講演情報
[T1-P-16]三波川変成帯の超苦鉄質岩体の分布と産状
*會田 幸樹1、ウォリス サイモン1 (1. 東京大学)
【ハイライト講演】 日本列島の三波川変成帯(御荷鉾帯起源も含む)では、多様なテクトニックセッティングからもたらされた超苦鉄質岩体が点在している。著者らは、約40岩体・約200試料という圧倒的な量の野外調査・試料観察を行い、超苦鉄質岩の特徴を議論している。三波川帯の超苦鉄質岩類の分布と起源・テクトニクスについて、これまで以上の情報が得られることが期待される。※ハイライト講演とは...
キーワード:
蛇紋岩、橄欖岩、三波川変成帯
西南日本において800kmにわたって連続的に分布する沈み込み型変成帯である三波川変成帯には,沈み込んだ海洋プレート起源物質(変成堆積岩・変成玄武岩など)のほかに,マントル起源の超苦鉄質岩類(橄欖岩・蛇紋岩)を含んでいることが知られている(e.g. Kunugiza et al, 1986; Aoya et al., 2013; Okamoto et al., 2024).本研究では,三波川変成作用を受けたと考えられる広義の三波川変成帯(御荷鉾帯起源も含む)の超苦鉄質岩体(約40岩体・約200試料)を網羅的に調査した結果を報告し,その分布と岩石組織による分類について議論する.
三波川変成帯に含まれる超苦鉄質岩類の起源として,①沈み込み・上昇期に取り込まれたウェッジマントル(e.g. Aoya et al., 2013),②御荷鉾帯の海台起源の海洋底マントル(e.g. Sawada et al., 2019)が挙げられる.この起源推定は,ウェッジマントル起源であればその岩相境界が古プレート境界そのものに対応するため,プレート境界プロセスの議論に用いることができるか否かが決まるほか,御荷鉾帯の分布は三波川帯形成以前に付加した海台の分布に対応し過去の海洋プレート内火成活動の空間分布に示唆を与えうる.三波川帯の露出がよい四国中央部では,柘榴石帯以上の高変成度地域に分布する超苦鉄質岩体はウェッジマントル起源,御荷鉾構造線よりも南側に露出する超苦鉄質岩体は御荷鉾帯起源と,地質図上の分布とその起源を対応づけられる.しかし,西南日本全体で見ると,三波川古沈み込み帯温度構造の海溝方向の不均質や変成後のテクトニクスにより,分布が乱れている地域も多く,地質図上の分布と起源を対応づけることが難しい場合も多い.本研究では,このような困難を伴う地域も含めて,関東山地・中部三波川・紀伊半島・四国中央部・佐賀関半島まで三波川帯を横断するように,先行研究のレビュー,野外調査による産状記載,薄片観察による岩石組織観察を行った.その結果,岩石組織や構成鉱物,周囲に発達する交代反応帯の産状などで分類できることがわかった.発表ではその結果を報告し,三波川帯の超苦鉄質岩類の分布と起源・テクトニクスについて議論する.
引用文献
Aoya et al., 2013. Geology.
Kunugiza et al., 1986. Geological Society of America Memoir.
Okamoto et al., 2024. Elements.
Sawada et al., 2019. Journal of Asian Earth Sciences.
