講演情報

[T10-P-8]中央構造線沿いの安山岩の定置と熱的影響

*白井 大地1、中野 敬太2、濱田 洋平3、林 為人4、坂口 有人1 (1. 山口大学、2. 北海道立総合研究機構、3. JAMSTEC、4. 京都大学)
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キーワード:

中央構造線、ビトリナイト反射率、ボーリングコア

 【はじめに】 愛媛県西条市湯谷口周辺の中央構造線沿いには安山岩が分布している(高橋, 1977)。安山岩が断層沿いにマグマとして貫入してきたのか、もしくは断層運動に伴ってブロックとして運ばれてきたのか明確ではない。本研究ではビトリナイト反射率を用いて周辺層の古地温を調査し、安山岩の定置プロセスを検討する。宮脇(2021)で掘削された総長80 mのボーリングコアH31MTLD-3を対象に岩石記載を行った結果、コア長53.2 mから55.28 m地点には安山岩ユニットが存在し、H31MTLD-3の和泉層群は全体的に割れ目が卓越していた。コア長55.3 mから53.9 m地点では凝灰岩が分布し、コア長54.0 mから55.28 m地点は安山岩が分布している。コア長55.28 m地点では安山岩と三波川変成岩類の地質境界に沿ってせん断帯が存在し厚さ約5 mmの断層ガウジが狭在している。和泉層群中の凝灰岩は既存研究(野田, 2010; 清家, 2013)でも確認されており、野田(2010)ではフィッション・トラック年代測定を行い、79.1±2.2 Maが凝灰岩の堆積年代であることが見出されている。また、安山岩の年代は14~15 Maであり(田崎ほか, 1990)、本コアの場合、凝灰岩層に後から安山岩が貫入したため、安山岩の上位に凝灰岩が産していると考えられる。
【手法】採取した岩石試料は74~100 µmの粒子サイズになるまでジョークラッシャーで粉砕し、ふるいにかけて調粒し、SPT(ポリタングステン酸ナトリウム)重液を用いて炭質物のみを比重分離させ、樹脂で埋包したものを測定試料として使用する。三眼式落射反射顕微鏡をベースに落射用油浸対物レンズ、電気信号の読み取り装置をセットした反射顕微鏡を用いてビトリナイト反射率の測定を行う。
【結果・考察】宮脇(2021)にて中央構造線を貫いて掘削されたボーリングコアを使用した。H31MTLD-3の岩相は下位から三波川変成岩類、和泉層群、扇状地堆積物の砂礫層からなる総長80 m のコアである。R2MTLTD-1の岩相は下位から三波川変成岩類、和泉層群、岡村層群、扇状地堆積の砂礫層からなる総長120 mのコアである。そこから炭質物が含まれている岩石を採取したH31MTLD-3から9試料(コア長13.9 m, 17.4 m, 19.5 m, 21.4 m, 32.9 m, 39.7 m, 45 m, 51.3 m, 51.6 m)、R2MTLD-1から10試料(コア長39.0 m, 40.0 m, 41.0 m, 42.0 m, 45.0 m, 50.7 m, 82.4 m, 84.7 m, 86.5 m, 88.1 m)のビトリナイト反射率を測定した。ビトリナイト反射率の測定の結果、H31MTLD-3では安山岩から39.4 m離れた地点で約1.6%の値が得られた。ビトリナイト反射率は安山岩ユニットに近づくにつれ連続的かつ急に上がり、安山岩から1.7 m地点でこのコアで最大値3.6%の値が得られた。R2MTLD-1では安山岩から52.0 m離れた地点で本研究での最小値であるビトリナイト反射率約0.8%が得られ、安山岩ユニットに近づくとビトリナイト反射率は上昇し、3.6 mの地点で約2.8%の値が得られた。どちらのボーリングコアも安山岩に近づくにつれて連続的かつ急にビトリナイト反射率の値が高くなる。得られたビトリナイト反射率分布が獲得されるためにはどのくらいの温度が何時間加熱する必要があるのかビトリナイト反射率と岩石の熱物性と安山岩からの距離から計算した結果、約890 ℃で約11年間加熱されれば現在のビトリナイト反射率分布が獲得されることがわかった。以上のことから、この安山岩は断層運動に伴ってブロックとして運ばれてきたとは考えにくく、マグマとして断層沿いに貫入した可能性があると考えられるが、厚さ約2 mの安山岩が11年間熱を供給し続けられるかという点においてはまだ解明できていない。複数回の供給があったのか、もしくは熱水による影響があるのかを明らかにする必要がある。
【引用文献】
野田篤・利光誠一・栗原敏之・岩野英樹(2010)地質学雑誌, 116, 99-113.
清家一馬・岩野英樹・檀原徹・平野弘道(2013)地質学雑誌, 116, 99-113.
高橋浩郎(1977)地質学雑誌, 83, 325-340.
田崎耕市・高橋治郎・板谷徹丸・グレープスR.H.・鹿島愛彦(1990)岩鉱, 85, 155-160.