講演情報
[J-P-12]動画解析プログラムを用いた桜島の火山雷解析
*池田学園池田高等学校 SSH地球科学班1 (1. 池田学園池田高等学校)
研究者生徒氏名:関 爽太朗・横山 陸
火山雷1)は桜島で噴火が起こるとよく見られる放電発光現象である。噴出する粒子同士の衝突やマグマの破砕などで帯電し発生すると考えられているが,噴煙の帯電状態などを含め,その発生の仕組みが解明されていない。そこで,西歩美ら2)は昭和火口噴火に伴う火山雷について,また,重吉絢斗ら3)は南岳山頂火口に伴う火山雷について,目視で動画解析を行い,その特性評価を行った。しかし,目視での動画観測は非常に人手と時間がかかる上に,観察者による誤差が結果に影響することが懸念される。
そこで,本研究では,数値解析ソフトウェア「MatLab」を用いて定点カメラの動画解析を
自動で行い,火山雷の検出と特性評価を行う。そして,噴火規模や噴煙との相関を調べ,将来的には火山雷による噴火規模の予測を目指す。まずは,重吉絢斗らと同様に株式会社財宝温泉から提供された垂水市からの定点カメラの動画をもとに火山雷を自動で検知し,画像解析する方法を以下のように考案する。
まず,動画の映像を一フレーム毎に画像に変換する。その後,一フレーム違いの画像二枚から,火山雷が発生した場合にその位置や高さを求めるプログラムを全てのフレームで行う。具体的には,二枚の画像をそれぞれRGBのうちB値の大きさを反映したモノクロの画像にグレースケール化する。次に変換した二枚の画像のB値の差分となる画像を生成する。その後,B値の差が一定の値より大きい部分が白,それ以外は黒となる画像を生成(二値化)し,最後に細かなノイズを除去する。こうしてできた画像に白い部分が残っていれば,そこが火山雷の発生した場所であると推測し,発生した時間と標高,長さを求めて記録する。これを全てのフレームに適用し,映像内の全ての火山雷を検出する。
本研究では提供された火山雷動画の中で特徴的な2022年8月2日の映像,2022年12月3日の映像の二事例の解析を試み,画像解析プログラムの評価を行った。前者は小さな噴火で密度の小さい噴出物を火口周辺にまき散らすタイプのもので,後者は大きな噴火で高温な噴出物を高く噴き上げるタイプのものである。両者とも火山雷が多く発生しており,動画解析のサンプルとして利用できると判断した。
以下のような動画解析結果が得られた。
まず,2022年8月2日の動画については,噴火物があまり高い位置まで上昇せず,低い位置に停滞して映像を通して一定の座標に火山雷が続けざまに発生した。さらに,この映像では縦方向に伸びた火山雷と横方向に伸びた火山雷が混在して確認できた。また,噴出物が上昇し始め,一定の高さに到達するまでは点雷が多く確認された。火口付近で発生した火山雷は縦方向及び横方向の伸びが少なく,逆に噴出物上部で発生した火山雷は縦方向,横方向共に長い物が多く,斜め方向に伸びた火山雷も確認できた。
次に,2022年12月3日の動画については,噴出物が火口から昇り始めると共に縦方向に長い雷が多数発生したことを確認した。その中には桜島の火口付近まで届くものも確認できた。時間が経過するに連れ,火山雷の発生頻度が落ちていった。南岳火口では火山噴出物が噴火直後すぐに砕け散り,帯電するため,このような結果になったと考えられる。
今後は動画解析のサンプル数を増やし,仮説をより正確なものにしていきたい。また,これから更に動画解析プログラムの精度を高め,さらに研究を進展させたい。
参考文献
1)相澤広記,火山電磁気観測の進展,火山 第 61 巻 (2016) 第2号 345-365 頁
2)西 歩美ら, 桜島の噴火に伴う火山雷の特性評価とそのモデルの提唱, 日本物理学会第8回Jr.セッション,口 頭発表,鹿児島県立錦江湾高等学校
3)重吉絢斗ら,桜島南岳火口における噴火に伴う火山雷の特性評価,2023年日本地質学会ジュニアセッション抄録,池田学園池田高等学校
