性堆積物の認定に有効であり、氷期から現在にかけての氷床後退過程やその変動に伴う環境変動の復元に有用である。これまで東南極の宗谷海岸の露岩域では、第59, 61, 64次南極地域観測隊で50本以上の湖底・浅海底堆積物コア試料が採取されてきた。CT画像の結果から氷河・氷床の変動により変形した構造や年縞と思われるラミナ構造を有する試料が認められた。堆積物中に記録されたこれらの構造は、氷床の後退・前進過程やその過程に伴う堆積環境の変化、さらには海水準変動を復元する上で極めて有効な指標となる。本発表では、これらのCT画像の解析結果を中心に、一部試料について行った放射性炭素年代測定も加え、堆積物に記録された環境変動を明らかにする。また、得られた知見を先行研究で明らかにされている宗谷海岸域の氷床・海水準変動と照らし合わせることで、CT画像から読み取れる堆積環境の特徴と氷床・海水準変動との関連性について議論を行う。