講演情報

[T13-O-15]青森県下北半島東部上部中新統の地質と放射性年代

*中満 隆博1、須藤 浩一2、三和 公3 (1. 東北電力、2. 阪神コンサルタンツ、3. 大日本ダイヤコンサルタント)
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キーワード:

中新世、下北半島、K–Ar年代測定、FT年代測定

 1.はじめに
 青森県下北半島周辺には原子力関連施設が点在し,事業者が地質調査を行っている。このうち,下北半島東部において,中部中新統~上部中新統最下部の蒲野沢層を不整合に覆い,上部鮮新統~下部更新統の砂子又層(浜田層:工藤ほか,2021)に不整合で覆われる地層の存在が認識されている。この地層の下部および中部においてRouxia californica 帯の下半部(7.6~6.8Ma;Yanagisawa・Akiba,1998)の珪藻化石群集が産出することが報告されており,事業者は目名層と仮称している(東京電力,2010など)。本稿では目名層の堆積年代データを拡充する目的で放射性年代測定を行ったことからその結果について報告する。
2.調査地および地質概要
 調査地は,目名層が広く分布する青森県下北郡東通村目名周辺とし,目名層の最下部から最上部まで比較的良く露出する目名川ルートおよび目名川南林道ルートにおいて,地層観察および試料採取を行った。目名層は,最下部・中部・上部・最上部に厚い火山砕屑岩やその再堆積物(以下,厚い火砕岩類という)を含み,それらの間にはシルト質細粒砂岩,細粒~中粒砂岩,泥岩,薄い火山砕屑岩が分布し,生物擾乱や生痕化石が認められる。年代測定用の試料は,厚い火砕岩類から採取した(6試料)。年代測定用の試料は,下位の蒲野沢層および上位の砂子又層(浜田層)の「軽石凝灰岩」からも採取した(蒲野沢層2試料,砂子又層(浜田層)1試料)。
3.年代測定
 火砕岩類に含まれるジルコン粒子を対象に,フィッション・トラック(FT)法およびウラン-鉛(U-Pb)法によるダブル年代測定を実施した。年代測定は,㈱京都フィッション・トラックに依頼し,同位体濃度の測定にはレーザーアブレーションICP質量分析装置を用いた。年代測定の結果を以下に示す。蒲野沢層の最上部からは,9.5±0.7Ma(FT;1σ)および9.4±0.1Ma(U-Pb;2σ)が得られ,誤差1σの範囲で一致しており,その堆積年代は約9.4Maと考えられる。目名層の最下部からは,6.4±0.6Ma(FT;1σ)および7.7±0.1Ma(U-Pb;2σ)が得られ,両年代値は誤差2σで考えると7.6Maで重なり,その堆積年代は約7.6Maと考えられる。この年代値は珪藻化石分析結果と矛盾しない。最下部の最上位からは,5.7±0.5Ma(FT;1σ)および7.3±0.1Ma(U-Pb;2σ)が得られ,誤差2σの範囲で重ならないが,上下の層準からR. californica 帯の下半部(7.6~6.8Ma)に対比される珪藻化石群集が報告されており,U-Pb年代が妥当と考えられる。目名層の中部からは,6.0±1.2Ma(FT;1σ)および8.5±0.4Ma(U-Pb;2σ)が得られ,両年代値は誤差2σで考えると8.4~8.1Maで重なるが,下位層準で得られた年代値よりも古く,珪藻化石分析結果とも矛盾する。一方,工藤(2020)は,北方の石上山地域に露出している同一層準から,7.3±0.9Ma(FT年代;1σ)および7.5±0.2Ma(U-Pb;2σ)の年代値を報告しており,これらは誤差1σの範囲で一致しており,下位層準の年代を考慮すると,その堆積年代は約7.3Maと考えられる。目名層の上部からは,10.4±1.4Ma(FT;1σ)および6.8±0.3Ma(U-Pb;2σ)が得られ,誤差2σの範囲で重ならないが,下位層準の年代を考慮するとU-Pb年代が妥当であり,後述の上位層準の年代を考慮すると,その堆積年代は約7.1Maと考えられる。目名層の最上部からは,6.6±1.8Ma(FT;1σ)および7.3±0.3Ma(U-Pb;2σ)が得られ,誤差1σの範囲で一致しており,下位層準の年代を考慮すると,その堆積年代は約7.0Maと考えられる。砂子又層(浜田層)下部の軽石凝灰岩からは,3.3±0.5Ma(FT;1σ)および3.1±0.1Ma(U-Pb;2σ)が得られ,誤差1σの範囲で一致しており,その堆積年代は約3.1Maと考えられる。
4.まとめ
 既往の珪藻化石分析結果と今回の年代測定結果から,目名層の堆積年代は約7.6~7.0Maと判断される。下位の蒲野沢層との間には200万年程度,上位の砂子又層(浜田層)との間には400万年程度の時間間隙があり,地表踏査で認識されていた不整合関係がより明確なものとなった。
[引用文献]
工藤 崇 (2020) 20万分の1 「野辺地」 地域に分布する中新統のジルコンU‒Pb及びフィッショントラック年代.地質調査研究報告,71,481‒507.
Yanagisawa, Y. and Akiba, F. (1998) Refined Neogene diatom biostratigraphy for the northwest Pacific around Japan, with an introduction of code numbers for selected diatom biohorizons. Jour. Geol.Soc. Japan, 104, 395-414.
東京電力株式会社(2010):東通原子力発電所原子炉設置許可申請書