講演情報

[G-P-38]10万分の1徳島県及び周辺地域の地質図

*村田 明広1 (1. ニタコンサルタント株式会社)
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キーワード:

徳島県、地質図、和泉層群、三波川帯、秩父帯、四万十帯、地質構造

 15万分の1徳島県地質図及び同説明書(徳島県,1972)が出版されてから50年以上が経過し,全県を含んだより詳細な地質図が必要だと考えていた.今回,これまで以上の精度を持つ,「10万分の1徳島県及び周辺地域の地質図」を作成し,徳島大学環境防災研究センターから発行することができた.地質図は徳島県だけでなく,香川県の和泉層群基底部までを含み,三波川帯,秩父帯,四万十帯については,徳島県に接する愛媛県,高知県の東縁部までを範囲とした.
 地質図作成の調査過程で明らかになった主要な点は,以下の通りである.
.香川県塩江町で,和泉層群の不整合を切る北西-南東走向の断層の存在が明らかになった.断層は,左横ずれか,北東側が下降する成分を持つ.
.和泉層群の堀田層で(野田ほか,2021),酸性凝灰岩の新たな分布が明らかになり,向斜の馬蹄形分布が明確になった.
.三波川変成岩類に関して,5万分の1地質図幅「川口」(小島・光野,1966)に図示されていた矢筈山周辺の点紋片岩は,確認できなかった.一方,風呂塔から火打山,同北東尾根の点紋片岩は,図幅の通り確認された.
.徳島県つるぎ町付近の無点紋帯で,緑色片岩,珪質片岩,砂質片岩などを追跡することで,明谷シンフォーム,野々脇アンチフォーム,日浦付近のアンチフォームなどの褶曲の様子が明らかになった.
.大歩危ペリクラインでは,ユニット境界から示されるペリクラインの“褶曲軸”と片理面の傾斜から示されるアンチフォームの褶曲軸がずれている.
.秩父北帯北縁部に谷道背斜が存在し,その北翼に御荷鉾緑色岩類が,南翼に厚い玄武岩質凝灰角礫岩が分布する.谷道背斜は,上韮生川断層によって左横ずれに変位し,東方の神山の御荷鉾緑色岩類の南まで追跡される.
.四万十帯の日野谷・谷山ユニット境界を追跡することで,湯桶丸-横石スラスト(石田,1998)は存在しない可能性が大きくなった.
.四万十帯の日和佐ユニットでは,砂岩泥岩互層,砂岩,礫岩の順に堆積した地層が,北傾斜の衝上断層で繰り返し,覆瓦状構造を作っているらしい.
.四万十帯の谷山・日和佐ユニット境界である深瀬断層に関して,阿南市蒲生田岬周辺から,安芸市伊尾木川ダム周辺まで,追跡することができた.
10.四万十帯の牟岐ユニットは,5万分の1地質図幅「馬路」(原ほか,2020)とは異なり,牟岐から,貧田丸南,魚梁瀬貯水池まで連続して分布し,北側の日和佐ユニット本体と,南側の同ユニットを分けている.また,南側の日和佐ユニットは,牟岐ユニットに取り囲まれるように分布している.
文献 徳島県(1972)15万分の1徳島県地質図及び同説明書. 村田明広(2025)10万分の1徳島県及び周辺地域の地質図・同説明書.  野田篤ほか(2021)5万分の1地質図幅「池田」. 小島丈児・光野千春(1966)5万分の1地質図幅「川口」. 石田啓祐(1998)大阪微化石研究会誌,11,189-209.原英俊ほか(2020)5万分の1地質図幅「馬路」.