講演情報

[T12-P-8]日本海堆積物コアの中新世テフラの対比:古海洋環境の三次元的復元を目指して

*関 有沙1、長橋 良隆2、入野 智久3、多田 隆治4、松崎 賢史5、吉岡 純平6 (1. 深田地質研究所、2. 福島大学、3. 北海道大学、4. 千葉工業大学、5. 東京大学、6. 国立極地研究所)
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キーワード:

日本海、中新世、テフラ対比、IODP、ODP、リポジトリコア再解析プログラム(ReCoRD)、XRF core scanner

 海底堆積物中に狭在する広域テフラは、複数地点の堆積物コアから同時堆積面を見出す上で有用な鍵層になる。第四紀では広域テフラの分布は広く知られているが(町田・新井、2003など)、中新世で広域対比に有用なテフラはほとんど知られていない。そこで本研究では複数の手法を用いることで、過去の海洋掘削プログラム(IODP・ODP)で日本海の5地点の海底から掘削されたレガシーコアを対象として、中新世の広域テフラを活用した地点間対比を試みた。
対象とした日本海堆積物コアは、1989年のODP第127次航海で掘削された794地点、795地点、797地点、2013年のIODP第346次航海で掘削されたU1425地点とU1430地点のコア試料である(Tamaki et al., 1990; Tada et al., 2015)。これらのコア試料は採取から時間が経過しているが、半割後、高知コアセンターにて冷蔵保管されており、比較的良好な状態である。各地点の堆積物の年代モデルは既に作成されているが、特に30年以上前のODP航海で採取された3地点の堆積物の年代モデルは中新世部分で年代制約が数百万年に1点と粗く、また生層序の分析区間も限られるなど、地点間の同時堆積面を見出すには不十分であった(Tada, 1994; Kurokawa et al., 2019)。
本研究ではまず、アーカイブハーフを用いてXRFコアスキャナー分析を行った。分析には高知大学海洋コア国際研究所のITRAX(Cox analytical systems)を用いた。1cm間隔で堆積物組成の分析を行い、27元素の変動を得た。この結果を用いて、特に大陸系のテフラに特徴的に含まれるジルコニウム(Zr)が濃集しているテフラを選び出し、その層位関係や元素組成の特徴を用いて地点間でのテフラ対比を試みた。
次に、上記の化学分析で対比可能性が高いと考えられたテフラ試料を分取し、火山ガラスの元素組成分析を行った。その結果、地点間で対比可能な中新世テフラを複数見出すことができた。さらにテフラ中のジルコン粒子を用いてU-Pb年代測定を行い、既存の年代モデルの改訂も試みた。
今後は、Zrの濃集している特徴的なテフラのみではなく、全てのテフラに対象を広げて対比の可否を検討する予定である。また、本研究で対象とした5地点の堆積物はリポジトリコア再解析プログラム(ReCoRD)「ReC23-03:中新世日本海の古気候・古海洋」で古海洋環境復元の対象としているため、本研究のテフラ対比を用いることで、中新世日本海の古海洋環境が三次元的に復元されることが期待される。また、本研究の進展により、将来的には陸上露頭の中新世堆積物の対比や年代決定に活用できると期待される。

引用文献
町田洋、新井房夫、(2003)新編火山灰アトラス:日本列島とその周辺、東京大学出版会.
Tada (1994) Paleoceanographic evolution of the Japan Sea, Paleo3, 108, 3-4.
Tada et al. (2015) Proceedings of the IODP, Volume 346.
Tamaki et al. (1990) Ocean Drilling Program Initial Reports Volume 127.
Kurokawa et al. (2019) Cyclostratigraphy of the Late Miocene to Pliocene sediments at IODP sites U1425 and U1430 in the Japan Sea and paleoceanographic implications, PEPS, 6:2.