講演情報

[T7-P-4]北西太平洋の深海底に堆積する赤色粘土の元素分布とその特性

*村山 雅史1、波多野 泰成1、原田 尚美2、佐川 拓也3、堀川 恵司4、南 秀樹5、小畑 元2 (1. 高知大学、2. 東京大学、3. 金沢大学、4. 富山大学、5. 東海大学)
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キーワード:

赤色粘土、元素分布、マンガン団塊、北西太平洋

 海底資源として注目されるマンガン団塊やマンガンクラストは,太平洋域で広く産出することが知られている(臼井, 2010).とくに,マンガン団塊(以下,Mn団塊)は,水深3500m〜6000mの堆積速度の遅い(数mm/kyr.)赤色粘土の深海底に存在する.Mn団塊に関する研究は数多くおこなわれてきたが、それらが産出する直下の赤色粘土についての研究例は多くない.そのため,本発表では,Mn団塊の産出した地点とそれ以外の地点の赤色粘土中のFe, Mnなどの元素分布に着目し,その特徴を明らかにすることを目的とした.学術研究船「白鳳丸」KH-22-7次航海,KH-23-2次航海でマルチプルコアラーを使い採取された,東経155度線上の北緯10-50度までの10度ごとの南北トランセクトで5000m以深から採取された海底表層の赤色粘土である.Mn団塊が産出した地点(OP-7;北緯20度)とそれ以外の地点OP-5〜22の計16地点の赤色粘土を用いて,X線CT,有機物,XRFとXRFコアスキャナー(ITRAX)による元素分析などの解析をおこなった.また,船上で測定された海底直上海水(−15m)の溶存酸素量との比較もおこなった.その結果,Mn団塊の産出のあった地点(OP-7)を含む低緯度地域で有機物含有量が低く,直上海水の溶存酸素量は高い値(176.9μmol/kg)を示した.これは,南極周極流由来の下部周極深層水 (LCDW;Lower Circumpolar Deep Water) の経路上付近(Kawabe and Fujio, 2010)であると考えられる.各地点の表層試料(0〜1㎝)を用いた元素分析の結果,Mn団塊の産出のあったOP-7では,Fe/Al比が 0.49〜0.51と高く[地殻平均値,0.39(Wedepohl,1995)],また,Fe2O3, MnO, Al2O3,TiO2, P2O5もそれぞれ高い値を示した.以上のように,北西太平洋域の赤色粘土の元素分布とその特性について報告をおこなう.

【参考文献】
臼井朗 (2010) 海底鉱物資源‐未利用レアメタル資源の 探査と開発‐. オーム社.
Kawabe, M. and Fujio, S. (2010) Pacific ocean circulation based on observation, Journal of Oceanography, 66, 389–403.
Wedepohl, K. H. (1995) The composition of the continental crust, Geochimica et Cosmochimica Acta, 59, 7, 1217-1232.