講演情報

[T10-O-7]熊本県 日奈久断層帯の完新世テクトニクス

*横山 祐典1,2,3,4、タン エバン1,3、宮入 陽介1、白濱 吉起5,6、宮下 由香里5 (1. 東京大学 大気海洋研究所、2. 東京大学 理学系研究科地球惑星科学専攻、3. 東京大学 総合文化研究科国際環境学教育研究機構、4. オーストラリア国立大学 物理学研究所、5. 国立研究開発法人 産業技術総合研究所、6. 東京大学 地震研究所)
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キーワード:

熊本地震、完新世、海水準

 2016年4月14日にマグニチュード(Mj) 6.5、続く16日にMj 7.3の巨大地震が熊本県で発生した。破壊したのは布田川断層帯と日奈久断層帯の一部であり、30 km以上にわたり地表地震断層が現れた [1]。日奈久断層帯は熊本平野から八代海にかけて連続する長さ約81 km以上の断層帯であり、北から高野―白旗区間、日奈久区間、八代海区間の3つに分けられている[2]。同断層帯は2016年の熊本地震の影響で地震活動が活発化し、次の地震発生が懸念されているが、現在まで日奈久区間から南において大きな地震は発生していない。これまで日奈久断層帯の高野―白旗区間及び日奈久区間では、複数のトレンチ調査が行われ、壁面から採取した地層の放射性炭素年代にもとづいて、活動履歴に関する検討が行われてきた。熊本地震後は、それまで年代測定に供されていなかったような有機物含有量の少ない堆積物についても放射性炭素年代測定が適用され、詳細な活動履歴が復元可能となってきている[3]。南西部の日奈久区間の2地点でもトレンチ調査が行われ、過去3回および5回の古地震履歴が復元されている[4]。一方、地盤の長期安定性評価については、過去の相対的海水準変動の情報が用いられる。第四紀の海水準変動が氷期―間氷期の繰り返しにより引き起こされており、最終間氷期と中期完新世の海水準高度について現在の海水準との相違に関する検討を行うことで長期的な隆起―沈降の傾向についての情報が取得可能である[5,6]。そこで今回、今後の更なる地震活動が懸念されている日奈久断層帯の日奈久区間南部の完新世を通じたテクトニクスについて評価するために、同区間において、複数のボーリング掘削を行い、放射性炭素年代測定や地球化学的な分析結果と固体地球の変形モデル(GIA: Glacio-hydro Isostatic Adjustment [7])を併用し、相対的海水準変動の情報を得た。本発表ではそれらの結果について紹介するとともに、過去約6,000年間のテクトニクスについて議論を行う。

引用文献
[1] Shirahama, Y., et al. (2016) E.P.S., 68:191, 1–12.
[2] 地震調査研究推進本部地震調査委員会(2013) 布田川断層帯・日奈久断層帯の評価(一部改訂).https://www.jishin.go.jp/main/chousa/13feb_chi_kyushu/k_11.pdf
[3] Shirahama, Y., et al. (2020) Island Arc, 30:e12376, 1–17.
[4] 岡村行信ほか,(2019) 平成28年熊本地震を踏まえた総合的な活断層調査 平成28〜30年度成果報告書.3.1 https://www.jishin.go.jp/main/chousakenkyuu/kumamoto_sogochousa/h28-h30/h28-h30kumamoto_sogochousa_3_1.pdf
[5] Tam, E. and Yokoyama, Y. (2020) Earth System Science Data, 13, 1477–1497.
[6] Yokoyama, Y., et al (2021) Nuclear Instr. Meth. Phys. Res. B. 535, 255–260.
[7] Yokoyama, Y., and Purcell, A (2021) Geoscience Letter 8, 13.