講演情報

[G-O-26]東シナ海大陸斜面域における表層堆積物中のヘリウムの起源

*土岐 知弘1、與那嶺 竜勢1、鹿児島 渉悟2、高畑 直人3 (1. 琉球大学、2. 富山大学、3. 東京大学)
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キーワード:

東シナ海、大陸斜面域、表層堆積物、ヘリウム同位体比

 東シナ海大陸斜面では,これまで冷湧水や泥火山,メタン濃度異常などが報告されており,メタンが海底から海水中に放出されている。大気中のメタンは二酸化炭素の数十倍もの温室効果ガスであり,地球表面における物質循環の定量的な把握が極めて重要である。また,ヘリウム同位体の特性を利用して,海底堆積物中のガスの起源について検討する研究が数多くなされてきている。本研究では,奄美大島西方東シナ海大陸斜面域における表層堆積物中のヘリウム同位体比とガスの組成を調べ,ヘリウムの起源やメタンの有無を明らかにすることによって,冷湧水の海底下における海底熱水系とのつながりを検証することを目的としている。3He/4He 値は 0.98 ± 0.04 ~1.09 ± 0.02 Ra の範囲の値を取り,海底下深くなるにつれてヘリウム同位体比が低くなる傾向が見られ,浅いところでは東シナ海の深層と同様の値を示しており,過去の研究と矛盾がないデータが得られた。また,ガスの組成分析では,今回の分析方法では感度が悪く存在量を定量できなかったため,冷湧水の目安とされる 1 μM より高いかどうか確証が得られなかった。また,得られた二酸化炭素濃度は海水の10倍程度高く,熱水というよりも冷湧水の特徴に近いと考えられた。ヘリウムの起源は,マントル起源ヘリウムが15%程度含まれることが示された。世界中の海底熱水中のヘリウムの起源は,マントル起源ヘリウムが70%以上を示していることから,本研究地点周辺の海底は海底熱水系とのつながりは低いことが示唆された。4Heフラックスを推定すると5.09 × 104 atoms/cm2/sと見積もられ,熱水や冷湧水と比べると低いことが明らかとなった。本研究では冷湧水の特徴が確認できなかったが,過去の研究では本研究地点周辺の海底において,パッチ状にメタンが噴出していることが報告されていることから,本研究地点周辺においても同様にパッチ状に冷湧水が分布していることが示唆された。