講演情報
[G-P-11]背斜と向斜の教え方
*星 博幸1 (1. 愛知教育大学自然科学系)
【ハイライト講演】 地学という教科は高校までない。それも必修ではない。それに対して、小学校から理科という教科の中で、地学の基本概念はどんどん教えられている。発表者はこの部分に注目して、どのように基本概念を導入したらよいか提案している。地学教育の基本にかかわる重要問題である。※ハイライト講演とは...
キーワード:
地学教育、褶曲、背斜、向斜
褶曲は現在の初等・中等教育において中学校理科第2分野で扱うものと学習指導要領で定められている。そのため、教科書各社の中学校理科教科書には褶曲について「地層に力がはたらいて押し曲げられたもの」のような簡単な説明と概念図が示されている。高等学校理科では、学習指導要領に褶曲の扱いの定めはないものの、現行の高等学校理科「地学基礎」の教科書のすべてに褶曲の説明が含まれており、それらの多くの教科書では背斜と向斜についても説明されている。説明は教科書によって若干異なるものの、模式図とともに「上に向かって凸に曲がった部分を背斜、下に向かって凸に曲がった部分を向斜という」や「山状に盛り上がった部分を背斜、谷状にくぼんだ部分を向斜という」のように説明されている。高等学校理科「地学」の教科書でも褶曲の説明は「地学基礎」の説明とほぼ同じである。地学を学ぶ生徒や予備校生などを想定した学習参考書での褶曲の説明も「地学基礎」の説明と同様である。こうした説明は褶曲の形状と鉛直方向との関係に基づくものだが、実は背斜と向斜の説明として不正確である。今回筆者はこの問題について指摘するとともに、改善案を提示する。
背斜と向斜を認定するポイントは、地層の層序的な上位方向と褶曲形状との関係である。背斜は上位方向が発散する(褶曲の軸部に背きあう)部分であり、向斜は上位方向が収束する(軸部に向きあう)部分である。高等学校教科書で扱う褶曲の模式図は、褶曲の模式図に地層の上位方向を矢印で示すことによって問題がなくなる(画像参照)。そして背斜は「地層の上位方向の矢印が発散する部分」、向斜は「地層の上位方向の矢印が収束する部分」と説明すればよい。このように説明することは、地層の層序的上位・下位方向と鉛直・水平を基準とした場合の上下(鉛直上方・鉛直下方)が異なる場合があることを生徒に意識させることにも繋がる。高等学校の地学教育では、背斜と向斜の意味を生徒が正しく理解できるように、今回提示する改善案を踏まえて教科書・学習参考書等を改訂する必要がある。
本報告の内容の詳細については星(2025)を参照されたい。
<文献> 星 博幸(2025)背斜と向斜.地学教育78(1)印刷中

