講演情報
[G-P-20]中央北西太平洋ODPサイト1208堆積物に基づく放散虫生層序の構築と気候駆動型動物相転換
*松崎 賢史1、上栗 伸一2 (1. 東京大学 大気海洋研究所、2. 茨城大学 教育学部)
キーワード:
放散虫生層序、国際深海科学掘削計画、中央太平洋、古海洋
1970年代以降、国際深海科学掘削計画(ODP・IODP)により太平洋の様々な海域で放散虫化石の生層序研究が進展したものの、中央太平洋域は未解明の「盲点」となっている。本領域は主要海洋循環の遷移帯に位置し、全球的気候変動を反映するため、放散虫化石生層序の確立は年代決定および古海洋史解明に不可欠である。そこで本研究は、ODPサイト1208(シャッツキー隆起)から得られた過去1,000万年間の堆積物を対象に、中央北西太平洋域で初めての放散虫化石生層序を構築することを目的とする。 採取コアから約68試料を抽出し、光学顕微鏡観察および半定量的種組成解析を実施した。既存の磁気異常・ナンノ化石生層序を組み合わせた堆積速度モデルにより、年代表を作成した。 結果としては、11の放散虫化石帯を定義し、合計50件のバイオイベント(First Occurrence (FO)/Last Occurrence (LO))を同定した。そのうち3の化石帯を新規設定し、既存の5化石帯を再改訂・改名した。これにより、以下の3大規模動物相転換が明確化された: 1) 後期中新世全球冷却(約800–550万年前):亜熱帯種優占から亜寒帯種優占への転換 2) 鮮新世温暖化(約530–300万年前):亜熱帯種優占度の顕著な上昇 3) 北半球氷床化(約300–260万年前):古来種絶滅と現生亜寒帯種出現 さらに、更新世の気候変動期にも追加的な動物相入れ替わりが観察された。 本研究で構築した新生層序は、中央北西太平洋域の堆積記録をグローバルな生物・気候イベントと精緻に結びつける枠組みを提供した。本研究は過去1000万年にわたる気候駆動型海洋生態系の進化を解明するうえで、今後の日欧主導による共同掘削計画および掘削プログラムへの貢献が期待される。
