講演情報
[G-P-24]九州北西方海域における表層堆積物中の5mm以上のプラスチック分布
*飯塚 睦1、天野 敦子1、板木 拓也1、鈴木 克明1、清家 弘治1 (1. 産業技術総合研究所)
キーワード:
プラスチック、九州北西方海域、表層堆積物
海洋へのプラスチック流出は、生態系に深刻な影響を及ぼす喫緊の環境問題である。毎年1,000万トン以上のプラスチックが海洋に流入し、その一部は海底へ沈降・蓄積する可能性が示唆されている。しかし、海底における分布や海洋・海底環境との関係は依然として不明な点が多く、流出したプラスチックの最終的な行方やその制御要因は十分に解明されていない。本研究の対象地域である九州北西方海域は、東シナ海からの対馬暖流の流路上に位置し、海洋表層におけるプラスチックごみの集積が顕著な地域として知られている。特に対馬西岸では、大量の漂着プラスチックが確認されており、メソプラスチックやマイクロプラスチックの個数・重量が他地域に比べて高いことが報告されている(e.g., Kuroda et al., 2024)。このような地域的特性は、海底堆積物中のプラスチック分布に反映されている可能性がある。また、海洋表層での分布との比較により、表層から海底への移行過程の理解が進むことが期待される。本研究では、産総研の海域地質図プロジェクトの一環として実施された東海大学望星丸によるGB23およびGB24航海で九州北西方海域において計324地点(水深20~800m)で採取された表層堆積物を対象に、5mm以上のプラスチックの分布とについて報告する。また、FT-IRの分析等を行い、検出されたプラスチックの色、形状、ポリマータイプを特定した。その結果、5mm以上のプラスチックは22地点で観測され、対馬西側、九州北西沿岸域および五島海底谷付近で検出された。対馬西側および九州北西沿岸域でプラスチックが採取された地点では比較的粗粒な堆積物が多く、砂質の割合が高い傾向が見られた。一方、五島海底谷付近では、主に泥質堆積物が採取された地点でプラスチックが採取されており、粒度と分布の関係には地域差が認められた。これらの分布は、海流や海底地形との関連性を示唆している。今後は、粒径や材質の違いによる分布傾向の解析などを行う予定である。 本研究は環境総合推進費1-2204「海洋流出マイクロプラスチックの物理・化学的特性に基づく汚染実態把握と生物影響評価(JPMEERF20221004)」で実施した。
