講演情報
[T12-P-12]ネバダ州北東部に分布する下部三畳系ディンウッディー層から産出したコノドント化石とアンモノイド化石
*前川 匠1、ジェンクス ジェームス、重田 康成2 (1. 大阪市立自然史博物館、2. 国立科学博物館)
キーワード:
コノドント、アンモノイド、前期三畳紀、ディンウッディー層、サイネス層群
アメリカ合衆国西部のグレートベースン地域には,ペルム系と三畳系の海成層が広く分布している.ネバダ州東部・ユタ州・アイダホ州・ワイオミング州に分布する下部三畳系は,複数の累層からなるサイネス層群としてまとめられている(Lucas et al., 2007).ディンウッディー層は,サイネス層群の最下部に位置しており,グレートベースン地域に広く分布している(Lucas et al., 2007).ディンウッディー層からは,コノドント化石が多数報告されており,その地質年代は下部三畳系インドゥアン階と推定されている(Paull, 1980).本研究では,ネバダ州Crittende Springsに分布するディンウッディー層から産出したアンモノイドとコノドント化石について報告する.
本研究の調査地であるCrittenden Springsは,ユタ州との州境に近いネバダ州エルコ郡の北東部に位置している.この地域に分布するディンウッディー層は,主に厚い泥岩層を主体とし,海棲生物の化石を豊富に含む石灰岩や砂岩の薄層を多数挟んでいる.ディンウッディー層の泥岩層は,ペルム系の石灰岩やチャートを不整合に覆い,オレネキアン階と推定されているサイネス層下部の暗灰色石灰質泥岩層に不整合に覆われる.コノドント化石とアンモノイド化石は,化石に富む石灰岩や石灰質砂岩の薄層から多数産出する.これまでに,Wordioceras wordiei, Gyronites rigidus, Gy. frequens, Ussuridiscus varaha, Ghazalaites roohiae, Proptychite sp. などのアンモノイド化石が産出した.また,コノドント化石は,Clarkina carinata, C. nassichuki, C. griesbachiensis, C. krystyni, Hindeodus spp., Sweetospathodus kummeli, Neospathodus dieneriなどが多産した.これらの化石が示す地質年代は,インドゥアン階下部(グリンスバキアン亜階)上部~インドゥアン階上部(ディーネリアン亜階)であった(Jenks et al., 2021, 2025).Gy. rigidus, Gy. frequens, Gh. roohiaeなどのアンモノイド化石は,これまでにテチス海地域からのみ産出が報告されていたが,パンサラッサ海地域まで広域に分布していたことが明らかになった.
グリンスバキアン亜階とディーネリアン亜階の境界(GDB)は,Gyronites属のアンモノイド化石かS. kummeliの初産出層準によって決定されているが,調査地域のディンウッディー層においては,S. kummeliがGy. rigidusの初産出層準よりも約30m上位の層準から産出し始めていた.この結果は,テチス海地域において,前者が後者よりも下位の層準から産出し始めるという報告(Han et al., 2022)と異なっていた.そのためGDBの指標種の決定には,今後,複数の地域でGDB前後の両者の初産出層準を比較検討する必要があると考えられる.
文献:Lucas, S.G. et al. (2007) New Mexico Museum of Natural History & Science (NMMNHS) Bulletin 40, 103-108; Paull, R.K. (1980) [PhD thesis] University of Wisconsin-Madison, 186 p.; Jenks, J.F. et al. (2021) NMMNHS Bulletin 86, 1-23; Jenks, J.F. et al. (2021) NMMNHS Bulletin 97, 1-29; Han, C. et al. (2022) Global and Planetary Change, 208, 103703.
本研究の調査地であるCrittenden Springsは,ユタ州との州境に近いネバダ州エルコ郡の北東部に位置している.この地域に分布するディンウッディー層は,主に厚い泥岩層を主体とし,海棲生物の化石を豊富に含む石灰岩や砂岩の薄層を多数挟んでいる.ディンウッディー層の泥岩層は,ペルム系の石灰岩やチャートを不整合に覆い,オレネキアン階と推定されているサイネス層下部の暗灰色石灰質泥岩層に不整合に覆われる.コノドント化石とアンモノイド化石は,化石に富む石灰岩や石灰質砂岩の薄層から多数産出する.これまでに,Wordioceras wordiei, Gyronites rigidus, Gy. frequens, Ussuridiscus varaha, Ghazalaites roohiae, Proptychite sp. などのアンモノイド化石が産出した.また,コノドント化石は,Clarkina carinata, C. nassichuki, C. griesbachiensis, C. krystyni, Hindeodus spp., Sweetospathodus kummeli, Neospathodus dieneriなどが多産した.これらの化石が示す地質年代は,インドゥアン階下部(グリンスバキアン亜階)上部~インドゥアン階上部(ディーネリアン亜階)であった(Jenks et al., 2021, 2025).Gy. rigidus, Gy. frequens, Gh. roohiaeなどのアンモノイド化石は,これまでにテチス海地域からのみ産出が報告されていたが,パンサラッサ海地域まで広域に分布していたことが明らかになった.
グリンスバキアン亜階とディーネリアン亜階の境界(GDB)は,Gyronites属のアンモノイド化石かS. kummeliの初産出層準によって決定されているが,調査地域のディンウッディー層においては,S. kummeliがGy. rigidusの初産出層準よりも約30m上位の層準から産出し始めていた.この結果は,テチス海地域において,前者が後者よりも下位の層準から産出し始めるという報告(Han et al., 2022)と異なっていた.そのためGDBの指標種の決定には,今後,複数の地域でGDB前後の両者の初産出層準を比較検討する必要があると考えられる.
文献:Lucas, S.G. et al. (2007) New Mexico Museum of Natural History & Science (NMMNHS) Bulletin 40, 103-108; Paull, R.K. (1980) [PhD thesis] University of Wisconsin-Madison, 186 p.; Jenks, J.F. et al. (2021) NMMNHS Bulletin 86, 1-23; Jenks, J.F. et al. (2021) NMMNHS Bulletin 97, 1-29; Han, C. et al. (2022) Global and Planetary Change, 208, 103703.
