講演情報

[T1-O-21]大分県佐賀関半島の高変成度岩ブロックを含む蛇紋岩メランジュの発見

*宮下 敦1、村上 丈司2、笠木 明、辻森 樹3 (1. 放送大学、2. 福岡石の会、3. 東北大学)
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キーワード:

蛇紋岩メランジュ、三波川変成岩類、黒瀬川帯、ざくろ石藍閃石片岩、フェンジャイトK-Ar年代

 佐賀関半島の三波川変成岩類は緑泥石帯からざくろ石帯低温部の低い変成条件を示すとされてきた(宮崎・吉岡, 1994).園田(1985)は,佐賀関半島北縁部三波川変成岩類の構造上の最下位に,「ホルンブレンド砂質片岩」を含む種々の岩相が混在する部分を認め,「福水層」を定義した.そして,福水層は,それより構造上上位の岩体である「佐賀関ナップ」の基底となるテクトニック・メランジュの性質を持っていると考えた.また,福水層中の黒雲母帯に相当する粗粒な泥質片岩は「巨大な蛇紋岩体に含まれて存在する」とした.一方,Kawaguchi et al., (2020)は,佐賀関半島・中の原付近の三波川変成岩類北縁部に,473MaのジルコンU-Pb年代を持つ閃緑岩-石英閃緑岩を発見し,黒瀬川帯が三波川帯に直接衝上していると考えた.
最近,筆者らは,園田(1985)が福水層模式地とした福水港東側の海岸で泥質片岩や珪質片岩をブロックとして包有する蛇紋岩メランジュを確認した.ブロックと蛇紋岩の接触部には反応縁は観察されない.この蛇紋岩メランジュの近傍で,ざくろ石藍閃石片岩,直径約1cmのざくろ石を含むざくろ石角閃岩,藍閃石緑れん石片岩などの高度変成岩類の転石を発見した.転石の中には1辺が5m以上に達する巨礫が存在する.陸域側に同様の岩石の露頭がないことや,海岸部の地質状況から判断して,これらの高変成度岩類の露頭は,蛇紋岩メランジュの海底延長部にあると推定される.
発見された高変成度岩類に共通に含まれる藍閃石は,Glaucophane~Ferro-glaucophaneの分類境界付近の化学組成を示す.ざくろ石藍閃石片岩中のざくろ石は,Mnに富む顕著なコアと,Feに富むマントル部分,およびCaに富むリムの部分を持つ組成累帯を示す.この特徴は,四国・眉山地域のざくろ石藍閃石片岩(Kabir and Takasu, 2016)と類似する.
佐賀関半島福水海岸の高変成度岩類は,地質構造上の位置や蛇紋岩メランジュの特徴を持つことから黒瀬川帯への帰属が推定されるが,黒瀬川帯の藍閃石片岩でざくろ石を含むものは知られていない.逆に,岩相や変成鉱物組み合わせの特徴は四国中央部三波川変成岩類と共通点があるが,佐賀関を含む九州の三波川変成岩類相当岩体では,これまで報告例がない.講演要旨投稿時点では,この岩体の帰属は黒瀬川帯と三波川帯の両方の可能がある.帰属を決定するため,ざくろ石藍閃石片岩中のフェンジャイトK-Ar年代を測定中である.

引用文献
Kawaguchi et. al., (2020), Geoscience Frontiers, 11, 1441-1459, DOI:/10.1016/j.gsf.2020.01.001.
Kabir M. F. and Takasu A. (2016), Metamorphic Geol. 34, 893-916, DOI:/10.1111/jmg.12198.
宮崎一博・吉岡敏和, (1994), 佐賀関地域の地質.地域地質研究報告(5万分のl地質図幅),地質調査所,40頁.
園田研之, (1985), 吉田博直先生退官記念論文集.371-385.