講演情報
[T7-O-11]上部ジュラ系~下部白亜系鳥巣式石灰岩の形成要因
*鬼頭 岳大1、中田 亮一2、狩野 彰宏3、白石 史人1 (1. 広島大学、2. 海洋研究開発機構、3. 東京大学)
中生代のうち,三畳紀末と白亜紀末は大量絶滅があったことが知られている (Raup and Sepkoski, 1982).近年,ジュラ紀末 (J/K境界) においても,隕石衝突による小規模な生物絶滅や (Rampino, 2019),海洋無酸素事変 (Nozaki et al., 2013) などのイベントがあったことが示唆されている.J/K境界の前後で形成した鳥巣式石灰岩は,南は九州,北は北海道まで広く分布し,一般的に砂岩や泥岩などが卓越する地質体中に小規模岩体として産する (例えば,田村, 1960).このことは,ジュラ紀後期~白亜紀前期のある時期に,炭酸塩鉱物の供給量が陸源砕屑物の供給量を局地的に上回るイベントが,ユーラシア大陸東縁の比較的広い範囲で起こったことを意味する.しかしながら,鳥巣式石灰岩はしばしば上下の砕屑岩との境界露頭を欠いていることに加えて,その年代が精度よく決定された石灰岩体がいまだに限られていることもあり,炭酸塩鉱物の相対的な供給量増加に至った原因は十分に理解されていない.
本研究において,愛媛県西予市城川町で詳細な地質調査を行ったところ,新たに鳥巣式石灰岩と下位の砕屑岩の境界露頭を発見し,これを中津川セクションとした.中津川セクションにおいて,石灰岩・砕屑岩の構成要素を明らかにし,また炭素・酸素同位体比測定により,石灰岩形成時の環境変化や続成作用の影響を評価する.さらには,石灰岩に対してSr同位体層序学を適用し,堆積年代を高精度で決定する.これらの結果を統合することで,鳥巣式石灰岩形成の開始・終了に至った要因について明らかにすることが本研究の目的である.
中津川セクション周辺では,岩相が下位からハンモック状斜交層理を伴う砂岩泥岩互層,トラフ型斜交層理を伴う砂岩,石灰岩へと変化した.このことから,石灰岩は浅海化に伴って形成したと考えられる.中津川セクション最下部で見られた砂岩–石灰岩境界試料の観察によると,石灰岩の形成は主にペロイドと生砕物の供給により突如開始したが,依然として砕屑物の供給の供給も継続していたと考えられる.XRD分析およびポイントカウンティングの結果,中津川セクションは,下位からUnit 1~Unit 6に区分された.Unit 1は主にグレイン/フロートストーンからなり,比較的高流速な環境を示す.Unit 2は主にパック/ワッケストーンからなり,流速が低下したことを示す.Unit 3は主にフレームストーンからなり生物礁が卓越したことを示す.Unit 4は主にグレイン/フレームストーンからなり,ウーイドの含有量が50%以上となる層準もみられた.このことから比較的高流速な環境になったといえる.Unit 5は主にフレームストーンからなり,再び生物礁が卓越したことを示す.Unit 6は放散虫を含むワッケストーンからなり,水深が増大し,低流速な環境になったことを示す.これらのことから,石灰岩の形成は,流速の比較的大きい浅海での生砕物集積によって開始し,水深増大によって終了したことが示唆された.
また,中津川セクションの中部から発見した腕足動物の殻に対し,白石ほか (2005) の手法に基づいてSr同位体層序学を適用したところ,Tithonian中期の147.5 (±0.5) Maという堆積年代が得られた.この年代を先行研究で求められた異なる石灰岩体のSr同位体年代と対比したところ,石灰岩形成を引き起こしたイベントは,地理的に狭い範囲で見ると同時多発的であったのに対して,広い範囲で見ると散発的であった可能性が示された.現在,異なる層準でも腕足動物化石と思われる試料が得られているため,今後は中津川セクション全体の堆積持続期間を見積もるために,追加でSr同位体年代を求める必要がある.
引用文献
Nozaki et al., 2013, Scientific Reports, 3(1), 1889.
Rampino et al., 2019, Geol. Soc. Am. Spec. Pap. 542, 271–302.
Raup & Sepkoski, 1982, Science, 215(4539), 1501-1503.
白石ほか, 2005, 地質学雑誌. 111(10), 610–623.
田村, 1960, 熊本大教育紀要, 8, 1–40.
本研究において,愛媛県西予市城川町で詳細な地質調査を行ったところ,新たに鳥巣式石灰岩と下位の砕屑岩の境界露頭を発見し,これを中津川セクションとした.中津川セクションにおいて,石灰岩・砕屑岩の構成要素を明らかにし,また炭素・酸素同位体比測定により,石灰岩形成時の環境変化や続成作用の影響を評価する.さらには,石灰岩に対してSr同位体層序学を適用し,堆積年代を高精度で決定する.これらの結果を統合することで,鳥巣式石灰岩形成の開始・終了に至った要因について明らかにすることが本研究の目的である.
中津川セクション周辺では,岩相が下位からハンモック状斜交層理を伴う砂岩泥岩互層,トラフ型斜交層理を伴う砂岩,石灰岩へと変化した.このことから,石灰岩は浅海化に伴って形成したと考えられる.中津川セクション最下部で見られた砂岩–石灰岩境界試料の観察によると,石灰岩の形成は主にペロイドと生砕物の供給により突如開始したが,依然として砕屑物の供給の供給も継続していたと考えられる.XRD分析およびポイントカウンティングの結果,中津川セクションは,下位からUnit 1~Unit 6に区分された.Unit 1は主にグレイン/フロートストーンからなり,比較的高流速な環境を示す.Unit 2は主にパック/ワッケストーンからなり,流速が低下したことを示す.Unit 3は主にフレームストーンからなり生物礁が卓越したことを示す.Unit 4は主にグレイン/フレームストーンからなり,ウーイドの含有量が50%以上となる層準もみられた.このことから比較的高流速な環境になったといえる.Unit 5は主にフレームストーンからなり,再び生物礁が卓越したことを示す.Unit 6は放散虫を含むワッケストーンからなり,水深が増大し,低流速な環境になったことを示す.これらのことから,石灰岩の形成は,流速の比較的大きい浅海での生砕物集積によって開始し,水深増大によって終了したことが示唆された.
また,中津川セクションの中部から発見した腕足動物の殻に対し,白石ほか (2005) の手法に基づいてSr同位体層序学を適用したところ,Tithonian中期の147.5 (±0.5) Maという堆積年代が得られた.この年代を先行研究で求められた異なる石灰岩体のSr同位体年代と対比したところ,石灰岩形成を引き起こしたイベントは,地理的に狭い範囲で見ると同時多発的であったのに対して,広い範囲で見ると散発的であった可能性が示された.現在,異なる層準でも腕足動物化石と思われる試料が得られているため,今後は中津川セクション全体の堆積持続期間を見積もるために,追加でSr同位体年代を求める必要がある.
引用文献
Nozaki et al., 2013, Scientific Reports, 3(1), 1889.
Rampino et al., 2019, Geol. Soc. Am. Spec. Pap. 542, 271–302.
Raup & Sepkoski, 1982, Science, 215(4539), 1501-1503.
白石ほか, 2005, 地質学雑誌. 111(10), 610–623.
田村, 1960, 熊本大教育紀要, 8, 1–40.
