講演情報

[T11-O-14]PFAS指針値(暫定)超過現場で実施した井戸諸元調査等に基づく水文地質構造の推定(速報)

*田村 嘉之1、河野 里奈1、岩井 久美子1、木村 和也2 (1. 一般財団法人千葉県環境財団、2. 株式会社医療地質研究所)
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キーワード:

地質汚染、井戸諸元調査、有機ふっ素化合物、水文地質構造、ストレーナ検層

 はじめに
 土壌・地下水汚染にかかる調査については,土壌汚染対策法施行より,主に土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン(改訂第3.1版)(環境省,2022)にある方法で実施している.しかし,本ガイドラインの主目的は土壌汚染対策法に基づく措置等の区域指定を目的としており,必ずしも土壌・地下水汚染の浄化を目指してはいない.一方,千葉県では,平成元年に制定された「千葉県地下水汚染防止対策指導要綱(平成19年度末廃止)」や「千葉県地質汚染防止対策ガイドライン(平成20年制定,平成31年3月改正)」(千葉県,2019)により,事故時等の地質汚染防止対策や地質汚染判明時の対応のほか,自治体関係者(県,市町村),県研究所を含めた体制の整備等を明記されている.また,「地質汚染現場における汚染機構解明調査の手順-地下水汚染の浄化対策として-」(千葉県,2023)で技術的な参考文書として一般公開されている.本発表では,VOCs汚染現場での培われてきた手法を用いて,現在全国的に話題となっているPFAS指針値(暫定)を超過した現場で実施した井戸諸元調査の結果及び既存ボーリング資料による水文地質構造の推定した結果を速報する.
井戸諸元調査
以下の通り,調査を実施した.なお,北側地区で24箇所,南側地区で10箇所,合計34箇所で実施した.
①対象とした井戸は,PFOS及びPFOA濃度値で,指針値(暫定)を超過した個所を中心に選定した.
なお,一部,指針値(暫定)未満の箇所も選定した.
②①で選定した井戸のうち,ジェット式ポンプが設置している井戸を対象とした.
③②で選定した井戸において,揚水管を引き上げずに,地下水位を計測した.
④③の実施後,抵抗値を計測できるテスターを用いたストレーナ検層(佐藤ほか,2000)を実施した.また,井戸深度も計測した(図-1).
⑤井戸の管頭標高をGNSS測位で計測した.
また,上述の調査のほか,以下の調査も実施した.
⑥井戸の選定は①と同様に選定した.なお,ポンプ種別に関係なく選定した.
⑦揚水管をすべて引き上げた後,地下水位と井戸深度を計測した.
⑧井戸カメラを使用してストレーナ区間を計測した(図-2).
⑨揚水管再設置時に水位測定管も設置した.
⑩井戸の管頭標高及び水位測定管の管頭標高をGNSS測位もしくはレベル測量で計測した.
なお、管頭標高の測定で使用したGNSS測位については,田村ほか(2024)で述べたとおりである.
水文地質構造の推定と取水層
調査対象地及びその周辺で一般公開されている柱状図のほか,自治体で所有しているボーリング柱状図や許可対象となる事業用井戸の諸元情報を入手して,地層区分のほか,地質構造を推定した.その結果,対象地の標高-50mまでに第1透水層~第5透水層が分布していることが推定された.このうち,北側地区では第1透水層,第2透水層及び第3透水層から,南側地区では第1透水層と第2透水層からそれぞれ取水していることが判明した.なお,PFAS指針値(暫定)を超過した井戸の取水層は北側地区で第1透水層,第2透水層及び第3透水層,南側地区で第1透水層及び第2透水層であった.
また,調査対象地の北側地区での調査結果より,単一の透水層から取水している井戸の地下水位から,第1透水層,第2透水層及び第3透水層の地下水位分布及び流向を概ね把握することができた.一方,南側地区の地下水位分布及び流向は,調査した範囲が東西方向に細長いため,十分に把握することができなかった.
今後の調査について
これまでの調査により,大まかな水文地質構造は把握できた.今後の調査以下の内容を提案中である.
①四半期に1回以上の地下水位の測定,水位分布図の作成及び流向の把握.
②水文地質構造を把握するためのオールコアボーリングの実施.
なお,オールコアボーリング実施個所については,PFAS指針値(暫定)を下回っている地域を優先して選定する予定である.
引用文献
佐藤賢司ほか,2000,電気伝導度計を用いたストレーナ検層.日本地質学会第107年学術大会講演要旨,O-355.
田村嘉之ほか,2024,地質汚染機構解明調査における井戸諸元調査 -GNSS測位による位置及び管頭標高の測位(速報)-,第34回社会地質学シンポジウム論文・要旨集,15-16.