講演情報

[T12-O-12]群馬県下仁田町鏑川沿いに分布する下仁田層の古環境復元(予察)

*佐々木 聡史1、初谷 康佑1、菊川 照英2、高桒 祐司3、瀬戸 浩二4 (1. 群馬大学、2. 千葉県立中央博物館、3. 群馬県立自然史博物館、4. 島根大学)
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キーワード:

前期中新世、有孔虫化石、古環境

 群馬県下仁田町には,新第三紀前期中新世の下仁田層が分布している(群馬県地質図作成委員会,1999ほか).下仁田層は,下位より神農原礫岩部層,岩山礫岩部層,川井砂岩泥岩部層に区分され,各部層は,整合で一部指交関係である(Fujishiro & Kosaka, 1999).下仁田層上部の川井砂岩泥岩部層は,二枚貝化石や浮遊性有孔虫を用いた古環境復元が行われている(栗原ほか, 2005; 高桒・栗原, 2008など).Fujishiro & Kosaka (1999) によると,5つのルートから微化石試料として泥岩や砂岩を採取し,Dentoglobigerina baroemoenensisGlobigerina falconensisの浮遊性有孔虫産出より,浮遊性有孔虫化石帯N5およびN7以降であると推定され,内湾な浅海環境であったことを明らかにした.また,栗原ほか (2005) によると,川井砂岩泥岩部層の数地点から産出した貝化石群集から中間温~冷温帯の古海洋であったと推定された.しかし,先行研究では川井砂岩泥岩部層における数地点の化石分析結果しか得られておらず,下部の神農原礫岩部層や岩山礫岩部層を含めた連続的な微化石分析は行われていない.そこで,鏑川沿いにおける下仁田層に見られる岩相を報告し,岩石試料の微化石分析とCNS元素分析に基づき下仁田層の古環境復元を行った.
微化石試料の作成には,硫酸ナトリウム法,ナフサ法及びボロン法を併用によって処理を行った.その後,175 μmより粗粒な堆積物から有孔虫化石を抽出した.
結果として,5試料検討し,川井砂岩泥岩部層の合計1地点から有孔虫化石が確認された.また,微化石が確認できなかった堆積物試料は,石英を多く含んでいた.加えて,研究地域における堆積物に含まれる有機物炭素量は,全体的に少なかった.
本研究で採取した下仁田層の堆積岩は,下仁田町西部に分布する前期中新世の内山層の堆積岩と似ていると考えた.高桒・栗原 (2008) によると内山層の堆積岩が非常に硬く固結している理由は,厚く堆積した地層の荷重による強い圧力,あるいは地下深部への埋没による熱のためであり,埋没続成作用の進行によって珪質微化石もあまり産出しないと述べられている.実際に,下仁田町小屋場で採取された内山層の堆積岩からは微化石が確認できず,内山層と下仁田層の一部の岩石は非常に固結している.以上のことより,鏑川沿いにおけるこれらの堆積岩は,埋没続成作用を大きく受け,石灰質・珪質微化石や堆積物に含まれる有機物炭素量へ影響していると考えられる.

引用文献:Fujishiro & Kosaka (1999) Journal of Geological Society of Japan, 105, 122–139. 群馬県地質図作成委員会 (1999) 新井房夫 (監修), 内外地図, 114p.栗原ほか (2005) 地質学雑誌, 111, 498–507.高桒・栗原 (2008) 群馬県立自然史博物館研究報告, 12, 63–72.