講演情報

[T13-P-3]タイ国中央部Phetchabun地域の三畳系石灰岩礫岩の堆積様式

*鎌田 祥仁1、丸山 直巳2、上野 勝美3、CHAROENTITIRAT Thasinee4、SARDSUD Apsorn5 (1. 筑波大学 生命環境系、2. 筑波大学 理工情報生命学術院 地球科学学位プログラム、3. 福岡大学 理学部、4. チュラロンコーン大学 理学部、5. タイ国鉱物資源局)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

石灰岩礫岩、三畳紀、インドシニアン造山運動

 タイ国中央部Phetchabun県南部のPhu Nam Yod地域には礫種の9割以上を石灰岩が占める礫岩層が分布している.石灰岩礫に多様な化石が含まれることや石灰岩特有の溶食地形を呈することなどから,礫岩の露出サイトは国内ジオパークに選定されている.本研究ではこの礫岩をPhu Nam Yod (PNY)石灰岩礫岩と呼称する.最近,周辺に分布する礫岩とともにその層序とU-Pb年代による堆積年代が検討され, PNY石灰岩礫岩はインドシニアンI イベントに関連して,インドシニアンI不整合の上位に堆積した上部三畳系(Norian)と解釈されている.一方でこの礫岩の堆積環境や堆積プロセスについての詳細は明らかにされていない.本研究では礫岩層の岩相解析をもとに礫岩の堆積様式について検討を行った.タイ国中央部Phetchabun地域はインドチャイナ地塊西縁部に位置し,古生代後期に発達した炭酸塩プラットフォーム(Pha Nok Khaoおよび Khao Khwang Platform)を起源とする石灰岩が砕屑岩類を伴って分布する.対象地域であるPhetchabun県南部Phu Nam Yod町はKhao Khwang Platform西縁に位置し,後期石炭紀〜ペルム紀のサラブリ層群の石灰岩が広く分布している.PNY石灰岩礫岩は上部石炭系およびペルム系サラブリ層群を不整合に覆っている.PNY石灰岩礫岩はPhetchabun県南部のSi Thep地域北西部からWichian Buri地域南西部にかけて,NW-SEの走向方向に長さ10km程度,幅1〜3km程度で露出している.一般走向はNW-SEを呈し高角度で南西に傾斜し,上下が逆転していることが多い.全体層厚は500m〜600m程と見積もられる.礫岩層は一般に厚さ数10cm~数mで成層し,厚さ数cm〜数10 cmの赤色粗粒砂岩を層状もしくはレンズ状に挟む.礫岩の淘汰は悪く,粗粒砂岩の基質中に細礫〜巨礫を含む.礫種はほぼ白灰色〜暗灰色の石灰岩礫が占め,まれに赤褐色の砂岩礫や黒色の珪質岩礫,暗緑色の火山岩礫を含む.石灰岩礫は角礫〜亜円礫を呈する.これらの石灰岩礫岩層と挟在する砂岩層について,その岩相と組み合わせから,以下のような2つの堆積相に区分した.堆積相I:厚さ数10cm〜数mの石灰岩礫岩層が数枚重なり,その間に厚さ数cm程度の粗粒砂岩層を挟む.礫岩はほとんどの場合,礫支持で細礫〜巨礫まで様々なサイズの角礫〜亜円礫石灰岩を含み,基質は粗粒砂岩からなる.礫岩は下位層とシャープな境界面もしくはわずかな侵食面をもって接し,基底部には礫径の逆級化がしばしば見られる.最上部に礫径が著しく大きいものを含む場合や様々な層準に周囲から著しく礫径の大きい巨礫(outsized boulder)を含む.砂岩層は赤色を呈した極粗粒〜中粒砂岩で,砂岩層内部には正級化構造,トラフ型斜交葉理,平行葉理などが観察される.砂岩層は最大で厚さ50cm程度のものが観察できるが,側方連続性が悪く側方数m程でせん滅する.堆積相II:厚さ数10cm〜数mの礫岩層と様々な粒径と厚さの砂岩層が互層する.砂岩層の挟まる頻度が堆積相Iより高く,側方連続性も堆積相Iの砂岩層より良い.礫岩層は礫支持〜基質支持で,細礫〜巨礫サイズまで見られるが細礫〜中礫サイズが主体で,堆積相Iに比較して全体の礫径はやや小さい.礫岩層の基底部には礫径の逆級化が,また下位の砂岩層を深く侵食する場合も観察できる.一部には礫の長軸が揃うインブリケーションも見られる.砂岩層は赤色の粗粒砂岩を主体とし,一部に細粒砂岩やシルト岩も観察される.礫混じりの成層砂岩も多く,細粒〜中礫サイズの礫を含んだ単層5〜10cm程度の礫混じり砂岩が厚さ50cm~1mほどで露出することもある.正級化構造や平行葉理,斜交葉理などの堆積構造もよく観察される.本研究のPNY石灰岩礫岩はこれまでにその岩相と年代からHuai Hin Lat 層に比較され,同層からは植物片や花粉,貝エビ類などが報告されている.さらに,上述した堆積相IおよびIIの礫岩の特徴は陸上の土石流堆積物の特徴に類似し(e.g., Nemec and Steel, 1984),砂岩層は扇状地堆積物の流路堆積物に相当すると考えられる.礫径の違いや砂岩層の挟まる頻度の違いを考慮すると,堆積相Iは扇状地上部〜中部に,堆積相IIは扇状地下部に相当する.文献; Nemec,W. & Steel,R.J., 1984; In Koster, E. H. & Steel, R. J., eds., Sedimentology of gravels and conglomerates, Can. Soc. Petrol. Geol., Mem. no.10, 1-31.