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[T2-O-11]近畿地方,後期白亜紀有馬層群のジルコンU–Pb年代

*佐藤 大介1 (1. 産総研地質調査総合センター)
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キーワード:

有馬、U–Pb年代、白亜紀、西南日本

 日本を含む東アジア大陸縁辺部は,large silicic volcanic field(LSVF)の一例である.地殻内部では大量の花崗岩が形成され,地表ではカルデラ形成を伴うイグニンブライトの噴火が認められる(de Silva, 1989).LSVFにおける火成活動係を検討する上で,火山活動と深成活動の両者の理解が重要である.西南日本内帯は,白亜紀後期から古第三紀にかけて活発な火成活動が行われた地域である.近年,花崗岩についてはU–Pb年代が多く報告されているが火山岩については限定的である.そこで,本発表では近畿地方有馬地域の白亜紀火山岩を対象にジルコンU–Pb年代測定を行い,有馬地域における火成岩の特徴を明らかにする.

有馬地域の上部白亜系地質概要 有馬地域には北西部から南東部に向かって,篠ヶ峰層・鴨川層・平木溶結凝灰岩及び佐曽利カルデラが分布する.これらは溶結した流紋岩火砕岩を主体とし,流紋岩溶岩・岩脈及び砕屑岩を伴う.佐曽利カルデラを構成する地層は下位より武田尾層・玉瀬層・境野層・佐曽利凝灰角礫岩に区分される(松浦ほか,1995).武田尾層〜境野層火砕岩のU–Pb年代は82〜81 Maである(Sato et al., 2016).鴨川層は篠ヶ峰層と平木溶結凝灰岩に不整合に覆われ,平木溶結凝灰岩と佐曽利カルデラ関連岩は断層で隔てられる.岩相の類似性から鴨川層は玉瀬層に,平木溶結凝灰岩に境野層に対比される(松浦ほか,1995).

U–Pb
年代 篠ヶ峰層・鴨川層・平木溶結凝灰岩の火砕岩を対象に,ジルコンU–Pb年代を依頼測定した.その結果,各最若年粒子集団から以下の層序関係と矛盾しない206Pb/238U年代の加重平均値(誤差2σ)が得られた.
鴨川層(流紋岩溶結火山礫凝灰岩):76.4 ± 0.4 Ma
篠ヶ峰層(流紋岩溶結火山礫凝灰岩):75.7 ± 0.3 Ma
平木溶結凝灰岩(流紋岩溶結凝灰岩):74.1 ± 0.4 Ma
鴨川層・平木溶結凝灰岩は岩相の類似性からに佐曽利カルデラに関連する各層(82〜81 Ma)に対比されていたが,明らかに若い年代が得られ,異なる火成イベントで形成されたことが明らかとなった.佐曽利カルデラに関連する地層(Sato et al. 2016)と合わせてジルコンU–Pb年代(約82〜74 Ma)に基づくと,有馬地域の噴出・堆積時期はカンパニアン期に相当するが,およそ80 Maを境に大きく二分される.分布域は,80 Maより古い有馬層群が有馬地域東部に露出するのに対し,80 Ma以降ではより北西側(有馬地域西部)に分布する.本発表では有馬地域南部の六甲地域及び西南日本の火成活動についても合わせて検討・報告する予定である.

引用文献
De Silva (1989) Geology, 17, 1102–1106.
松浦ほか(1995)5万分の1地質図幅「広根」.
Sato et al. (2016) J. Volcanol. Geotherm. Res., 310, 89–97.