講演情報
[T13-P-8]熊本県泉町の下部石炭系柿迫層より大型化石群の発見
*関谷 優輝1、田中 源吾1 (1. 熊本大学)
キーワード:
下部石炭紀、大型化石群、四放サンゴ、腕足類、腹足類
熊本県八代市泉町を流れる氷川上流域一帯には、南北幅800~1300m、東西長9000m以上に及ぶ、下部石炭系および上部ペルム系の堆積岩類が分布している (Kanmera 1952 , 宮本ほか1982)。下部石炭系柿迫層は、北側及び南側が、断層で上部ペルム系の深山層および球磨層と接している。柿迫層からは、これまでに、西端の筒井より四放サンゴおよび紡錘虫が、東側の河合場付近より腕足類が報告されている。 今回、球磨層との境界に近い柿迫層の下部から、四放サンゴおよび腕足類に加えて、腹足類、斧足類、掘足類、ウミユリを含む大型化石群を発見した。この化石群を含む地層は、NNEからSSW方向に伸び、側方で急激にせん減する。岩相は塊状の石灰質細粒砂岩から葉理の発達した泥岩で構成されており、上方細粒化を示す。 産出した化石のうち、四放サンゴのArachnolasma sp.、Yuanophyllum の2種および腹足類、斧足類、掘足類の多くは、青灰色の石灰質細粒砂岩から産出し、ウミユリは葉理の発達した青灰色の泥岩から確認された。腕足類は複数種確認でき、細粒砂岩および泥岩両方に含まれていた。 柿迫層は、これまで四放サンゴD.bristolense var. kankouenseおよび紡錘虫Millerella属の産出から、岩手県紫波町~同稗貫郡大迫町に分布する下部石炭系鬼丸層との対比が行われてきた(Kanmera 1952)。今回柿迫層から発見した化石群のうち、四放サンゴおよび腕足類については、鬼丸層と共通していた。しかし、巻貝化石については同じ種は確認されなかった。これらのことから、黒瀬川帯の西端と南部北上帯は、当時、地理的に離れた位置にあったか、水深をはじめとした堆積場が異なっていた可能性がある。 今後は、産出した化石の同定を進め、鬼丸層をはじめとした他地域との比較を進めていく予定である。【引用文献】Kanmera K, 1952, Memoirs of the Faculty of Science, Kyushu University, Ser. D, Vol. Ⅲ, No. 4, 1952, pp. 157-177, 5 pls. Miyamoto et al. 1982, Earth Science (Cikyu Kagaku), 39, 78-84. 佐藤悦郎 (編). 1989. 大船渡市立博物館. 18-36.
