講演情報

[T13-P-15]兵庫県東部に分布する下部白亜系大山下層の堆積環境と凝灰岩の研究

*辻 光彦1、澤田 順弘2、田中 公教3,4、実吉 玄貴5 (1. 岡山理科大学院理工学研究科、2. 岡山理科大学古生物学年代学研究センター、3. 兵庫県立大学自然・環境科学研究所、4. 兵庫県立人と自然の博物館、5. 岡山理科大学生物地球学部)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

堆積環境、大山下層、篠山層群、前期白亜紀、凝灰岩

 下部白亜系篠山層群は兵庫県東部の丹波市から丹波篠山市に分布し、恐竜類をはじめとする多様な脊椎動物化石を産出することで知られる。篠山層群は、下部の大山下層と上部の沢田層に区分され、脊椎動物化石は大山下層から産出する。大山下層の層序学的・地質年代学的研究は、産出するカイエビなどの微化石に基づく生層序学的検討、最下部に挟在する凝灰岩の岩相に基づく層序対比、これらの凝灰岩に含まれるジルコンを用いたU-Pb年代などから検討されてきた。しかしながらジルコンは、基盤由来の砕屑性の可能性もあり、その場合、堆積年代とは異なる。したがって、ジルコンを含む凝灰岩の実態を明らかにすることは重要である。また、凝灰岩は地層の対比に有効な鍵層として利用される。加えて、水域に降下した火山砕屑物の産状は、水域での分級過程を示唆し、定置後はその場の堆積過程や環境を反映すると考えられる。そこで本研究では大山下層中の凝灰岩に着目し、その詳細を記載する。大山下層中の凝灰岩は3地点で観察を行った。ここでは大山下層の模式地である大山下ルートに分布する凝灰岩について報告する。本ルートでは火山砕屑岩は砕屑岩を挟在して2層存在するが、いずれも凝灰岩と凝灰質砂岩に大別される。凝灰岩はさらに塊状凝灰岩と層状凝灰岩に区分される。2層のうち下位の地層は、塊状を示す層厚2m程度の凝灰岩と、層状に分布する層厚5m程度の凝灰岩質砂岩層からなり、20のユニットに区分される。上位の地層は、層厚1m程度の塊状凝灰岩ユニットと、層厚2m程度の層状凝灰岩質砂岩層からなり、6のユニットに区分される。凝灰質砂岩には次のような堆積構造が見られる。その中でも特に級化構造や不明瞭な葉理を示す複数のユニットが見られるが、それらのユニットはシート状の産状を示し、それらの境界には削り込みを示すような構造は見られず、一部にウェーブリップル葉理も認められた。これらの堆積構造は、水域内で発生した重力流による堆積過程を強く示唆する。層状凝灰岩には級化構造が認められることから、これらは水域に降下した火山砕屑物が浮遊・沈降の過程を経て堆積したと解釈できる。火山砕屑物としての本質物を明らかにするためには分級が起こっていない塊状凝灰岩が有効である。そこで本研究では切り出した塊状凝灰岩について、切断した試料や染色試料の肉眼での記載、偏光顕微鏡記載、X線マイクロアナライザー(EPMA)分析、蛍光X線(XRF)による全岩化学組成分析を行った。塊状凝灰岩は以下のようなものから構成される。軽石片、babble wall型と fiber 型火山ガラス、結晶片、変質や風化した鉱物片、細粒の基質からなる。結晶片は長石、石英、鉄鉱、アパタイト、ジルコン、黒雲母からなる。これらのうち長石は曹長石とカリ長石の端成分に近い値を示すことから2次的に変わったものと考えられる。黒雲母の多くは緑泥石化している。他の鉱物は初生的な組成を持っているため分析対象とした。全岩化学組成分析の結果はSiO2=73.9-78.9wt%, TiO2=0.02-0.13wt%, Al2O3=12.1-15.2wt%, Fe2O3=0.94-1.94wt%, MnO=0.02-0.04wt%, MgO=0.41-0.94wt%, CaO=0.40-2.20wt%, Na2O=1.01-3.74wt%, K2O=2.04-5.04wt%, P2O5=0.02-0.10wt%であった。今後、XRFによる全岩化学組成とEPMAによる火山ガラスの組成の比較検討を行う。また、上記の初生的な鉱物の化学組成分析を行い、凝灰岩の本質物として諸特徴を明らかにする。