講演情報
[T10-O-6]内陸断層の運動像からみた北信越地方の応力場とその空間変化
*小林 健太1、千葉 響2、高橋 啓太3 (1. 新潟大学理学部地質科学教室、2. 原子力規制庁、3. 八千代エンジニヤリング株式会社)
キーワード:
小断層、多重逆解法、古応力、糸魚川-静岡構造線、新潟県、石川県
プレート内部の応力は,周囲のプレートとの相対運動などに起因し,ある範囲で共通なことが期待される.筆者らは,能登半島南部,糸魚川-静岡構造線(ISTL),長岡平野西縁断層帯などにおいて,地質図および露頭スケールの断層を解析し,応力とその変遷を求めてきた.その結果,引張から南北圧縮を経て,最新の東西圧縮へ至る変化が共通して認められた.一方,地域間の差異が無視できない箇所もある.今回,主にISTLの解析結果を紹介するとともに,差異が生じた原因を議論する.
ISTLの最北部は横川断層と称され,西側に先新第三系,東側に新第三系が分布する.糸魚川市フォッサマグナパーク(FMP),その南方2露頭(横川・浦川露頭)を調査した(千葉ほか,印刷中).FMPでは断層岩をFR1〜18に区分した.多くは帯状に連続し,小断層が付随する.これら小断層を特にセンスに基づいて,4つの断層帯に取りまとめた.SF:北東-南西走向の左横ずれ断層,NF:北西-南東走向の左横ずれ正断層,DF2:北東-南西走向の右横ずれ逆断層,DF1:北東-南西走向の右横ずれ正断層,である.切断関係からこの順に形成されたと判断される.また,小断層と鉱物脈について,多重逆解法(山路,1999)と岩脈法(Yamaji & Sato,2011)を用いた古応力解析を行なった.FMPでは4つの応力が検出された.Stress FAはSF,FBはNF,FC2はDF2,FC1はDF1から得られ,この順に変遷したと考えられる.一方,横川露頭では4つ,浦川露頭では3つの応力が検出された.3つの露頭において,最後期の応力は共通して北東-南西ないし東西にσ1軸が向く特徴がある.
能登半島南部の宝達山北縁断層帯では,日本海拡大期以降の応力変遷が認められ,最新の応力は西北西-東南東圧縮を示す(高橋・小林,2018).長岡平野西縁断層帯(鳥越断層)でも,西北西-東南東圧縮を示す逆断層や褶曲が形成されている(小林・菅,2025).ともにフィリピン海プレートの北西進で説明できるが,横川断層のσ1軸はこれとやや合わない.同様な応力方位の変化は,2014年長野県北部地震(M6.7)とその余震活動でも認められた(Panayotopoulos et al., 2016).震源断層の東側(上盤)では西北西-東南東にP軸を持つ逆断層型のメカニズム解が卓越し,周囲の褶曲構造とも調和的であるのに対し,下盤側では横ずれ型が多く,P軸方位は東西から北東-南西へ振る.ISTLに共通した現象であり,アムールプレートの東進に起因する可能性が高い.
文献:
千葉 響・高橋啓太・小林健太,印刷中,地質雑.
小林健太・菅 敦成,2025,JpGU演旨.
Panayotopoulos, Y., Hirata, N., Hashima, A., Iwasaki, T., Sakai, S., Sato, H. 2016, Tectonophysics.
高橋啓太・小林健太,2018,JpGU演旨.
山路 敦,1999,構造地質.
Yamaji, A. & Sato, K., 2011, JSG.
ISTLの最北部は横川断層と称され,西側に先新第三系,東側に新第三系が分布する.糸魚川市フォッサマグナパーク(FMP),その南方2露頭(横川・浦川露頭)を調査した(千葉ほか,印刷中).FMPでは断層岩をFR1〜18に区分した.多くは帯状に連続し,小断層が付随する.これら小断層を特にセンスに基づいて,4つの断層帯に取りまとめた.SF:北東-南西走向の左横ずれ断層,NF:北西-南東走向の左横ずれ正断層,DF2:北東-南西走向の右横ずれ逆断層,DF1:北東-南西走向の右横ずれ正断層,である.切断関係からこの順に形成されたと判断される.また,小断層と鉱物脈について,多重逆解法(山路,1999)と岩脈法(Yamaji & Sato,2011)を用いた古応力解析を行なった.FMPでは4つの応力が検出された.Stress FAはSF,FBはNF,FC2はDF2,FC1はDF1から得られ,この順に変遷したと考えられる.一方,横川露頭では4つ,浦川露頭では3つの応力が検出された.3つの露頭において,最後期の応力は共通して北東-南西ないし東西にσ1軸が向く特徴がある.
能登半島南部の宝達山北縁断層帯では,日本海拡大期以降の応力変遷が認められ,最新の応力は西北西-東南東圧縮を示す(高橋・小林,2018).長岡平野西縁断層帯(鳥越断層)でも,西北西-東南東圧縮を示す逆断層や褶曲が形成されている(小林・菅,2025).ともにフィリピン海プレートの北西進で説明できるが,横川断層のσ1軸はこれとやや合わない.同様な応力方位の変化は,2014年長野県北部地震(M6.7)とその余震活動でも認められた(Panayotopoulos et al., 2016).震源断層の東側(上盤)では西北西-東南東にP軸を持つ逆断層型のメカニズム解が卓越し,周囲の褶曲構造とも調和的であるのに対し,下盤側では横ずれ型が多く,P軸方位は東西から北東-南西へ振る.ISTLに共通した現象であり,アムールプレートの東進に起因する可能性が高い.
文献:
千葉 響・高橋啓太・小林健太,印刷中,地質雑.
小林健太・菅 敦成,2025,JpGU演旨.
Panayotopoulos, Y., Hirata, N., Hashima, A., Iwasaki, T., Sakai, S., Sato, H. 2016, Tectonophysics.
高橋啓太・小林健太,2018,JpGU演旨.
山路 敦,1999,構造地質.
Yamaji, A. & Sato, K., 2011, JSG.
