講演情報
[J-P-20]変圧器を利用した水槽実験による皿状構造の再現と形成過程の考察―地層の固結度と水圧の違いから考える堆積構造の形成条件―★ジュニアセッション奨励賞 受賞講演★
*東京学芸大学 附属高等学校1 (1. 東京学芸大学附属高等学校)
研究者生徒氏名:相川雅門
1.目的
皿状構造の形成過程に関しては,これまでも議論されてきた。辻・宮田(1987)によると,皿状構造の形成過程で生じる水洞は,地層と下方から流入される水との圧力が適当な時に形成される。それを踏まえ,本校でも探究活動において佐藤・鎌田(2023)により,水槽を用いた皿状構造の実験が行われてきた。しかし,全体の地層が水と一緒に持ち上がることはあったが,水洞は形成されず,皿状構造の再現には至らなかった。そこで,本研究では水槽での再現装置を用いて,実際に皿状構造を再現し,その形成に必要な条件がどのようなものであるか解明した上で,実験の再現性を高めることを目的とした。
2.皿状構造について
皿状構造は,シルト層や砂岩層に認められる層理面と平行な向きにできる葉理で,層理に垂直な断面では長さ数cm〜数10cmで上方に凹の形態をしている。辻・宮田(1987・1997)によると,まず地層下部から水(浸透流)が湧き上がり,この時に水の圧力と量が適当な時,地層中に水洞が形成される。そして,水洞が形成された周辺の砂粒は浸透流に巻き込まれた後に水洞の底に堆積する。
3.実験方法
実験方法としては,⽔槽に⽔と⽯英砂を約15cm⼊れ,地層を棒で押し固めた後,数⼗分放置してから5mm程度の⽯英砂を追加し,不透⽔層を作成した。その後,さらにカラーサンドを5mm 程度加えた。それから,再度15cm程度の⽯英砂を加えて押し固め,数時間放置した。最終的に,変圧器に接続したモーターを⽤いて⽔槽に⽔を注⼊し,内部に形成された構造を確認するとともに,カラーサンドが⽔槽中でどのように移動したかも確認した。
4.結果
実験を通して数回,皿状構造と思われる構造を確認することができた。これまで,「水圧が強い」ことが課題として挙がっていたが,変圧器を利用したことでゆっくりと水を流入させることができ,水が斜め上方に進んでいく様子を観察することができた。また,不透水層にカラーサンドを敷いたところ,基本的にはそのまま残っていたものの,水の影響により上方に移動したところもあったので,不透水層はある程度,水洞を止める働きを担っていると考えられる。
5.考察
本研究では水槽での再現実験を行い, 変圧器で水流を調整することで,皿状構造の形成の過程に生じる水洞を観察することができ,佐藤・鎌田(2023)の仮説ように,適当な地層の強度と水圧の環境下においては,皿状構造は形成された。一方で,地層を1週間程度,放置してから水を流入させると不透水層の下で数秒間停止し,一気に地上まで水とその周辺の堆積物が,既存の葉理を突き破って上昇する,噴砂のような現象が起きた。水の流入が終わった後の地層を観察すると,不透水層(泥層)よりも下に堆積した砂層が,水により液状の流動体となり,既存の地層を破壊して貫入する,砕屑性貫入構造が見られた。このことから,実験の条件を変えることで皿状構造以外の堆積構造も,形成される可能性があることが分かった。
6.今後の展望
今後は,不透水層とカラーサンドの敷き方を工夫し,不透水層の前後の動きを明確化させるとともに,実験条件を変えることで噴砂などの他に堆積構造が見られないか変圧器を用いて定量的に検証していきたい。
キーワード:皿状構造、堆積構造、噴砂、変圧器、不透水層
