講演情報
[T13-P-4]ガーナ南西部Ashantiグリーンストーン帯南部におけるBirimian超層群の分布と岩相および堆積場の比較
*吉丸 慧1、清川 昌一1、伊藤 孝2、Ibrahim Kwabina3、Tetteh M. George4、Nyame K. Frank3 (1. 九州大学、2. 茨城大学、3. ガーナ大学、4. タクワ鉱山技術大学)
キーワード:
初期古原生代、火山砕屑岩層序、ビリミアン超層群、アシャンチ帯、大陸成長
背景:ガーナアシャンチグリーンストーン帯は,古原生代ビリミアン超層群(約23~20億年前)の地層が海岸線に分布する希少な地域である.ここには約21.7億年前より古い緑色岩がNE-SW方向に延びる緑色岩帯が三つに枝分かれして露出し,それらは西からAxim(アジム)・Cape Three Points(CTP)・Butre(ブトレ)ブランチと呼ばれる1.各地域間は幅10km程の花崗岩帯(主に花崗閃緑岩およびトーナル岩)となっており,西はPrincess Town花崗岩帯,東はDixcove花崗岩帯と呼ばれる.前者は21.6億年前,後者は21.7億年前のジルコンを含み,緑色岩の堆積年代をこれ以前に制約する2,3.アシャンチ帯南部の10万分の1地質図が作成されており,枕状溶岩が優勢なブトレ地域,タービダイト性の凝灰岩が優勢なCTP地域,そして同じく凝灰岩が優勢なアジム地域というそれぞれの特徴を明らかにし,この違いが火山エプロンの近位から遠位に対応する堆積場の違いによるものと推測されている1.
目的:先行研究では詳細な岩相分布・構造の識別を欠き,層序の復元に至っていない.そこで,本研究ではこの3つの緑色岩分布域について,構造発達史と層序の復元を目的として,海岸線露頭を調査し,各地域での構造・層序を復元し堆積場を推定した.
結果:約40 kmの海岸線調査により,従来のDixcove花崗岩帯中にまとまった緑色岩帯が発見された.本研究ではこれをAchowana(アチョワナ)地域と呼び,計4つの緑色岩分布地域について調べた.
1)アジム地域:50 mの連続層序はENE-SWS走向で緩く北に傾斜して分布する.緑色凝灰質粗粒砂岩層および淡黄色の凝灰岩層により構成される.下部では斜交葉理の発達する砂質凝灰岩が主体で,上部には斜交層理が発達する石英を含む凝灰質砂岩層へと変化し,最上部には,侵食面を伴う石英細礫岩層が突如として堆積する.リップル斜交葉理,ウェーブリップルがしばしばみられ,浅海の堆積相を示す.
2)CTP地域:地層は主にNE-SW走向で東傾斜,東上位で分布し,全体は厚さ3000 mに達する.最下部には超苦鉄質複合岩体を覆うシート状玄武岩溶岩(約500 m)が堆積する.これが中部火山砕屑岩(推定約1500 m)の,厚さが数10 cm~1 m程度の範囲で大きな変化がない定常的なタービダイト性の凝灰岩に被覆される.凝灰岩は,暗緑色から暗灰色の玄武岩から安山岩質の苦鉄質岩を主とする.上部では,玄武岩溶岩層(約100 m)から始まり,厚さ5 mを超える塊状粗粒の火砕流堆積物を伴う砕屑岩層(約700 m)に変化し,その後初めて離水域で形成されたであろう円礫が堆積する.最上部(約200 m)では,デイサイト質火山砕屑岩へと組成が変化し,降下火山灰が目立つようになり地層が薄層化する.
3)アチョワナ地域:約500 m厚の地層が,ENE-SWS走向,北西上位で分布し,両側に花崗岩類が貫入する.後のN-S方向の左横ずれ構造変形と,これに沿う小規模花崗岩類の貫入が地層中にみられる他,幅1 m以下の苦鉄質岩脈が地層に貫入する.地層は底部から枕状溶岩(約10 m厚),火山角礫岩,粗粒凝灰岩へ上方細粒化傾向を示し,暗緑色を呈し玄武岩から安山岩の組成である.溶岩・角礫岩は内部に気泡痕を多く残す.海底火山噴出場の近位から中位の堆積相を示す.
