講演情報
[T13-O-10]南部北上帯,氷上花崗岩類中に分布する壺の沢変成岩のジルコンU-Pb年代と形成機構
*内野 隆之1、常盤 哲也2 (1. 産総研地質調査総合センター、2. 信州大学)
キーワード:
南部北上帯、壺の沢変成岩、氷上花崗岩類、ジルコン、U-Pb年代
壺の沢変成岩は,南部北上帯の基盤の一つである氷上花崗岩類の西側に3 x 10㎞幅の2つのレンズ岩体として捕獲岩状に分布している.本変成岩は,陸源性砕屑岩を原岩とする黒雲母片麻岩とミグマタイトからなる.本変成岩について,今回,地質調査によって詳細な地質図を作成し,またジルコンのU-Pb年代を測定した.その結果,壺の沢変成岩は岩体の中央部から縁辺部にかけて,片麻岩からミグマタイトに漸移していることが明らかになった.ミグマタイト中のリューコゾームは花崗岩様を呈し,氷上花崗岩類に近づくにつれその割合は増加する.したがって,氷上花崗岩類と壺の沢変成岩の境界付近では,かつて氷上花崗岩類と判定された部分も,実際は薄い片麻岩層を含むミグマタイトであるケースがしばしば認められる.
壺の沢変成岩からは,これまでも幾つか放射年代値が報告されているが,変成年代が450~180 Maとばらついている(Shibata,1974;Suzuki and Adachi,1991;Watanabe et al.,1995;Yokoyama et al. 2016).壺の沢変成岩のほとんどは西側に分布する前期白亜紀花崗岩類(気仙川岩体)によって接触変成作用を被っており,若い年代値の幾つかについてはそれが影響している可能性もある.本研究では,LA-ICP-MSを用いて,接触変成作用の弱い地域の黒雲母片麻岩及びミグマタイト中の花崗岩質リューコゾームに含まれる砕屑性ジルコンのコアとリムを注意深く年代測定した.その結果,最若クラスター年代は,片麻岩は約470 Ma,リューコゾームは約440 Maという値が得られた.特に,後者の若い年代は,再成長したジルコンリムから得られている.ミグマタイト中のリューコゾームは壺の沢変成岩の原岩が部分溶融したものと考えられ,約440 Maは同変成岩の形成年代を示していると考えられる.一方,片麻岩の約470 Maは原岩に含まれる砕屑性のジルコンが堆積した年代と捉えることができる.すなわち,壺の沢変成岩は,その原岩である陸源性砕屑岩が中期オルドビス紀頃に堆積・形成され,その後,最後期オルドビス紀~最前期シルル紀に上昇してきた氷上花崗岩類によって高温型の広域変成作用を被ったと結論できる.
【引用文献】Shibata (1974) Geochem. J., 8, 193-207. Suzuki and Adachi (1991) Geochem. J., 25, 357-376. Watanabe et al. (1995) Geochem. J., 30, 273-280. Yokoyama et al. (2016) Mem. Nat. Mus. Nat. Sci., 51, 1-24.
壺の沢変成岩からは,これまでも幾つか放射年代値が報告されているが,変成年代が450~180 Maとばらついている(Shibata,1974;Suzuki and Adachi,1991;Watanabe et al.,1995;Yokoyama et al. 2016).壺の沢変成岩のほとんどは西側に分布する前期白亜紀花崗岩類(気仙川岩体)によって接触変成作用を被っており,若い年代値の幾つかについてはそれが影響している可能性もある.本研究では,LA-ICP-MSを用いて,接触変成作用の弱い地域の黒雲母片麻岩及びミグマタイト中の花崗岩質リューコゾームに含まれる砕屑性ジルコンのコアとリムを注意深く年代測定した.その結果,最若クラスター年代は,片麻岩は約470 Ma,リューコゾームは約440 Maという値が得られた.特に,後者の若い年代は,再成長したジルコンリムから得られている.ミグマタイト中のリューコゾームは壺の沢変成岩の原岩が部分溶融したものと考えられ,約440 Maは同変成岩の形成年代を示していると考えられる.一方,片麻岩の約470 Maは原岩に含まれる砕屑性のジルコンが堆積した年代と捉えることができる.すなわち,壺の沢変成岩は,その原岩である陸源性砕屑岩が中期オルドビス紀頃に堆積・形成され,その後,最後期オルドビス紀~最前期シルル紀に上昇してきた氷上花崗岩類によって高温型の広域変成作用を被ったと結論できる.
【引用文献】Shibata (1974) Geochem. J., 8, 193-207. Suzuki and Adachi (1991) Geochem. J., 25, 357-376. Watanabe et al. (1995) Geochem. J., 30, 273-280. Yokoyama et al. (2016) Mem. Nat. Mus. Nat. Sci., 51, 1-24.
