講演情報
[G-P-26]房総半島九十九里浜におけるガス湧出スポットの形状変化
*吉田 剛1、風岡 修1 (1. 千葉県環境研究センター)
キーワード:
ガス湧出、上総層群、九十九里浜
千葉県九十九里平野では,更新統上総層群に胚胎する水溶性天然ガス(メタンガス)が地下で遊離し地表に湧出している。この地域では水田・河川で湧出するガスの存在が古くから知られており,「上(うわ)ガス」と呼ばれている。また,上ガスは九十九里浜では気泡や砂火山として確認され,九十九里沖においても海底から湧出するガスを海面に上昇する気泡として目視できる。上ガスは周辺の環境に影響を与え,内陸部では稲が枯れる被害,土の温度が上昇する現象,建造物の爆発等を起こし,海岸では潮溜まりが白濁,砂が濃青灰色に変色,地下水が黄色になる現象を起こす(吉田ほか, 2012)。これらの影響を受ける地域および湧出産状を知るため,九十九里平野中央部において行った調査では,湧出産状は上総層群梅ヶ瀬層,国本層の走向に支配される可能性が指摘された(風岡ほか, 2020)。九十九里浜の潮間帯において行った調査では、九十九里浜南半部(木戸川河口付近以南)では多くのガス湧出孔が認められ,その分布は連続的ではなくスポット的な産状を示すことかが確認された。さらに,各湧出群(スポット)の多くは,北北東―南南西方向・北―南方向に伸びる形態をもつことが明らかとなった。九十九里沖では,九十九里浜南半部から沖へ北東方向に伸びる2つのガスプルームの集中帯(沖中央部集中帯・沖南部集中帯)が存在することが明らかになった(図)。これらの産状を示す要因として,沖南部集中帯は上総層群大田代層の走向および断層の影響を,沖中央部集中帯は上総層群梅ヶ瀬層の走向および九十九里浜沖埋没谷の形状に影響を受けている可能性を指摘した(吉田ほか,2025)。
本発表では、九十九里浜潮間帯でのガス湧出スポットの形状の経年変化と,各年の湧出孔位置をスタッキングしガス湧出に起因する局所的な地下の地質構造の把握を試みた。 真亀川河口南方のC4スポット(図)では,最大範囲であった2012年のスポットの形状は長軸が南南西―北北東方向112 m,短軸が西北西―東南東方向55 mの楕円形状であり,面積は3,900 m2であった。また,このC4スポットでは2020年8月〜2021年6月に面積が100m2程度と小さかった。面積の大小を左右する要因は検討中であるが,面積最小のときにガス湧出が認められる地点が,常にガス湧出のある地点であることから,本スポットのガス湧出の中心であると考えられる。
引用文献
風岡ほか,2020,九十九里平野中部における上ガス発生分布について.第30回環境地質学シンポジウム論文集,30, 87–90.
吉田 剛ほか,2012,千葉県九十九里浜の天然ガス(上ガス)の湧出する潮溜まりの白濁現象.地質学雑誌, 118, 172–183.
吉田ほか,2025, 房総半島九十九里沿岸域から湧出する天然ガスの産状と生物生産への影響に関する予察.地学雑誌,134. 293-307.
本発表では、九十九里浜潮間帯でのガス湧出スポットの形状の経年変化と,各年の湧出孔位置をスタッキングしガス湧出に起因する局所的な地下の地質構造の把握を試みた。 真亀川河口南方のC4スポット(図)では,最大範囲であった2012年のスポットの形状は長軸が南南西―北北東方向112 m,短軸が西北西―東南東方向55 mの楕円形状であり,面積は3,900 m2であった。また,このC4スポットでは2020年8月〜2021年6月に面積が100m2程度と小さかった。面積の大小を左右する要因は検討中であるが,面積最小のときにガス湧出が認められる地点が,常にガス湧出のある地点であることから,本スポットのガス湧出の中心であると考えられる。
引用文献
風岡ほか,2020,九十九里平野中部における上ガス発生分布について.第30回環境地質学シンポジウム論文集,30, 87–90.
吉田 剛ほか,2012,千葉県九十九里浜の天然ガス(上ガス)の湧出する潮溜まりの白濁現象.地質学雑誌, 118, 172–183.
吉田ほか,2025, 房総半島九十九里沿岸域から湧出する天然ガスの産状と生物生産への影響に関する予察.地学雑誌,134. 293-307.

