講演情報

[T13-O-2]房総半島南端に分布する海成鮮新−更新統を用いた磁気層序−海洋同位体層序の精密対比

*岡田 誠1、谷元 瞭太1、小塚 大輝3、小西 拓海2、柚原 涼花2、長友 大輝2 (1. 茨城大学、2. 茨城大学大学院、3. 国土地理院)
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キーワード:

鮮新−更新統、磁気層序、海洋同位体層序、房総半島

 鮮新世から更新世にいたる時代は,地球の気候は大気中pCO2が350ppmを超えるような温暖な気候から,氷期−間氷期サイクルが支配する状態へと進化し,我々人類が誕生・進化した重要な時代である1).この時期の出来事を理解する上で,天文年代較正が施された海洋同位体層序と磁気層序,各種生層序からなる複合年代層序の整備が必須となる.近年,磁気層序においては,地磁気極性反転だけではなく,地磁気強度(相対古地磁気強度ならびに10Be/9Be比による地磁気強度指標)の時系列変動記録の整備が進んでおり,より詳細な磁気層序対比が可能になりつつある2).こうした中,海洋コアから復元された地磁気強度記録と海洋同位体記録との対比より,過去5Maの地磁気逆転の殆どが間氷期に起こっていたことが報告され,地磁気成因論に一石を投じた3).ところが,海洋同位体と地磁気強度記録が同じ海洋コアから得られることは稀である.地磁気強度記録の多くは磁化率など海洋同位体の代替指標を基にした年代が用いられていることから,両者の対応関係が直接求められた事例は少ない.この問題を解決するためには,海洋同位体とRPIが同時に得られる堆積層を対象にした研究が必須である.
本講演では,強く安定した磁気シグナルを持ち,海洋微化石を豊富に産出する海成鮮新−更新統(ジェラシアン〜下部カラブリアン)の千倉層群を対象に,これまで著者らが行ってきた複合年代層序構築の様子を紹介する.下位層準から順に,布良層ではガウス正磁極帯中のマンモスおよびカエナ逆磁極亜帯が確認され4),海洋同位体記録との対比が進んでいる.上部布良層〜南朝夷層にかけては,概略的な磁気−海洋同位体複合層序が構築され5),更新統基底層準を貫く陸上ボーリング試料におけるガウス−松山地磁気逆転記録の解析が進んでいる6).さらに畑層においてはフェ二およびオルドバイ正磁極亜帯が確認され7),海洋同位体記録との対比が行われた8).以上により,これまで約3.4Ma〜1.5Maの年代区間において8つの地磁気逆転境界と海洋同位体層序との直接対比が行われた.今後,地磁気強度記録の復元を進め,海洋同位体記録と詳細に対比することで,地磁気強度を用いたより詳細な磁気年代層序の構築や,地磁気成因論の発展への貢献も期待される.

References
1) Hansen et al. (2023) doi:10.1093/oxfclm/kgad008
2) Channell et al. (2020) doi:10.1016/j.quascirev.2019.106114
3) Valet et al. (2025) doi:10.1016/j-quascirev.2025.109367
4) Tanimoto et al. (2024) doi:10.1186/s40623-024-02114-4
5) 岡田ほか (2012) doi:10.5575/geosoc.2011.0025
6) 柚原ほか (2024) 地質学会山形大会講演要旨
7) Konishi and Okada (2020) doi:10.1186/s40645-020-00352-0
8) 小塚ほか(2023) 地質学会京都大会講演要旨