講演情報
[T13-P-6]夜久野オフィオライト久米南岩体の全岩主要化学組成
*前 圭一郎1、能美 洋介2、土屋 裕太2 (1. 岡山理科大学大学院 理工学研究科、2. 岡山理科大学)
【ハイライト講演】 舞鶴帯には古生代後期に形成された「夜久野オフィオライト」が知られているが,この形成史や古生代末期の東アジア周辺発達史については未解明な部分が多い.この研究では久米南岩体に産する変斑れい岩,ドレライト・玄武岩,トーナル岩の全岩化学分析にもとづいてマグマの起源や系列について論じるものである. ※ハイライト講演とは...
キーワード:
夜久野オフィオライト、舞鶴帯、全岩化学組成、塩基性岩
西南日本内帯には古生代から中生代にかけて形成された秋吉帯,舞鶴帯,超丹波帯,領家帯などの地質帯が分布している(磯崎ほか,2010).一部の地質帯には塩基性岩体が含まれており,テクトニクス的な起源や形成環境の解明に関して研究が進められてきた(Suda et al., 2014 ; Mavoungou et al., 2024など).舞鶴帯には,古生代後期に形成された「夜久野オフィオライト」が存在し,石渡(1978),KOIDE(1986),隅田・早坂(2009)らによって各岩体の年代や岩体の起源に関する研究が行われてきた.しかし,夜久野オフィオライトの形成史や古生代末期の東アジア周辺発達史については未解明な部分が多く存在する.発表者らは,夜久野オフィオライト構成岩体の一つである久米南岩体を対象として,フィールドにおける記載を中心に,その分布や岩石学的特徴を報告してきた(前ほか,2024a ; 前ほか,2024b ; 前ほか,2025).本発表では,同岩体の形成場について検討することを目的に,全岩化学分析を実施したのでその結果について報告する.
全岩化学分析には高知大学海洋コア国際研究所にて,波長分散型蛍光X線分析装置(パナリティカル株式会社製)を利用し主要元素を定量分析した.試料は,変斑れい岩,ドレライト・玄武岩,トーナル岩である.変斑れい岩は,角閃石+斜長石を主体とし,一部は面構造を有する.ドレライト・玄武岩は,斑晶鉱物として単斜輝石+斜長石±かんらん石の鉱物組み合わせを持つ.トーナル岩は,斜長石+石英±角閃石±黒雲母によって構成される.
ハーカー図からTiO₂,Fe₂O₃,MgO,MnO,CaOはSiO₂の増加に対して右肩下がりの傾向を示し,これらは,分化に伴う苦鉄質成分の減少関係が見られた.Al₂O₃,Na₂O,K₂Oはドレライト・玄武岩,変斑れい岩において右肩上がりの関係を示し,珪長質成分の増加が見られた.一方,トーナル岩はAl₂O₃が減少傾向を示すことから,塩基性岩類とトーナル岩の岩相間で異なるマグマ起源のものが混在している可能性が示された.
mg# (=100×Mg/Mg+0.85Fetotal) vs. TiO₂図から久米南岩体の塩基性岩類はIAB領域に偏在し,一部はMORB領域にプロットされた.両領域にプロットされたこの傾向は現存する背弧海盆玄武岩類にも同様にみられる特徴であることから,本岩体も背弧海盆環境に関連して形成されたことが示唆された.
以上の結果は,久米南岩体が単一マグマ系列ではなく,複数の起源,異なる分化過程をもつ岩石類によって構成されていることを示唆している.
今後,マグマ成因を明らかにすべく,微量元素などを用いた化学分析を進めていくつもりである.
引用文献
石渡 (1978) 地球科学, Vol.32. pp301-310.
磯崎ほか (2010) 地学雑誌, vol.119. pp.999-1053.
KOIDE, Y. (1986) JOURNAL OF THE GEOLOGICAL SOCIETY OF JAPAN, vol.92. no.5, pp.329-348.
隅田・早坂 (2009) 地質学雑誌, vol.115. pp.266-267.
Suda, Y. et al., (2014) Journal of Geological Research.
前ほか (2024a) 日本地質学会 西日本支部総会要旨.pp.25
前ほか (2024b) 日本地質学会第131年学術大会要旨. pp128
前ほか (2025) 日本地質学会 西日本支部総会要旨. pp.19
Mavoungou, L.N. et al., (2024) Gondwana Research, Vol.135. pp.36-56.
