講演情報
[G-O-28]オーストラリア北西大陸棚のブラウズ堆積盆地で産する天然ガスの起源と産状
*稲場 土誌典1、森田 宜史2 (1. 株式会社INPEXソリューションズ、2. 株式会社INPEX)
キーワード:
石油・天然ガス、二酸化炭素、ヘリウム、ブラウズ堆積盆地、オーストラリア
ブラウズ堆積盆地(Browse Basin)はオーストラリアの北西大陸棚に約14万平方キロメートルに渡って分布しており,層厚15,000mを超える古生界~新生界を堆積させている。ここでINPEXは,2000年にイクシスガス・コンデンセート田を発見した。中部ジュラ系と下部白亜系の砂岩貯留層から産出される可燃性天然ガスは,二酸化炭素を伴っている。可燃性の炭化水素から見ると,二酸化炭素は燃焼しない不用成分であり,温室効果ガスとして問題視もされている。もし探鉱に臨む時点で二酸化炭素の含有の程度を予測できるならば,二酸化炭素に乏しいことが期待できる候補のほうを優先させる選択も可能となる。
ブラウズ堆積盆地では実測値の数が十分とは言えないこともあり,実測された二酸化炭素の濃度のみからでは,その濃度の地域的特徴を議論することは困難であった。そこで,産出された二酸化炭素の起源を考察することから始めた。二酸化炭素は,有機起源(可燃性炭化水素と同じ有機物の熱分解に由来)と無機起源(炭酸塩鉱物の熱分解やマグマに由来)に大別される。このような二酸化炭素の起源は,その炭素同位体組成と,共存するヘリウムのような希ガスの同位体組成とを組み合わせることにより議論される。イクシスガス・コンデンセート田とその周辺で採取したガス11試料では,含まれる二酸化炭素の濃度はおよそ8%~16%,その炭素同位体組成δ13CCO2は-2.8‰~+0.3‰であった。また,含まれるヘリウムの同位体組成R/Ra比は0.20~0.80であった。Huang et al. (2015) に従うと,分析した11試料に含まれる二酸化炭素は,主として炭酸塩鉱物の熱分解に由来すると結論された。
ブラウズ堆積盆地において,主要なガス・コンデンセート貯留層よりも下位の層準では,ペルム系と三畳系に炭酸塩岩の存在することが知られている。ある広域的な断面において,炭化水素成分と二酸化炭素の生成と移動の過程を考察した。白亜系根源岩に含まれる有機物の熱分解を起源とする炭化水素の生成と移動は,主として古第三紀から生じていた。ペルム系と三畳系に含まれる炭酸塩鉱物では,その熱分解に起因する二酸化炭素は現在までほとんど生成されていないと見られた。このことは,ブラウズ堆積盆地で集積している炭化水素に伴われる二酸化炭素がそれほどの高濃度には達していない産状と矛盾しない。その一方で,ペルム系や三畳系よりもさらに下位の層準にも炭酸塩岩が存在する可能性や,二酸化炭素を生成しやすい炭酸塩鉱物が含まれる可能性も残された。
集積した炭化水素成分が二酸化炭素によって置換を受けた事例は,既に報告されている。この点を考え合わせると,石油探鉱では炭化水素のみでなく,二酸化炭素のような非炭化水素成分においても生成や移動のプロセスを考察することが重要であると再認識された。
引用文献
Huang, B., Tian, H., Huang, H., Yang, J., Xiao, X., and Li, L., 2015: Origin and accumulation of CO2 and its natural displacement of oils in the continental margin basins, northern South China Sea. American Association of Petroleum Geologists Bulletin, 99(7), 1349-1369.
ブラウズ堆積盆地では実測値の数が十分とは言えないこともあり,実測された二酸化炭素の濃度のみからでは,その濃度の地域的特徴を議論することは困難であった。そこで,産出された二酸化炭素の起源を考察することから始めた。二酸化炭素は,有機起源(可燃性炭化水素と同じ有機物の熱分解に由来)と無機起源(炭酸塩鉱物の熱分解やマグマに由来)に大別される。このような二酸化炭素の起源は,その炭素同位体組成と,共存するヘリウムのような希ガスの同位体組成とを組み合わせることにより議論される。イクシスガス・コンデンセート田とその周辺で採取したガス11試料では,含まれる二酸化炭素の濃度はおよそ8%~16%,その炭素同位体組成δ13CCO2は-2.8‰~+0.3‰であった。また,含まれるヘリウムの同位体組成R/Ra比は0.20~0.80であった。Huang et al. (2015) に従うと,分析した11試料に含まれる二酸化炭素は,主として炭酸塩鉱物の熱分解に由来すると結論された。
ブラウズ堆積盆地において,主要なガス・コンデンセート貯留層よりも下位の層準では,ペルム系と三畳系に炭酸塩岩の存在することが知られている。ある広域的な断面において,炭化水素成分と二酸化炭素の生成と移動の過程を考察した。白亜系根源岩に含まれる有機物の熱分解を起源とする炭化水素の生成と移動は,主として古第三紀から生じていた。ペルム系と三畳系に含まれる炭酸塩鉱物では,その熱分解に起因する二酸化炭素は現在までほとんど生成されていないと見られた。このことは,ブラウズ堆積盆地で集積している炭化水素に伴われる二酸化炭素がそれほどの高濃度には達していない産状と矛盾しない。その一方で,ペルム系や三畳系よりもさらに下位の層準にも炭酸塩岩が存在する可能性や,二酸化炭素を生成しやすい炭酸塩鉱物が含まれる可能性も残された。
集積した炭化水素成分が二酸化炭素によって置換を受けた事例は,既に報告されている。この点を考え合わせると,石油探鉱では炭化水素のみでなく,二酸化炭素のような非炭化水素成分においても生成や移動のプロセスを考察することが重要であると再認識された。
引用文献
Huang, B., Tian, H., Huang, H., Yang, J., Xiao, X., and Li, L., 2015: Origin and accumulation of CO2 and its natural displacement of oils in the continental margin basins, northern South China Sea. American Association of Petroleum Geologists Bulletin, 99(7), 1349-1369.
