講演情報

[G-P-36]茨城県ひたちなか市に分布する上部白亜系那珂湊層群平磯層の磁気層序

*佐藤 碧人1、岡田 誠1 (1. 茨城大学)
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キーワード:

磁気層序、白亜紀、カンパニアン、那珂湊層群

 【はじめに】
 茨城県ひたちなか市の沿岸部には,上部白亜系の海底扇状地堆積物である那珂湊層群が分布する.那珂湊層群の堆積年代は産出する大型化石の対比[1]や砕屑性ジルコンの年代分布[2]からカンパニアン-マーストリヒチアン頃と推定されている.この時期には複数回の地磁気逆転が起こっており,那珂湊層群にもその一部が記録されていることが期待されるが,現在までに行われた古地磁気学的研究はわずかである.本研究では那珂湊層群平磯層の泥岩およびシルト岩を対象として岩石磁気測定および残留磁化測定を行い,磁気層序の構築を試みた.

【結果・議論】
熱磁気実験,段階熱消磁の各段階における帯磁率測定,段階交流消磁の結果は,いずれもグレイガイトの存在を示唆するものであった.また低温磁気実験の結果は,試料中に少量ながらマグネタイトが存在することを示した.IRM獲得実験の結果は,試料の磁化がいずれも低保磁力の主成分と副成分からなることを示すものであった.したがって,試料の磁化はその大部分を初期続成作用によって生成されるグレイガイトが担っており,また一部は少量のマグネタイトが担っていると考えられる.残留磁化測定の結果,多数の試料が正極性もしくは逆極性を示し,平磯層に複数の地磁気逆転境界が含まれることが示された.また,消磁法としては150℃熱消磁と段階交流消磁を組み合わせたハイブリッド消磁が初生磁化成分の検出に最適であると判断された.アンモナイト化石の層位分布[1]などを踏まえると,検出した正磁極期のうち最も下位のものは古地磁気クロンC33nに,最上位のものはC32nに,逆磁極期はC32rに相当すると考えられる.

【引用文献】
[1]Masukawa and Ando, 2018, Cretaceous Research. vol.91, p.362-381.
[2]長谷川ほか, 2020, 地学雑誌. 129巻, 1号, p.49-70.