講演情報

[G-P-29]紀伊半島沖に分布する後期新生代の浮遊性有孔虫生層序の有効性の評価

*髙山 佳奈子1、林 広樹2 (1. 島根大学大学院自然科学研究科、2. 島根大学総合理工学部)
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キーワード:

浮遊性有孔虫生層序、NanTroSEIZE、IODP、紀伊半島沖

 2019年3月まで実施された南海トラフ地震発生帯掘削計画(NanTroSEIZE)では,これまでに紀伊半島沖,熊野海盆から四国海盆までに位置する17地点で後期新生代の堆積物コアが回収された(Tobin et al., 2020).これらの内7地点(北から順にIODP Site C0025,C0002,C0001,C0022,C0021,C0024,C0012)でそれぞれ浮遊性有孔虫生層序が検討され(例えばHayashi et al., 2011),これらを統合すると,全部で43層準の浮遊性有孔虫生層準が認められた(Hayashi et al., 2013; 髙山ほか,2025).本研究では, Site C0022について改めて一部の浮遊性有孔虫群集の詳細な検討を行った.また,これらの生層準をサイト間で相互対比し,同年代の地層が分布している地域の浮遊性有孔虫生層序と対比することで,浮遊性有孔虫生層序の有効性を評価した. 
 本研究地域のサイト間での相互対比として,Hayashi et al. (2013), 髙山ほか(2025)で認定された43生層準の有効性について次のような基準に従いランクを設定し,各生層準の有効性を評価した.ランク1は指標種の産出状況に基づき設定されたQuality(Hayashi et al., 2013)が認められた全地点でAである,または年代の求められている地点間でそれがほぼ一致し,それらの地点での生層準のQualityがAであるものとした.ランク2は共通して生層準が認められる地点のどれか1地点でもQualityがAとなっているものとした.ランク3が1地点のみで認められる生層準のQualityがB,または複数の地点で共通して認められる生層準のQualityがBとCであるものとした.ランク4は認められる生層準のQualityが全てCであるものとした.その結果,特に重要なランク1の生層準として,Globigerinoides ruber (pink)の最終産出基準面など4層準が選ばれた.
 さらに,サイト間で相互対比した浮遊性有孔虫生層序と,南九州の宮崎層群(Morimoto et al., 2010など)と相良地域の相良層群と掛川層群下部(尾田,1971など),そして掛川地域の倉真層群基底から曽我層群最上部(茨木,1986など)で調べられた浮遊性有孔虫生層序との対比を行った.その結果,これら地域間の地層の対比において有効と考えられる浮遊性有孔虫生層準として,Globorotalia crassaformisの初産出基準面が挙げられた.

謝辞:本研究試料はIODPにより提供された.

文献: Hayashi et al., 2011, Proc. IODP, vol. 314/315/316, doi:10.2204/iodp.proc.314315316.206.2011; Hayashi et al., 2013, The 46th Annual Fall Meeting of the American Geophysical Union; 茨木, 1986, 地質学雑誌, vol. 92, no. 2, 119—134; Morimoto et al., 2010, Stratigraphy, vol. 7, no. 1, 25—32; 尾田, 1971, 東北大地質古生物研邦報, no. 72, 1—23; 髙山ほか, 2025, MRC研究集会; Tobin et al., 2020, Proc. IODP, vol. 358, doi.org/10.14379/iodp.proc.358.101.2020