講演情報

[T7-P-9]不整合による侵食量の側方変化:富山県中部中新統八尾層群および砺波層群の例

*中山 雄介1、北沢 俊幸1 (1. 立正大学大学院地球環境科学研究科)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

不整合、侵食量、中部中新統、富山県、固結度

 1.はじめに
 不整合とは,ある境界面を境に上下の層で堆積年代に違いがみられる両層の関係を指す.一般的に不整合面より下位の層は幾ばくか侵食を受け,もとの層厚より薄い地層が残る.不整合による侵食量が分かれば,不整合下位層堆積後から上位層堆積前までにどの程度の地表の削剥があったか推定でき,ひいては隆起量を考察する手掛かりになる.侵食量の推定に関して,盛岡・佐々木(1975)では,標準圧密試験機を用いて不整合面付近の岩盤の硬さの違いから不整合に伴う削剥量の計算を行った.しかし,大型機械で岩盤の硬さを測定する際,サンプル数に限りがある.そこで,小型の測定機器を用いて現地で大量の硬さデータを得ることで,不整合上下の地層の硬さの違いを求めることができる.整合一連で堆積した地層は地層間に時間的間隙がないため,岩盤の硬さは上位にむかって連続的に軟らかくなっていくと考えられるが,不整合上下の地層の硬さには違いがみられることが多い.その違いが大きいほど,不整合形成時の侵食によって欠損した地層が厚かったことを示していると考えられる.そこで,地層の侵食量を推定する手法の開発しつつ,不整合による侵食量の空間的変化を明らかにすること目的とする.

2.調査地概略
富山県西部砺波平野を流れる庄川から,富山平野を流れる神通川にかけて分布する八尾層群と音川層群の不整合面が東西に伸びる地域を対象とする.露出する地層は,早川・竹村(1987)の層序区分に従うと,下位から中部中新統八尾層群東別所層,上部中新統砺波層群天狗山層,上部中新統音川層が分布し,三層ともに不整合関係である.東側へいくにつれ,天狗山層は顕著に侵食され層厚を減じ,東部では完全に消滅する.よって,東部地域は,下位に中部中新統八尾層群東別所層,上位に上部中新統砺波層群音川層が直接接する形で分布している.

3.手法 
現地調査では,ルートマップ作成,単層ごとにGS型シュミットハンマーで反発強度(固結度とみなす)を測定する.1地点につき15箇所測定する.また,測定地点ごとに粒度分析用の試料採取を行う.室内解析では,ルートマップからルート柱状図を作成し,最下部から測定地点までの累積層厚を求め,層準と固結度との関係を求める.不整合によって侵食された層厚を推定するために,まず層準と固結度との関係を示した図を粒径(砂岩と泥岩)で区別する.不整合面下位層の最下部から不整合面直下の下位層までの固結度変化傾向を近似直線で示す.不整合によって下位層が侵食されなかった場合,この固結度変化傾向近似直線は,不整合面よりも上方へ外挿されるはずである.固結度が0になる累積層厚を下位層の堆積時の最大層厚として,最大層厚から不整合面下位層の最下部から不整合面までの現存する層厚を差し引いた分を不整合によって侵食された層厚であると考えた.また,不整合面直上の上位層でも固結度の変化傾向を求め,不整合面下位層の固結度変化傾向近似直線との関係から,侵食量推定方法を分類した.

4.結果
累積層厚と固結度との関係から,砂岩の固結度変化傾向は下位から上位にかけて微小ではあるが減少傾向だった.泥岩は,測定地点が少なかったこともあって,固結度変化傾向がみえなかった.不整合面直上と直下に分布する凝灰岩層の固結度は,局所的に増減が著しくみられた.不整合面を境に下位層と上位層との間で,顕著な固結度のギャップはみられなかった.また,地点毎の固結度標準偏差が大きい場合が多くみられた.

5.考察
累積層厚における不整合面の層準から下方と上方に50mずつ(合わせて約100m),砂岩と泥岩それぞれの粒径の固結度データから削剥量を求めたところ,不整合面下位層・上位層ともに固結度変化傾向(分布)がほぼ一定なので,不整合面よりも下位の層が不整合形成によって削剥された層厚と,不整合面直上に新しく堆積した層厚が同じだったのではないかと考えた.よって,不整合面下位層の固結度変化近似線を上方へ外挿し,切片に当たる116.22mから累積層厚での不整合面位置50.14mを差し引いた66.08mの層厚が削剥されたと推定した.
しかし,近似線のR²値が低いことや,地点毎の固結度の標準偏差が大きいことから推定削剥量は正確な値を示せていると現時点では言えない.今後の調査で新しく追加した他地域の固結度の変化傾向も含めて,議論をしていく.

6.引用文献
早川秀樹,竹村厚司,1987.富山県八尾地域の新第三系.地質学雑誌,93,717-732.
盛岡富夫,佐々木康二,1975.仙台付近の地すべりと不整合についての研究.応用地質 16,4号,27-35.