講演情報

[J-P-21]使い捨てライターから解明する日本沿岸の海流

*東京学芸大学 附属高等学校1 (1. 東京学芸大学附属高等学校)
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 研究者生徒氏名:土屋 奏

 近年、海洋ゴミに関する問題は世界各地で議論されており、この問題は環境や生態系、さらには人々の生活に深刻な影響を及ぼしている。中でも漂流ゴミは、遠く離れた地域にまで運ばれることで国境を越えた問題となっており、その発生源の特定や対策が難しくなっている。
 本研究では、関東地方の海岸に漂着した使い捨てライターを収集し、その流出地と日本沿岸の海流を明らかにすることを目標とした。
 調査は、東京都(お台場)、神奈川県(西浦漁港、鵠沼海岸、逗子海岸、諏訪町下海岸、真名瀬海岸、森戸海岸、三浦半島西側の小さな海岸、吉浜海岸)および静岡県(三津海岸、千本浜海岸)の地点で2024年6月から2025年7月の約13ヶ月間ライターの収集を行なった。
 使い捨てライターに焦点を当てたのは、使い捨てライターが小さく、壊れにくく、製造国や流出地の表記がされているという特徴が本研究に適しているためである。各地点で収集後のライターについて、鹿児島大学・藤枝繁教授作成の「ディスポーザブルライター分類マニュアル Ver.1.2」に則り解析した。タンク底面やタンクの側面に印字された文字(製造国名、企業名、電話番号等)を調査し、製造国や流出地を判別した。
 確認されたライターの多くは「CHINA」と記載されていた。また、中国語がタンク側面に印刷されているものもあり、回収したライターの多くは中国製であることがわかった。また、日本製と書かれたものは少なく、韓国・台湾・その他東南アジアから来たライターは現時点で1本ほどしか発見されていない。これらから、ライターの主な流出地は、製造国が中国のライターが多いということから中国なのではないかと考えられる。
 また、回収したライターの多くが中国製であったことは、ユーラシア大陸から漂流したごみが本地域の海岸にも達していることを示唆する。過去の研究でも、中国・台湾由来のライターが日本海・東シナ海沿岸で多数確認されており、中国からのごみ漂流が日本沿岸に影響することが報告されている。その一方、日本製のライターは本調査ではほとんど発見されず、漂着した海外製のライターは主に海外起源のものであると考えられる。
 今後は、採取地点や期間を拡大し、サンプル数を増やすことで、流出地の特定をしていきたい。また、調査中に中国語で製造された都市名が書かれている浮きを発見したため、ライターと同時に収集することで流出地の特定を進めていきたい。
 本研究では、海岸に漂着した使い捨てライターをライター分類マニュアルに従って分類・分析した結果、中国製ライターが多くを占めることを確認した。この結果から、相模湾および駿河湾の海洋ゴミの流出源の一部がユーラシア大陸から来ている可能性があることがわかる。今後も継続的に流出地のわかる海岸漂着物を収集することで、サンプル数を増やし、研究への信頼性を高めるとともに、流出地の詳細な解明を進める。

キーワード:使い捨てライター、漂着ごみ、関東地方の海岸、海流と流出地の特定