講演情報

[T14-P-2]阿蘇火山中央火口丘群西部に位置する烏帽子岳山体の構造

*松藤 彬成1、宮縁 育夫2、星住 英夫3 (1. 熊本大学大学院自然科学教育部、2. 熊本大学くまもと水循環・減災研究教育センター、3. 産業技術総合研究所)
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 阿蘇火山中央火口丘群の西部に位置する烏帽子岳は,約4万年前に形成された安山岩質の成層火山である(小野・渡辺,1985; 宮縁ほか,2004)が,その詳細な活動史は不明である.また,約3.0万年前に起こったとされる草千里ヶ浜火山の噴火(Miyabuchi,2009)によって烏帽子岳の山体北側は大きく消失している(渡辺,2001)ほか,山頂部を含む山腹斜面は草千里ヶ浜火山の噴出物に厚く覆われているため,烏帽子岳山体の構造もよくわかっていない. 筆者らは,烏帽子岳火山山体の構造を明らかにするために,2017年にアジア航測によって撮影された空中写真と,画像解析ソフトウェアを用いて山体の断面を検討した.また,現地調査で採取した岩石特徴について,その概要を報告する.
 烏帽子岳火山の山体は草千里ヶ浜火山の噴火によって噴出した軽石層に厚く覆われており,その軽石層の一部は溶結している.画像解析ソフトウェアにより作成した3Dモデルから,それぞれの層厚を測定したところ,上位より約25 m厚の非溶結層,約7 m厚の溶結層,約5 m厚の非溶結層,約6 m厚の溶結層,約50 m厚の非溶結軽石層,その下位に烏帽子岳由来の噴出物による堆積物が存在することを確認した.なお,画像解析からは,草千里ヶ浜噴出物と烏帽子岳噴出物との間に土壌層は認められない.
 現地調査では烏帽子岳東側山腹斜面より,烏帽子岳由来の溶岩とスコリアが20 m厚以上存在することを確認,採取し,岩石薄片を作成した.溶岩の斑晶鉱物は斜長石,単斜輝石,直方輝石であり,石基組織はインターグラニュラー組織であった.溶結したスコリアの斑晶組合せも同様であった.これらは宮縁ほか(2004)が報告している,烏帽子岳溶岩の岩石的特徴とも調和している.

 今後はさらに現地調査を実施し,より詳細な山体の構造を明らかにして,烏帽子岳火山の詳細な活動史を検討する予定である.

引用文献:小野・渡辺,1985,阿蘇火山地質図,火山地質図,no.4,地質調査所
宮縁ほか,2004,火山,49巻5号,267-282
Miyabuchi,2009,Sedimentary Geology,220巻3-4号,169-189
小野,2001,阿蘇火山の生い立ち--地質が語る大地の鼓動--,一の宮町史--自然と文化,阿蘇選書7,96-101