講演情報
[T13-P-23]鳥取県中新統多里層の微化石と古環境
*中井 建琉1、入月 俊明1、辻本 彰1、林 広樹1、田中 裕一郎2、瀬戸 浩二1 (1. 島根大学、2. 産業技術研究所)
キーワード:
中新世、微化石、古環境
中新統多里層は鳥取県日野郡日南町多里の新屋地域を中心に,北北東から南南西に伸びた日野川沿いの盆地に分布し,中国山地に広く分布する中新統備北層群に属すとされている(猪木・坂本,1977).主に下部は礫岩・砂岩,上部はシルト岩から構成されている(猪木・坂本,1977).また,Pholadomyaなど多数の貝化石が報告されている(月森・星,1973).微化石については,底生有孔虫化石が報告され(野村・瀬戸1987),古環境の復元がなされている.そこで,本研究の目的は,新たな産地から試料を採取し,産出した微化石の群集解析と泥質岩の全有機炭素(TOC),全窒素(TN),全イオウ(TS)含有率の測定(CNS元素分析)結果から古環境を復元すること,および浮遊性微化石に基づき年代を推定することである.
本研究地域における多里層は,先新第三系の凝灰質頁岩,花崗岩,石英斑岩,安山岩などからなる基盤を不整合に覆い,下位より炭質泥岩層を伴う礫岩砂岩互層,ノジュールを含む砂岩層,貝化石やサメの歯化石などの大型化石が多産する砂質泥岩層,黒色頁岩層からなる.盆地中央部を流れる日野川を境に東側の調査地域では,北西-南東走向で南西に緩く傾斜し,西側では北西-南東走向で北東に緩く傾斜する.分析用試料に関しては,砂質泥岩層から63試料を採取し,最上部の黒色頁岩層から3試料を採取した.
結果として,全体的に底生有孔虫化石が多産した.一部の試料から浮遊性有孔虫化石,貝形虫化石も産出した.底生有孔虫に関しては,Hanzawaia tagaensis,Heterolepa praecincta,Lenticulina spp.,Nonion kidoharaense,Gyroidina orbicularis,Uvigerina subperegrinaなどが多産した.貝形虫化石に関しては,Trachyleberis mizunamiensisなどの熱帯浅海性の種が産出したが,個体数は極めて少なかった.今回,初めてGlobigerina praebulloidesなどの浮遊性有孔虫化石が最上部の暗灰色〜黒色頁岩層から多産した.このように,最上部層準では開放的な沖合の深海環境に変化したと推測される.CNS元素分析の結果,TOC/TN比は陸上高等植物由来の有機物と植物プランクトン由来の有機物の混合を示唆し,下部では陸上高等植物起源の有機物が多く,上部に向けて減少したことから,陸域に近い環境から遠い沖合の環境に変化したと推定された.TOC/TS比は全体的に還元的底層環境を示唆した.年代に関しては,浮遊性有孔虫化石の年代指標種は産出しなかったが,石灰質ナンノ化石のSphenolithus heteromorphusが産出したことから,年代はOkada and Bukry (1980)の石灰質ナンノ化石帯CN3~4と推定された.
【引用文献】
猪木・坂本, 1977,多里地域の地質, 地域地質研究報告(5万分の1図幅).地質調査所, 1-53.
野村・瀬戸, 1987,山陰地域研究(自然環境), no. 3, 95–107.
月森・星見, 1973,地球科学, 27, 205–211.
Okada H and Bukry D, 1980, Mar Micropaleontol, 5, 321-325.
本研究地域における多里層は,先新第三系の凝灰質頁岩,花崗岩,石英斑岩,安山岩などからなる基盤を不整合に覆い,下位より炭質泥岩層を伴う礫岩砂岩互層,ノジュールを含む砂岩層,貝化石やサメの歯化石などの大型化石が多産する砂質泥岩層,黒色頁岩層からなる.盆地中央部を流れる日野川を境に東側の調査地域では,北西-南東走向で南西に緩く傾斜し,西側では北西-南東走向で北東に緩く傾斜する.分析用試料に関しては,砂質泥岩層から63試料を採取し,最上部の黒色頁岩層から3試料を採取した.
結果として,全体的に底生有孔虫化石が多産した.一部の試料から浮遊性有孔虫化石,貝形虫化石も産出した.底生有孔虫に関しては,Hanzawaia tagaensis,Heterolepa praecincta,Lenticulina spp.,Nonion kidoharaense,Gyroidina orbicularis,Uvigerina subperegrinaなどが多産した.貝形虫化石に関しては,Trachyleberis mizunamiensisなどの熱帯浅海性の種が産出したが,個体数は極めて少なかった.今回,初めてGlobigerina praebulloidesなどの浮遊性有孔虫化石が最上部の暗灰色〜黒色頁岩層から多産した.このように,最上部層準では開放的な沖合の深海環境に変化したと推測される.CNS元素分析の結果,TOC/TN比は陸上高等植物由来の有機物と植物プランクトン由来の有機物の混合を示唆し,下部では陸上高等植物起源の有機物が多く,上部に向けて減少したことから,陸域に近い環境から遠い沖合の環境に変化したと推定された.TOC/TS比は全体的に還元的底層環境を示唆した.年代に関しては,浮遊性有孔虫化石の年代指標種は産出しなかったが,石灰質ナンノ化石のSphenolithus heteromorphusが産出したことから,年代はOkada and Bukry (1980)の石灰質ナンノ化石帯CN3~4と推定された.
【引用文献】
猪木・坂本, 1977,多里地域の地質, 地域地質研究報告(5万分の1図幅).地質調査所, 1-53.
野村・瀬戸, 1987,山陰地域研究(自然環境), no. 3, 95–107.
月森・星見, 1973,地球科学, 27, 205–211.
Okada H and Bukry D, 1980, Mar Micropaleontol, 5, 321-325.
