講演情報
[T11-O-6]常時微動観測データによる微地形判別の可能性
*小松原 純子1、長 郁夫1、佐藤 善輝1、納谷 友規1 (1. 産業技術総合研究所地質調査総合センター)
キーワード:
常時微動観測、Aso-4、自然堤防、微高地
沖積低地には河川流路周辺に形成される自然堤防に加え、残丘化した段丘が分布することがある。両者を識別することはその土地の形成史を考える上で重要であるのみならず、構成する地質の違いから地盤特性や液状化の起こりやすさが異なると考えられ、防災上も重要である。
標高や形態から両者の識別が困難な場合、掘削調査を行う必要があるが、時間や費用がかかり、面的なデータ収集には限界がある。そこで著者らは非破壊かつ簡便な方法として、常時微動データに基づく地盤特性の違いに注目した。昨年は埼玉県の加須低地で検証を行い、条件が揃えば常時微動観測データの位相速度と周波数から後期更新世の段丘と自然堤防の識別が可能なことを明らかにした(小松原ほか、2024)。
この手法が他地域や河川成の段丘以外でも適用可能かを確かめるため、福岡県の糸島低地において同様の常時微動観測を行った。糸島低地には不規則な形状の比高1-2mの微高地が点在し、自然堤防、段丘、Aso-4火砕流堆積物のいずれかから構成されている(福岡県、1985;久保ほか、1993)。今回の観測では1/5万地質図「前原」作成のために検土杖調査を行い地下地質が確認されている地点(佐藤・水野、2023)、もしくは地形判読から区分が明らかな地点を中心に、Aso-4堆積面、自然堤防、氾濫原、段丘面上を含む計8地点でデータを取得した。
その結果、地表から深度10mまでのS波速度の平均値(AVS10)は微高地のうち低位段丘面上でほぼ300 m/sを示したのに対し、自然堤防、Aso-4堆積面上では210 m/s以下とほぼ同程度の値を取ることが明らかとなった。すなわち、AVS10に基づけば低位段丘面は識別可能だが、自然堤防とAso-4堆積面の識別は難しい。一方、H/Vスペクトル比はAso-4堆積面でのみ2 Hz付近に特徴的なピークが見られたことから、Aso-4堆積面と自然堤防を識別する指標になる可能性がある。
この2Hzのピークがどのような地下構造に由来するものなのかは現時点で不明だが、同様のピークが中位段丘下位面にも見られることから、中位段丘下位面とAso-4堆積面は地下構造が共通する可能性がある。今後は観測点を増やして地下深部における地質・地盤構造を検討することにより、常時微動観測データに基づく糸島低地の微高地識別の可能性を評価したいと考えている。
文献
福岡県, 1985, 土地分類基本調査 前原 玄界島.
小松原純子ほか, 2024日本地球惑星科学連合2024年大会講演要旨HQR05-P06.
久保和也ほか, 1993, 20万分の1地質図幅. 地質調査所.
佐藤善輝・水野清秀, 2023,日本地球惑星科学連合2023年大会講演要旨 SGL23-P07.
標高や形態から両者の識別が困難な場合、掘削調査を行う必要があるが、時間や費用がかかり、面的なデータ収集には限界がある。そこで著者らは非破壊かつ簡便な方法として、常時微動データに基づく地盤特性の違いに注目した。昨年は埼玉県の加須低地で検証を行い、条件が揃えば常時微動観測データの位相速度と周波数から後期更新世の段丘と自然堤防の識別が可能なことを明らかにした(小松原ほか、2024)。
この手法が他地域や河川成の段丘以外でも適用可能かを確かめるため、福岡県の糸島低地において同様の常時微動観測を行った。糸島低地には不規則な形状の比高1-2mの微高地が点在し、自然堤防、段丘、Aso-4火砕流堆積物のいずれかから構成されている(福岡県、1985;久保ほか、1993)。今回の観測では1/5万地質図「前原」作成のために検土杖調査を行い地下地質が確認されている地点(佐藤・水野、2023)、もしくは地形判読から区分が明らかな地点を中心に、Aso-4堆積面、自然堤防、氾濫原、段丘面上を含む計8地点でデータを取得した。
その結果、地表から深度10mまでのS波速度の平均値(AVS10)は微高地のうち低位段丘面上でほぼ300 m/sを示したのに対し、自然堤防、Aso-4堆積面上では210 m/s以下とほぼ同程度の値を取ることが明らかとなった。すなわち、AVS10に基づけば低位段丘面は識別可能だが、自然堤防とAso-4堆積面の識別は難しい。一方、H/Vスペクトル比はAso-4堆積面でのみ2 Hz付近に特徴的なピークが見られたことから、Aso-4堆積面と自然堤防を識別する指標になる可能性がある。
この2Hzのピークがどのような地下構造に由来するものなのかは現時点で不明だが、同様のピークが中位段丘下位面にも見られることから、中位段丘下位面とAso-4堆積面は地下構造が共通する可能性がある。今後は観測点を増やして地下深部における地質・地盤構造を検討することにより、常時微動観測データに基づく糸島低地の微高地識別の可能性を評価したいと考えている。
文献
福岡県, 1985, 土地分類基本調査 前原 玄界島.
小松原純子ほか, 2024日本地球惑星科学連合2024年大会講演要旨HQR05-P06.
久保和也ほか, 1993, 20万分の1地質図幅. 地質調査所.
佐藤善輝・水野清秀, 2023,日本地球惑星科学連合2023年大会講演要旨 SGL23-P07.
