講演情報

[T13-P-21]栃木県茂木地域における前期中新世珪長質火山岩類の地質学・岩石学的特徴

*小坂 日奈子1、細井 淳1 (1. 茨城大学大学院理工学研究科)
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キーワード:

前期中新世、東北日本弧前弧域、日本海拡大期、全岩化学組成、軽石火山礫凝灰岩、凝灰岩

 栃木県南東部の茂木地域には,ジュラ紀付加コンプレックスを不整合に覆う下部中新統中川層群(下位から市場層・元古沢層・山内層・茂木層)が広く分布している(Kawada, 1953; 星・高橋, 1996 など).これらの地層は,日本海拡大期に形成された火山岩類を主体とし,当時の火成活動を明らかにする上で重要な記録を保持している.しかし,この時期の火山活動やマグマ成因に着目した研究は少なく,その活動の時空的変遷やマグマ組成の変化については未解明な点が多い.
発表者らは,日本海拡大に伴う火成活動の変遷とマグマ成因を明らかにすることを目的として,茂木地域およびその東方に連続する茨城県常陸大宮・大子地域に分布する前期~中期中新世の火山岩類に対し,地質学的・岩石学的な調査を進めている.中川層群には,苦鉄質火山岩類を主体とする山内層と,珪長質火山岩類を主体とする茂木層が含まれる.これまでの研究(小坂ほか, 2025)では,山内層および茂木層の苦鉄質火山岩(溶岩・火山砕屑岩)が,東北日本弧に産する第四紀ソレアイトと類似した全岩化学組成を示すことを明らかにし,同様のセッティングにおける苦鉄質火山活動の存在を示唆した.
本発表では,山内層の上位層である茂木層に含まれる珪長質火山岩類の地質学的・岩石学的特徴を報告する.地質調査の結果,茂木層は主に白色の凝灰岩,軽石を含む火山礫凝灰岩,凝灰角礫岩,火山角礫岩から構成され,礫として斑状火山岩を多く含むことがわかった.これらは火砕流堆積物やその再堆積物であると考えられる.また,火山砕屑岩中の軽石や凝灰岩を対象に全岩化学組成分析を実施した.現在得られている分析結果から,地域的に離れた2地点の試料間で,化学組成にバリエーションがあることが判明した.よって,これらの化学組成の違いと層序的関係を,ルートマップや柱状図に基づいて考察するとともに,研究地域における火成活動について議論する.

引用文献:Kawada (1953) Sci. Rep. Tokyo Bunrika Daigaku, ser. C, 2, 217-307. 星・高橋 (1996) 地質雑, 102, 25-39. 小坂ほか (2025) 日本地球惑星科学連合2025年大会講演要旨, SGL23-P02.