キーワード
火山雷・動画解析・画像の差分処理
火山雷1)は桜島で噴火が起こるとよく見られる放電発光現象である。噴出する粒子同士の衝突やマグマの破砕などで帯電し発生すると考えられているが,噴煙の帯電状態などを含め,その発生の仕組みが解明されていない。そこで,西歩美ら2)は昭和火口噴火に伴う火山雷について,また,重吉絢斗ら3)は南岳山頂火口に伴う火山雷について,目視で動画解析を行い,その特性評価を行った。しかし,目視での動画観測は非常に人手と時間がかかる上に,観察者による誤差が結果に影響することが懸念される。
そこで,本研究では,数値解析ソフトウェア「MatLab」を用いて定点カメラの動画解析を
自動で行い,火山雷の検出と特性評価を行う。そして,噴火規模や噴煙との相関を調べ,将来的には火山雷による噴火規模の予測を目指す。まずは,重吉絢斗らと同様に株式会社財宝温泉から提供された垂水市からの定点カメラの動画をもとに火山雷を自動で検知し,画像解析する方法を以下のように考案する。
まず,動画の映像を一フレーム毎に画像に変換する。その後,一フレーム違いの画像二枚から,火山雷が発生した場合にその位置や高さを求めるプログラムを全てのフレームで行う。具体的には,二枚の画像をそれぞれRGBのうちB値の大きさを反映したモノクロの画像にグレースケール化する。次に変換した二枚の画像のB値の差分となる画像を生成する。その後,B値の差が一定の値より大きい部分が白,それ以外は黒となる画像を生成(二値化)し,最後に細かなノイズを除去する。こうしてできた画像に白い部分が残っていれば,そこが火山雷の発生した場所であると推測し,発生した時間と標高,長さを求めて記録する。これを全てのフレームに適用し,映像内の全ての火山雷を検出する。
本研究では提供された火山雷動画の中で特徴的な2022年8月2日の映像,2022年12月3日の映像の二事例の解析を試み,画像解析プログラムの評価を行った。前者は小さな噴火で密度の小さい噴出物を火口周辺にまき散らすタイプのもので,後者は大きな噴火で高温な噴出物を高く噴き上げるタイプのものである。両者とも火山雷が多く発生しており,動画解析のサンプルとして利用できると判断した。
以下のような動画解析結果が得られた。
まず,2022年8月2日の動画については,噴火物があまり高い位置まで上昇せず,低い位置に停滞して映像を通して一定の座標に火山雷が続けざまに発生した。さらに,この映像では縦方向に伸びた火山雷と横方向に伸びた火山雷が混在して確認できた。また,噴出物が上昇し始め,一定の高さに到達するまでは点雷が多く確認された。火口付近で発生した火山雷は縦方向及び横方向の伸びが少なく,逆に噴出物上部で発生した火山雷は縦方向,横方向共に長い物が多く,斜め方向に伸びた火山雷も確認できた。
次に,2022年12月3日の動画については,噴出物が火口から昇り始めると共に縦方向に長い雷が多数発生したことを確認した。その中には桜島の火口付近まで届くものも確認できた。時間が経過するに連れ,火山雷の発生頻度が落ちていった。南岳火口では火山噴出物が噴火直後すぐに砕け散り,帯電するため,このような結果になったと考えられる。
今後は動画解析のサンプル数を増やし,仮説をより正確なものにしていきたい。また,これから更に動画解析プログラムの精度を高め,さらに研究を進展させたい。
参考文献
1)相澤広記,火山電磁気観測の進展,火山 第 61 巻 (2016) 第2号 345-365 頁
2)西 歩美ら, 桜島の噴火に伴う火山雷の特性評価とそのモデルの提唱, 日本物理学会第8回Jr.セッション,口 頭発表,鹿児島県立錦江湾高等学校
3)重吉絢斗ら,桜島南岳火口における噴火に伴う火山雷の特性評価,2023年日本地質学会ジュニアセッション抄録,池田学園池田高等学校
キーワード
火山雷・動画解析・画像の差分処理