4)ブトレ地域:地層の走向はNE-SWからE-Wで分布するが,塊状の溶岩に構造変形が卓越し層序の復元が困難である.枕状溶岩の構造が南東上位を示した.岩相は玄武岩質な枕状溶岩・層状溶岩を主とし,角礫岩を含む.枕状溶岩は連続して厚さ10 m以上重なっている部分が少なくとも3か所含まれ,数メートル厚の塊状溶岩も見られる.幅1m以上の苦鉄質貫入岩が多くみられた.
考察:4つの緑色岩分布地域からそれぞれ異なる堆積相が認められた.全体としては,東ほど深海の火山活動を示し,西ほど浅海・陸上へと火山の噴出場および堆積場が移動した可能性がある.アシャンチ帯の火成活動が深海火山活動から海面上に達するまでの,陸化する過程を反映したものだと考えられる.
引用
1.Loh et al., 1999, Geological Map of Ghana,0402A-0403B.
2.Hirdes et al., 1992, Precambrian Res.
3.Attoh et al., 2006, Precambrian Res.
目的:先行研究では詳細な岩相分布・構造の識別を欠き,層序の復元に至っていない.そこで,本研究ではこの3つの緑色岩分布域について,構造発達史と層序の復元を目的として,海岸線露頭を調査し,各地域での構造・層序を復元し堆積場を推定した.
結果:約40 kmの海岸線調査により,従来のDixcove花崗岩帯中にまとまった緑色岩帯が発見された.本研究ではこれをAchowana(アチョワナ)地域と呼び,計4つの緑色岩分布地域について調べた.
1)アジム地域:50 mの連続層序はENE-SWS走向で緩く北に傾斜して分布する.緑色凝灰質粗粒砂岩層および淡黄色の凝灰岩層により構成される.下部では斜交葉理の発達する砂質凝灰岩が主体で,上部には斜交層理が発達する石英を含む凝灰質砂岩層へと変化し,最上部には,侵食面を伴う石英細礫岩層が突如として堆積する.リップル斜交葉理,ウェーブリップルがしばしばみられ,浅海の堆積相を示す.
2)CTP地域:地層は主にNE-SW走向で東傾斜,東上位で分布し,全体は厚さ3000 mに達する.最下部には超苦鉄質複合岩体を覆うシート状玄武岩溶岩(約500 m)が堆積する.これが中部火山砕屑岩(推定約1500 m)の,厚さが数10 cm~1 m程度の範囲で大きな変化がない定常的なタービダイト性の凝灰岩に被覆される.凝灰岩は,暗緑色から暗灰色の玄武岩から安山岩質の苦鉄質岩を主とする.上部では,玄武岩溶岩層(約100 m)から始まり,厚さ5 mを超える塊状粗粒の火砕流堆積物を伴う砕屑岩層(約700 m)に変化し,その後初めて離水域で形成されたであろう円礫が堆積する.最上部(約200 m)では,デイサイト質火山砕屑岩へと組成が変化し,降下火山灰が目立つようになり地層が薄層化する.
3)アチョワナ地域:約500 m厚の地層が,ENE-SWS走向,北西上位で分布し,両側に花崗岩類が貫入する.後のN-S方向の左横ずれ構造変形と,これに沿う小規模花崗岩類の貫入が地層中にみられる他,幅1 m以下の苦鉄質岩脈が地層に貫入する.地層は底部から枕状溶岩(約10 m厚),火山角礫岩,粗粒凝灰岩へ上方細粒化傾向を示し,暗緑色を呈し玄武岩から安山岩の組成である.溶岩・角礫岩は内部に気泡痕を多く残す.海底火山噴出場の近位から中位の堆積相を示す.
4)ブトレ地域:地層の走向はNE-SWからE-Wで分布するが,塊状の溶岩に構造変形が卓越し層序の復元が困難である.枕状溶岩の構造が南東上位を示した.岩相は玄武岩質な枕状溶岩・層状溶岩を主とし,角礫岩を含む.枕状溶岩は連続して厚さ10 m以上重なっている部分が少なくとも3か所含まれ,数メートル厚の塊状溶岩も見られる.幅1m以上の苦鉄質貫入岩が多くみられた.
考察:4つの緑色岩分布地域からそれぞれ異なる堆積相が認められた.全体としては,東ほど深海の火山活動を示し,西ほど浅海・陸上へと火山の噴出場および堆積場が移動した可能性がある.アシャンチ帯の火成活動が深海火山活動から海面上に達するまでの,陸化する過程を反映したものだと考えられる.
引用
1.Loh et al., 1999, Geological Map of Ghana,0402A-0403B.
2.Hirdes et al., 1992, Precambrian Res.
3.Attoh et al., 2006, Precambrian Res.
