講演情報

[T1-P-19]マリアナ海溝南部マリアナ前弧海嶺に産出する2種類の溶け残りかんらん岩の鉱物化学組成と結晶方位ファブリックの特徴

*宮田 佳奈1、上原 茂樹3、小原 泰彦2,4、道林 克禎1,2 (1. 名古屋大学大学院 環境学研究科(岩鉱)、2. 海洋研究開発機構 海域地震火山部門 火山・地球内部研究センター、3. 静岡大学、4. 海上保安庁 海洋情報部)
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キーワード:

マリアナ海溝南部、かんらん岩、角閃石、化学組成、結晶方位ファブリック

 マリアナ海溝は水深10,000m超の世界最深の海域である[1]. 海溝南部はグアム島西方からヤップ海溝まで広がっており、海溝軸は島弧や背弧を横切る複雑な地形をもつ. そのため、前弧起源かんらん岩(Ohara and Ishii, 1998)と背弧起源かんらん岩(Michibayashi et al., 2009; Oya et al., 2020)の両方が産出するがその成因については未だに明らかではない。本研究は,マリアナ海溝南部かんらん岩の岩石学的特徴とその成因を明らかにするために,マリアナ海溝の主に南部マリアナ前弧海嶺のかんらん岩試料の組織観察,結晶方位解析,鉱物の主要元素組成分析を行った.本研究に用いた岩石試料はしんかい6500の潜航調査(6K1095, 6K1232, 6K1233, 6K1234)とドレッジ調査(KH98-01-D2)で採取された計43個の蛇紋岩化したハルツバージャイトである.このうち6K1233のハルツバージャイトは蛇紋岩化作用の程度が低く、かんらん岩の組織を特に良好に保存されていた. ハルツバージャイトの主要構成鉱物は,かんらん石,直方輝石,スピネル,単斜輝石,角閃石と斜長石である.鏡下の組織は,粗粒なかんらん石を含むやや不均質な粒状組織、数mmの直方輝石結晶と数100ミクロンの中粒なかんらん石で構成されたポーフィロクラスト状組織、かんらん石と輝石の両方が中粒な組織が観察された。一部のハルツバージャイトには角閃石を比較的多く含むものがあった。特に6K-1233-R13には直方輝石がニードル状のスピネル包有物をもつ角閃石に置換された組織[2]が確認された。鉱物の主要元素組成について,かんらん石のMg#は0.90–0.92,スピネルのCr#は0.30–0.72,Mg#は0.38–0.60,TiO2は0.00–0.72wt%,角閃石のK2O/TiO2は0.00–9.05である.特に角閃石のK2O/TiO2では,背弧起源(K2O/TiO2 = 0–0.50)と前弧起源(K2O/TiO2 = 1.00–9.05)の2つのかんらん岩タイプに分類された.前弧起源のかんらん岩は,スピネルのTiO2の値が小さく(< 0.05 wt%),Cr#が大きい(>0.6)傾向にあった.一方,背弧起源のかんらん岩はスピネルのTiO2の値が大きく(>0.05 wt%),Cr#が小さい (<0.6)傾向にあった.かんらん石の結晶方位定向配列は,(010)[100]パターン(Aタイプ), {0kl}[100]パターン(Dタイプ), (001)[100]パターン(Eタイプ)の3種類が確認された。 本研究では、南部マリアナ前弧海嶺のかんらん岩の岩石学的特徴とかんらん石の結晶方位ファブリックを基にしてマリアナ海溝の構造発達史について議論する。文献:[1] Greenaway et al. 2021 DeepSea Res Part I, 178, 103644, [2] Harano & Michibayashi 2024 Lithos, 488–489, 107776